~ 10年後 ~
あの、
バーガー・ショップでの思い出は
今も私の心に深く刻まれています。
淡く、切なくそして眩かったあの日。
そのあとも君と私は楽しい日々を過ごしました。
つきあってから1年4ヶ月のある日
それとはなしに君が言い出した別れ話。
君と私の関係は終りましたね。
別に、つらくはなかったよ。
でもよく思い切れたよね、君は。
だって楽しい日だってあったじゃん
思い出したときさ、なんかいい日だったなって
ゆうのあったでしょ。
まるで君はエクスカリバーで切り裂くみたいにさ
二人の思い出もぶった切っちゃったようなもんだよ。
私は悲しむというよりは、その切断面の鮮やかさに
驚いたというかさ、君のことを全く理解してなかったってね。
ふう。
時間が、経過したから
今こうして語れる。
10年という歳月が、私にこれを語らせている。
少し前だったら無理だったな。
そんなものを皆に伝えようなんか
できないし、しようという発想がまず湧かない。
今、私は部屋で一人ブログを打つ。
当時とは違って営業の仕事をしている。
口べただったあの頃とは違う。
今は保険のセールスをやってるんだ。
顧客の8割は女性。
なんかさ、人の心を読むってゆうのかな
そういうのができるようになってさ。
今、もし君とあったら
あの日をもう一度後追いできるのなら
私はどうするだろう。
結構、自信あるよ。
もっとエンジョイできたと思うんだ。
私と君は。
ローレックスつけてるから、今の私は。
あの時はGショック。
目を閉じてみよう。
リラックス。
左耳にはエンジン音。
そう、トンネルを抜ければ、海が見える。
愛車のカローラは軽快な走りで国道を進んでいる。
「窓、開けてもいい?」
助手席の君はそう訪ねた。
私は頷く。
ボタンを押し そして窓ガラスが下がる。
そのボタンを押した君の指がとてもきれいだった。
私は見逃さない。そうしたディティール・・・。
しばらく見つめ続けた。運転なんか、関係ねえ。
開いた窓から風が車内へと運ばれる。
そして、最高のタイミングでトンネルを抜けた。
海だ。
風に海の香りがまじる。
太陽が海を照らしている。
キラキラとよせる波。
車は右折し左に海を見る。
君は海を見て喜んだね。
何故か、私は涙を流す。
「海っていいよね」
私は笑顔で返事をする。
見えているかい?私のローレックス。
国道の脇には趣味のよい店が建ち並ぶ。
レストラン、サーフショップ
ホテル、「オアシス」。
君と私の思い出がつまったホテル。
私はサーモンピンクの建物が好きだ。
信号まちのあいだ、私はサングラスを外す。
そして君を見つめた。
レイバンのサングラスをダッシュボードにしまい
再び車を動かす。
「何か聴こうよ」
君はそう言った。
私は無言でオーディオのスイッチを入れた。
TUBE
夏を抱きしめて
今じゃ懐メロ。なぜかものすごい哀愁に襲われる。
なんか人の心をつかむいろんなテクとかあったけど
この曲聞いてると、なんか
なんか、違うのかなって
私、なんか間違えてるのかなって
だから無言になっちゃって。
車は静かに進む。
10年前と全く変わらず。
君が着ていたポロシャツを私は忘れない。
今じゃそんなの着てる人だれもいないよ。
目的地の駐車場にようやく到着。
車を降りる。
まずは私から。
すると突風が背後から吹き付けた。
私は帽子を吹き飛ばされた。
それを見て君は笑った。
初めて見た君の笑顔に私は心を奪われた。
車内にいる君を私はずっと見つめていた。
我に返りドアを開ける。
そしていきなり
抱きしめた。
どうだ?
どうなんだ?
まるでなにも変わっていないのではないか。
君の前では私は私。
やり手のセールスマンではない
無口で、むっつりした
君のことを大好きなただの私でしか
ないんだ。
このまま君をはなしたくはない。
はなせば、この淡い空想も溶けるのだろう。
その先に待つ二人の分かれが。
だから、君をはなしたくはないよ。
目を開けると飲みかけのウメッシュ。
ほほには涙がつった後。
窓の外は夜。
あああ、夏休み。
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