メタエンジニアの眼シリーズ(195)
TITLE: カミユの「ペスト」
書籍名;「まんがでわかるカミユ『ペスト』」[2020]
監修;小川仁志 発行所;宝島社 発行日;2020.8.11
初回作成日;2021.11.9 最終改定日;
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
この本は、区立図書館のリユース本置き場で見つけた。通常は古くて借りる人が長期間いないものが出されるのだが、なんと昨年発行されたばかり。しかも、「カミユの『ペスト』」[1947]は、Covit-19の再さんの波のために、今やベストセラーの一つになっている。原因は、この本が「贈与」されたもので、書き込みがあったためのようだ。贈与者は、図書館に置いて多くの人に読んでもらおうと寄贈したと思われるのだが、図書館はそのことが理解できなかったのだろうか。
カミユのペストは、読んでみようとも思ったが、「いまさら」と思い躊躇していたのだが、漫画ならば簡単に読めると思い、早速にページをめくった。オランの町でネズミが大量に死に、やがて熱病が流行り出したが、医者の警告にもかかわらず、市の責任者は対策を採ることを躊躇した。そこまで20ページで、突如漫画は中断で解説が13ページも続く。そして、その後のロックダウンや終息に向かう話なのだが、物語が終わるまでに、このことが5回繰り返される。解説者は、哲学者の小川仁志で、どうやらこちらの方がこの書の目的のようだ。つまり、哲学者から見た、今回の騒動に対する批判や教訓のように感じられる。
解説の中には、随所に2020年6月時点での罹患者や死者数などの様々なデータを始め、過去の伝染病や、今回注目された言葉(例えば、オンライン飲み会)などが盛り込まれている。その中から、「作品ペストの読み解き」などと題した解説の表題を列挙してみる。
1.『人生の不条理を味わいながらカミユは「ペスト」を執筆』(p.26)カミユの略歴
2.『「最悪の事態」を想定した選択は偉い人ほど難しくなる』(p.30)
政府の緊急事態宣言は、米国、イタリアが1月31日、日本は4月7日
3.『文明と引き換えに感染症との付き合いが始まった』(p.34)
感染経路別の感染症名のリスト(42種類、コロナは「飛沫・空気感染」)
4.『緊急事態宣言を軽んじる人々、町の片隅のプロたちが輝き始める』(p.56)神父の発言など
5.『深刻さが高まるにつれて浮き彫りになった「自分が一番」』(p.62)
昨年発生した、各国の自国優先項目のリスト
6.『清潔な近代都市を脅かす飛沫・空気感染による感染症』(p.66)過去20年間のインフルエンザの死亡数
7.『自粛のストレスは反抗に。戦う者たちは機械のように』(p.82)様々な分断例と、優先事項
8.『頼れるリーダーが現れず不平不満で世の中がいっぱいに』(p.86)
今回の宣言中に変化した生活のリスト、注目さ種類の症状と予防方法リスト
9.『私たちはペストの感染拡大を無意識に肯定していないか』(p.114)
10.『正義は手段を正当化するか、社会の殺人に密かに加担していないか』(p.118)
コロナ禍におけるネット炎上の事例、4月に5件、5月に4件など
11.『根絶や衰退に向かう感染症と、再び勢いを増す感染症』(p.122)
過去に人類が根絶したのは、天然痘だけ、結核とポリオはあと一歩
ワクチンと血清の違い
12.『終にペストが終息、そして人々に生まれた心の溝』(p.140)
期待感と感情で人々が動き、社会が変化する
13.『ペストとコロナ禍から何を学ぶべきか』(p.144)
14.『「ペスト」の現代的意義』(p.153)
① 追放;ロックダウンや緊急事態宣言をカミユは、見放されたとして、「追放」「自宅への流刑」と表現した。
② 抽象;ウイルス禍は具体的な人間とは異なる抽象的な存在。人間もある程度抽象化しないと、戦いに勝てない。
③ 誠実さ;抽象的な存在として我慢の中で何かできないかを模索する。それは、ヒロイズムではない
④ 連帯;共感や友情と同義
⑤ 記録;「ペスト」の文脈は、まさに当時の記録になっている
後半は、やや哲学者の態度が強過ぎているようにも思えるのだが、カミユの小説を通して、今回のコロナ禍で起こった様々な社会現象を理解するには良い著書に思える。
