meta-の日本語訳は、その場、その場で適当な漢字が充てられているのだが、中国語ではどうなっているのだろうか。
まず、meta-は「元」と一字で明確に示されている。そこで、色々なmeta-について、調べてみる。
・英語(日本語訳)中国語
meta- (メタ)元
metabolic(変態する、変形する)新陳代謝
metabolical(変態する、変形する)代謝的
metabolism(物質交代、物質代謝)代謝
metabolite(代謝物質)代謝物
metaboly(変態)代謝
meta doctrine(メタ教義)元學說
metagalaxy(認識しうる全宇宙)超星系
metahistory(多様な歴史的認識の立場)元史
metainfective(感染後におこる)傳染性的
metalanguage(メタ言語)元語言
metalinguistics(メタ言語学)元語言學
metamathematician(超数学者)元數學家
metamorphous(変化の)變質的
metanalysis(異分析)元分析
metaphoric(比喩的な)隱喻的
metaphorical(比喩的な)隱喻的
metaphrase(翻訳、言い換えをする)直譯
metaphrast(翻訳者)隱喻
metaphrastic(直訳的な)比喻的
metaphychic(心霊研究の)玄學的
metaphysic(学問・研究の原理体系)形而上學
metaphysics(形而上学、思弁哲学)形而上學
metapolitician(政治哲学者)元政治家
metapolitics(理論的政治学)元政治
metapsychology(超心理学)元心理學
metastability(準安定状態)亞穩態
metastasize(転移する)轉移
metatheory(超理論)元理論
metaengineering (根本的エンジニアリング)元工程
中国語では、「元」で統一されていることが分かる。
メタエンジニアリングの研究を始めて、丁度10年間が経過した。その纏めとして、「さまざまなメタの研究」3巻(註1)を記した。その中で、当初は考えていなかったことが、いくつも浮かび上がってきた。
最も気になったのが、広辞苑の項目だった。「メタ」という前置詞が、第3版[1983]まで登場しない。一方の英和辞典では、すでに山ほどの項目があった。それは何故かを考え始めると、日本文化の矮小性ばかりが気になりだした。
しかし、多くの単行本に接すると、そのことは全くの誤解で、むしろ日本人の著書に多くのメタが存在した。少し考えれば、分かったことなのだが、日本人の特徴は、ドイツ人同様に、先ずは全体を包絡する理論から入り、そこから各論を導き出す習性がある。アメリカ人と正反対の習性で、アメリカ人は、多くの実例の寄せ集めから、普遍的な理論を考え出そうとする。そのことは、直前に発行した、第28巻の「メタエンジニアリングで考える企業の価値」の中で引用した、米国で発行されたほぼすべてのビジネス書(ドラッカーを始めとして、エクセレント・カンパニーやビジョナリー・カンパニーなど)にあてはまる。
考えてみると、日本人はもともと「メタ文化民族」なのだ。日本人は森の文化で育ち、西欧人は砂漠の文化で育った。森の複雑さと砂漠の単純さの結果が、日本人は「メタ」を意識せずに、常にメタの中で生活をしていることの原因ではないだろうか。一神教は、宗教とはなにか、絶対神とは何かに言及する必要があるが、多神教はそのようなものを定義する必要はない。つまり、メタ宗教論は必要ではなかった。
随分とおかしな結論なのだが、「メタ」はいろいろと面白い。 少しでも多くの方が、「メタ」に興味を持ち、なかんずく、「メタエンジニアリング」により、人類の文明が正しい技術によって持続してゆくことを願うばかりです。
先日「AIと人類」という本を読みました。著者は、キッシンジャー、シュミット(元グーグルのCOEなど)日本経済新聞出版 [2022.8]で、彼らが4年間議論を尽くした結果が書かれています。
『10年前にデジタル社会が拡大しはじめたとき、クリエイターには哲学的枠組み、あるいは国家やグローバル社会の利害との関係性を考えることなど期待されていなかった。そもそもそんなことを要求された業界はこれまでなかった。 デジタル製品やサービスが適正であるとか評価するのは社会や政府だった。技術者はユーザーを情報やオンライン上の交流スペースと結びつける、乗客を車両やドライバーと結びつける、顧客を商品と結びつけるなど、実用的で効率的なソリユーションを追求した。世間には新たな機能や機会を歓迎する機運があった。そうしたバーチャルなソリユーションが社会全体の価値観や行動にどのような影響を与えるかといった予測へのニーズはほとんどなかった。』(pp.124-125)
つまり、従来の技術者の機能は新たなものを創り出すだけだった。しかし、AIがすべてに関与する時代では、「ソリユーションが社会全体の価値観や行動にどのような影響を与えるかといった予測へのニーズ」が生じているというわけである。そこには、メタエンジニアリングの基本機能が要求される。我々は、そういう時代に、もはや突入をして、さまよい始めているということの認識がこの書の狙いになっている。
註1;さまざまなメタの研究
メタエンジニアリング・シリーズ (既刊)発行;メタエンジニアリング研究所
第24巻 さまざまな「メタ」の研究(1) 人文・社会科学編
第26巻 さまざまな「メタ」の研究(2) 理工・経済学編
第27巻 さまざまな「メタ」の研究(3) 応用編
