ミュー ・ 百花春至為誰開

月山・葉山・野菜つくり・短歌・スケッチ   初夏の朝日連峰&果樹園 (寒河江市)

湿気

2009-07-15 | Weblog


先日 

古くなった客間の薄縁を

新しいものと取り替えた


薄縁の値段 ・・・・・・・8畳用で4千円台~1万3千円台 

と 様々だった


一番廉価なものを買おうと思ったが

「安物買いの銭失い・・・・・・・・・・」

と 一寸気が引け

中間の値段の薄縁を買った


4千円台の薄縁のイグサは

値段相応の如く

どう見ても安っぽかった・・・・・・・・・・・・




家に帰って 

早速古い薄縁を

買って来たばかりの新しい薄縁と交換した


部屋中

イグサの真新しい

青い香りが拡がった


新しい畳

やっぱり諺にあるように

とても気持ちが良かった



しかし

薄縁全体にしわしわが出来ていて

どう見ても寸法が大きい・・・・・・・・・・・・・・

ではないか?


さてさて・・・・・

不良品・・・・・・かな

等と 思ったりもした


ふと

だいぶ前の 昔のことを思い出した


昔々 設計事務所に勤めていた頃


当時 

トレッシングペーパーにシャープペン(鉛筆)を使って

図面を書いていた


梅雨時の季節になると

製図板に貼ったトレッシングペーパーは

大量の湿気を含み

ミシン縫いのしてある紙の四方は

しわしわ になった




湿気が多いと

トレシングペーパーは濡れて

鉛筆が走らなくなった


鉛筆の芯も

微妙に変化した


湿気が多くなると

硬度が減少し

滑らかな線が引けなくなった


しかし

天気が良くなってくると

トレシングペーパーはたちまち乾燥して

皺も取れ

鉛筆のすべりも滑らかになった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

て・・・・・・・・な訳で

薄縁の寸法が大きいのは

不良品ではなくて

どうも梅雨時の湿気が原因らしい

と 気付いた



今 設計は全てパソコンを使っている


湿気と製図用紙と鉛筆の芯の深い関わり・・・・・・・

等は あり得ない話


昔は

仕事に使う道具ひとつとっても

物などにはけしてあるはずのない

生きてる情のようなものが

あったような気がする


解体中の建物(旧 町営日帰り温泉施設)河北町



設計事務所という言葉で 

と ある事を思い出した


先日 隣町の河北町を車で通った時のことだ

鉄筋コンクリート造の建物の

解体現場があった


今から40年程前に建設された

町営の日帰り温泉施設だ


古くなったこの施設に代わって

3年程前

500mほど離れた場所に

立派な新しい温泉施設が出来た


暫らくは何か他の施設に

利用していたのだが・・・・・・・・・・


半分以上取り壊された写真で

少し判りずらいが


この建物は

地元のA設計事務所が設計した


この他

町役場等も設計した


昭和40年の頃の建築は丁度私が学校を卒業した頃で

大阪万博が開かれた頃の前後だ

この時代の建物は

いわゆる建築が個人の芸術作品として

世に多くの力作が生み出されて行った

現代建築の

幕開きの時であった



この建物の設計者A氏

ル・コルビジェに師事した

前川国男事務所で学んだ


こんな田園地帯の人口僅か2万5千の田舎町

にあって


剥き出しの打ち放し鉄筋コンクリート造の 柱や梁

5メートルもの長さを持つ 跳ね出し庇

石工使用の外壁叩き仕上げ

等々・・・・・・・・・・・・


建物全体

当時建築界を謳歌した

モダニズムのうねりが

至る所に躍動し

まるで彫刻作品を見ているような

そんな錯覚に陥った


かって 建築は

都市の未来を予見する

大事な文化的先駆者としての使命を

担って来た経緯がある


私達が20~30代の頃

どの設計事務所も

経済の高度成長の波に乗り

毎晩 残業々・・・・・・・・・・・・・で

午前2時頃帰宅することも普通だった


学校 公民館 文化センター 病院 体育館・・・・・・・・etc

設計・・・・・・・・・設計監理

沢山の苦労があった・・・・・・・・・・・・・・・・

その苦労以上に創る歓びがあった・・・・・・・・・・・


あの頃・・・・・・建築された

建物解体の現場を目の当たりにして

ふと・・・・・

昔のことを懐かしく思い出してしまった