クラッシュ

2008-02-27 15:58:37 | 日記風
 音から甦る記憶はあります。思いがけないことが記憶の底から甦る。 

 劇団の稽古場でその音を聞いた時、それがあった。 

 数年前の戯曲塾の公演の時、ヒロインが自動車事故にあうシーンがありました。その時、轢かれたってことを現わす音響でクラッシュ音を入れたんです。

 狭い稽古場で、このクラッシュ音を始めて聞いた時、叫びそうな衝撃に落ちた。
 
 それだけリアルな音だった。ぶつかる音、クラクションの音。何もかも・・・、余韻まで・・・。
 
 霧の向こう、もう遥か彼方となった筈の、私が車に轢かれた当時のことが、ふいに甦りました。

 甦ったと言っても、私自身事故にあった当時から、事故の記憶はありません。気がついたらベッドの上にいた。
 
 事故の記憶は目が醒めた時から欠落しています。

 あるのは、ドライバーの方の証言と、現実に轢かれてベッドから起きることのできなかった私という現実。

 私の中で、何か思い出したくない制御が働いてるんでしょうね。クラクションの音響を聞いた時でさえ、その時の光景を思い出すまでには至りません。
 
 ああ、私、轢かれたことあったんだ。
 その事実だけ思い出した。 
 
 改めて事故のことを考えるようになりました。あの事故とその前後に起きた出来事はその後の私の人格形成に大きな影響を与えたと、今になって思います。

 子供の頃、あったことをただ見ているのと、大人になって客観的に物事をとらえるのとでは、物事の様相は全く異なるのです。

 私は、きっとそうして過去を辿ることで、自分の中のあるシーズンの心の整理をしているんだと思います。

 それが何か必要なこと、なのだと思います。


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