TITLE: カミユの「ペスト」
書籍名;「まんがでわかるカミユ『ペスト』」[2020]
監修;小川仁志 発行所;宝島社 発行日;2020.8.11
初回作成日;2021.11.9 最終改定日;
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
この本は、区立図書館のリユース本置き場で見つけた。通常は古くて借りる人が長期間いないものが出されるのだが、なんと昨年発行されたばかり。しかも、「カミユの『ペスト』」[1947]は、Covit-19の再さんの波のために、今やベストセラーの一つになっている。原因は、この本が「贈与」されたもので、書き込みがあったためのようだ。贈与者は、図書館に置いて多くの人に読んでもらおうと寄贈したと思われるのだが、図書館はそのことが理解できなかったのだろうか。
カミユのペストは、読んでみようとも思ったが、「いまさら」と思い躊躇していたのだが、漫画ならば簡単に読めると思い、早速にページをめくった。オランの町でネズミが大量に死に、やがて熱病が流行り出したが、医者の警告にもかかわらず、市の責任者は対策を採ることを躊躇した。そこまで20ページで、突如漫画は中断で解説が13ページも続く。そして、その後のロックダウンや終息に向かう話なのだが、物語が終わるまでに、このことが5回繰り返される。解説者は、哲学者の小川仁志で、どうやらこちらの方がこの書の目的のようだ。つまり、哲学者から見た、今回の騒動に対する批判や教訓のように感じられる。
解説の中には、随所に2020年6月時点での罹患者や死者数などの様々なデータを始め、過去の伝染病や、今回注目された言葉(例えば、オンライン飲み会)などが盛り込まれている。その中から、「作品ペストの読み解き」などと題した解説の表題を列挙してみる。
1.『人生の不条理を味わいながらカミユは「ペスト」を執筆』(p.26)カミユの略歴
2.『「最悪の事態」を想定した選択は偉い人ほど難しくなる』(p.30)
政府の緊急事態宣言は、米国、イタリアが1月31日、日本は4月7日
3.『文明と引き換えに感染症との付き合いが始まった』(p.34)
感染経路別の感染症名のリスト(42種類、コロナは「飛沫・空気感染」)
4.『緊急事態宣言を軽んじる人々、町の片隅のプロたちが輝き始める』(p.56)神父の発言など
5.『深刻さが高まるにつれて浮き彫りになった「自分が一番」』(p.62)
昨年発生した、各国の自国優先項目のリスト
6.『清潔な近代都市を脅かす飛沫・空気感染による感染症』(p.66)過去20年間のインフルエンザの死亡数
7.『自粛のストレスは反抗に。戦う者たちは機械のように』(p.82)様々な分断例と、優先事項
8.『頼れるリーダーが現れず不平不満で世の中がいっぱいに』(p.86)
今回の宣言中に変化した生活のリスト、注目さ種類の症状と予防方法リスト
9.『私たちはペストの感染拡大を無意識に肯定していないか』(p.114)
10.『正義は手段を正当化するか、社会の殺人に密かに加担していないか』(p.118)
コロナ禍におけるネット炎上の事例、4月に5件、5月に4件など
11.『根絶や衰退に向かう感染症と、再び勢いを増す感染症』(p.122)
過去に人類が根絶したのは、天然痘だけ、結核とポリオはあと一歩
ワクチンと血清の違い
12.『終にペストが終息、そして人々に生まれた心の溝』(p.140)
期待感と感情で人々が動き、社会が変化する
13.『ペストとコロナ禍から何を学ぶべきか』(p.144)
14.『「ペスト」の現代的意義』(p.153)
① 追放;ロックダウンや緊急事態宣言をカミユは、見放されたとして、「追放」「自宅への流刑」と表現した。
② 抽象;ウイルス禍は具体的な人間とは異なる抽象的な存在。人間もある程度抽象化しないと、戦いに勝てない。
③ 誠実さ;抽象的な存在として我慢の中で何かできないかを模索する。それは、ヒロイズムではない
④ 連帯;共感や友情と同義
⑤ 記録;「ペスト」の文脈は、まさに当時の記録になっている
後半は、やや哲学者の態度が強過ぎているようにも思えるのだが、カミユの小説を通して、今回のコロナ禍で起こった様々な社会現象を理解するには良い著書に思える。