ふらりの着物姿

　目の前を１人の女性が歩いてくる。
　私はふと目を奪われた。

　彼女が着物姿だったって言うのが理由として大きい。
　脇に子供を連れていてその子は洋服だったって言うのも大きい。

　自分で着物着たんじゃないかな。
　何となく帯びにさしたアクセサリーや着崩れ方、髪型からなんかそんな気がしたんだ。
　
　彼女は自分で普段から着物を着ている、それがなんか目を奪われた理由だった。

　何か大きなことがあって着たんなら子供も着てておかしくないでしょう。でも子供はまるで普段着だったから、じゃどこか特別な場所に出席するんで着たわけじゃない。それじゃバランスが合わないものね。
　
　普段から着物着れる生活ってなんかいいなぁと思う。
　普段から着物着れるって、今は豊かな感じがするよ。

　お勤めしてたら着られないでしょう。慌しい生活・・・子育てでも、やれ子供お迎え行かなくちゃ帰りにお買い物しなきゃ、なんて状況があったら、自転車に乗ったりして着物着られないでしょう。

　呉服屋に嫁に行って着ざる得ない理由がない限り豊かな印象がある。
　
　何より粋でしょう。
　
　ふらふらと歩く着物の女性とすれ違いながらそんなことを思う。

　しかしその女性の更に遠くに逆方向に歩いていくやはり着物姿の年配の女性がいた。
　逆方向に歩いていくとはいえ、この近距離に着物姿が２人いるとなると・・・。
　やはり何かの行事にご出席だったのかしら？

　そうすると普段から粋に着物を自分で着ていると言う私の仮説は脆くも崩れ去るけど・・・。
　
　ちょっといい光景を見た感じは残った。

　私もあんな風に普段着物を着られるようでありたいんだけど。
　自分で着れませんからねぇ。