まず、meta-は「元」と一字で明確に示されている。そこで、色々なmeta-について、調べてみる。
・英語(日本語訳)中国語
meta- (メタ)元
metabolic(変態する、変形する)新陳代謝
metabolical(変態する、変形する)代謝的
metabolism(物質交代、物質代謝)代謝
metabolite(代謝物質)代謝物
metaboly(変態)代謝
meta doctrine(メタ教義)元學說
metagalaxy(認識しうる全宇宙)超星系
metahistory(多様な歴史的認識の立場)元史
metainfective(感染後におこる)傳染性的
metalanguage(メタ言語)元語言
metalinguistics(メタ言語学)元語言學
metamathematician(超数学者)元數學家
metamorphous(変化の)變質的
metanalysis(異分析)元分析
metaphoric(比喩的な)隱喻的
metaphorical(比喩的な)隱喻的
metaphrase(翻訳、言い換えをする)直譯
metaphrast(翻訳者)隱喻
metaphrastic(直訳的な)比喻的
metaphychic(心霊研究の)玄學的
metaphysic(学問・研究の原理体系)形而上學
metaphysics(形而上学、思弁哲学)形而上學
metapolitician(政治哲学者)元政治家
metapolitics(理論的政治学)元政治
metapsychology(超心理学)元心理學
metastability(準安定状態)亞穩態
metastasize(転移する)轉移
metatheory(超理論)元理論
metaengineering (根本的エンジニアリング)元工程
中国語では、「元」で統一されていることが分かる。
メタエンジニアリングの研究を始めて、丁度10年間が経過した。その纏めとして、「さまざまなメタの研究」3巻(註1)を記した。その中で、当初は考えていなかったことが、いくつも浮かび上がってきた。
最も気になったのが、広辞苑の項目だった。「メタ」という前置詞が、第3版[1983]まで登場しない。一方の英和辞典では、すでに山ほどの項目があった。それは何故かを考え始めると、日本文化の矮小性ばかりが気になりだした。
しかし、多くの単行本に接すると、そのことは全くの誤解で、むしろ日本人の著書に多くのメタが存在した。少し考えれば、分かったことなのだが、日本人の特徴は、ドイツ人同様に、先ずは全体を包絡する理論から入り、そこから各論を導き出す習性がある。アメリカ人と正反対の習性で、アメリカ人は、多くの実例の寄せ集めから、普遍的な理論を考え出そうとする。そのことは、直前に発行した、第28巻の「メタエンジニアリングで考える企業の価値」の中で引用した、米国で発行されたほぼすべてのビジネス書(ドラッカーを始めとして、エクセレント・カンパニーやビジョナリー・カンパニーなど)にあてはまる。
考えてみると、日本人はもともと「メタ文化民族」なのだ。日本人は森の文化で育ち、西欧人は砂漠の文化で育った。森の複雑さと砂漠の単純さの結果が、日本人は「メタ」を意識せずに、常にメタの中で生活をしていることの原因ではないだろうか。一神教は、宗教とはなにか、絶対神とは何かに言及する必要があるが、多神教はそのようなものを定義する必要はない。つまり、メタ宗教論は必要ではなかった。
随分とおかしな結論なのだが、「メタ」はいろいろと面白い。 少しでも多くの方が、「メタ」に興味を持ち、なかんずく、「メタエンジニアリング」により、人類の文明が正しい技術によって持続してゆくことを願うばかりです。
先日「AIと人類」という本を読みました。著者は、キッシンジャー、シュミット(元グーグルのCOEなど)日本経済新聞出版 [2022.8]で、彼らが4年間議論を尽くした結果が書かれています。
『10年前にデジタル社会が拡大しはじめたとき、クリエイターには哲学的枠組み、あるいは国家やグローバル社会の利害との関係性を考えることなど期待されていなかった。そもそもそんなことを要求された業界はこれまでなかった。 デジタル製品やサービスが適正であるとか評価するのは社会や政府だった。技術者はユーザーを情報やオンライン上の交流スペースと結びつける、乗客を車両やドライバーと結びつける、顧客を商品と結びつけるなど、実用的で効率的なソリユーションを追求した。世間には新たな機能や機会を歓迎する機運があった。そうしたバーチャルなソリユーションが社会全体の価値観や行動にどのような影響を与えるかといった予測へのニーズはほとんどなかった。』(pp.124-125)
つまり、従来の技術者の機能は新たなものを創り出すだけだった。しかし、AIがすべてに関与する時代では、「ソリユーションが社会全体の価値観や行動にどのような影響を与えるかといった予測へのニーズ」が生じているというわけである。そこには、メタエンジニアリングの基本機能が要求される。我々は、そういう時代に、もはや突入をして、さまよい始めているということの認識がこの書の狙いになっている。
註1;さまざまなメタの研究
メタエンジニアリング・シリーズ (既刊)発行;メタエンジニアリング研究所
第24巻 さまざまな「メタ」の研究(1) 人文・社会科学編
第26巻 さまざまな「メタ」の研究(2) 理工・経済学編
第27巻 さまざまな「メタ」の研究(3) 応用編
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