ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

當る子歳吉例顔見世興行 昼の部 ネタばれあり

2019-12-15 20:33:17 | 歌舞伎
 顔見世に行ってきました。


當る子歳吉例顔見世興行 昼の部 南座
<輝虎配膳>
 武田家の軍師山本勘助を味方につけるために、勘助の母越路を自らもてなす長尾輝虎(後の上杉謙信)だが、越路はそれを見通して敢えて無礼な振る舞いをし、息子に義を貫かせるようにする。
 越路役の秀太郎さんが、やはり上手い。品があり、気骨ある姿にグッときた。

<戻駕色相肩>
 次郎作と与四郎が禿たよりを駕籠にかついでくる。三人の舞踊劇。劇中で梅玉さんの養子となった莟玉さんのご挨拶あり。
 莟玉さんが、かわいい。禿の硬い、瑞々しい感じが出ていた。

<金閣寺>注意!ネタバレあり
 天下取りを狙う大膳は、将軍足利義輝を殺害し、将軍の母・慶寿院を金閣寺に幽閉する。上手の一間には、雪姫が幽閉され、夫を助けために大膳の意に従うか金閣寺の天井に秘伝の墨絵を描くかと迫られている。金閣寺で碁を打つ大膳と東吉。碁に負けた大膳は、怒って碁笥を井戸に投げ込み、手を濡らさずに碁笥を取るように東吉に言う。見事にやってのける東吉。その後、雪姫は、大膳の持つ刀から彼が父の仇と知り、斬りかかるが、反対に桜の木につながれる。夫と引き裂かれた雪姫は、別れを惜しみ、祖父雪舟が涙で描いたネズミが動き出したことから桜の花びらを集め、足でネズミの絵を描く。すると、ネズミが雪姫の縄を食い破り、雪姫は夫の後を追う。東吉は、金閣寺へ登り、慶寿院を助け出す。
 井戸に投げ込んだ碁笥を手を濡らさずにどうやって取り出すのか?井戸に滝の水を注ぎこみ、井戸の水位をあげて碁笥を取り出すのだ。後に秀吉となる東吉、さすが!
 壱太郎さん演じる雪姫がとにかく美しい。桜の花びらが吹雪のように舞い落ちる中の雪姫は、妖しいほどの美しさ。うっとりとしてしまった。
 桜の花びらで描いたネズミが本物となるのだが、そのネズミがかわいい。
 慶寿院が幽閉されている金閣寺へは、セリが上下する壮大な仕掛けが。
 藤十郎さんの慶寿院さんは、風格。鴈治郎さんの大膳は、悪が魅力的。

<仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場>
 敵討ちを隠し、遊蕩にふける大星由良之助。平右衛門は、敵討ちの一味に志願するが、由良之助は取り付くしまもない。そこへ、由良之助の息子力弥が密書を持ってくる。密書を読もうとすると、そこへ九太夫がやってくる。敵方と内通している九太夫は、由良之助に敵討ちをする心があるのか探りにきたのだ。酒席を抜け出した由良之助は、書状を読むが、二階からお軽が手鏡で盗み見、縁の下では九太夫が書状を読む。由良之助は、盗み見したお軽に身請けしようと言って、奥へ去る。そこへ、お軽の兄の平右衛門が現れ、お軽の話から、由良之助の本心を知るのだった。
 力弥役の千之助さんが美形!あまりの美しさに驚いた。千之助さんは、祖父の仁左衛門さん同様に華がある。将来のスター間違いなし。
 お昼ご飯を食べた後で、半分くらい寝てしまった。

今日のお弁当 いづ重さんで2030円。

稲荷ずしが有名なだけあって、美味しかった。



包み紙も素敵。
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寿初春大歌舞伎

2019-01-20 23:08:22 | 歌舞伎
 寿 初春大歌舞伎 平成31年1月2日~26日 大阪松竹座
 午前の部
<土屋主税>
 赤穂浪士の討ち入りを待ち望む土屋主税(吉良邸の隣家)の心の内を描く。
 幕が開いたとたん、雪のしんしんと降る美しい場面に魅了される。
 大高源吾を演じる愛之助さんが、花道を歩くと傘に積もった雪が後ろに流れて、美しいの一言。
 壱太郎演じるお園は、可憐。

ロビーには、壱太郎さんの祖父・坂田藤十郎さんが扇雀時代のお園の写真が。美しい。
 扇雀さん演じる土屋主税は、上品。私は、討ち入りで興奮する、鴈治郎さん襲名の折の鴈治郎さんの主税が、好きだが、扇雀さんの演技で思わず落涙。よかった。

ここで、お弁当タイム。

天むす弁当。松竹座で売っているお弁当は、美味しい。

<寿栄藤末廣>

 米寿の藤十郎さん(中央)、長男の鴈治郎さん(右から二番目)、次男の扇雀さん(左から二番目)、鴈治郎さんの子・壱太郎さん(右)、扇雀さんの子・虎之介さん(左)という三代の舞踊。おめでたい。鴈治郎さんは、鶴、扇雀さんは、亀の冠。最後は、背景が富士山で鶴が舞い、藤の花が垂れ下がり、金紙がキラキラと舞う。三代の舞踊を見ることができて、うれしかった。

<河庄>
 治兵衛は、妻子のある身でありながら、遊女小春と深い仲になり、心中の約束をする。小春は治兵衛の妻から手紙をもらい、ふさぎこむ。見慣れない侍が小春の客として現れ、小春は心中をしたくないと訴える。それを聞いた治兵衛は、小春の心変わりに激高するが、侍と見えたのは実は治兵衛の兄。兄に諭され、小春と別れると言う治兵衛だが・・・。
 虎之介さん演じる丁稚は、まだ硬いかなあ。真面目に演じている。肩の力を抜いてアホになりきるといいと思う。まだ若いものね。舞踊は、若々しく踊っていたので、これからに期待。
 小春役の壱太郎さんは、一途さを演じてよかった。治兵衛への愛想尽かしは、治兵衛の妻への義理であり、本当はまだ好きなのに、その気持ちを抑える姿にじんときた。
 それに比べて、鴈治郎さん演じる治兵衛の身勝手さ。男はダメだねえと思わせる。こういう心の機微を演じると鴈治郎さんは上手いなあ。
 そして、兄を演じる彌十郎さんとの治兵衛のやり取りは、おかしい。
 太兵衛役の愛之助さんは、いけすかない男を軽妙に演じていい。土屋主税での源吾の端正な姿とは、また違った魅力。
 治兵衛を盗人と太兵衛がののしり、町人がわらわらと集まる場面では、町人がこれでもかという位出てきておかしかった。花道を大勢の町人がわらわらと引き上げるところも面白い。

 バランスのよい演目で、米寿の藤十郎さんのお祝もあり、初春にふさわしい歌舞伎だった。
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當る亥歳吉例顔見世興行

2018-12-02 12:21:31 | 歌舞伎
 京都南座へ顔見世初日に行きました。

新しい南座 




まねき 仁左衛門さんと左團次さんのまねきが切れちゃいました・・・。


たけうま 今年もB'zの松本さんの見っけ


南座の売店だけで売っている八ツ橋サンド 八ッ橋と生クリームのハーモニーが美味しい!去年食べて美味しかったので、虫押さえ用に買う。


新しい南座 座席の床が傾斜しているので、見やすくなっている。座席も前より座り心地がいい。トイレも自動で流水音が流れ、自動洗浄できれい。


夜の部の演目はこちら 
<義経千本桜>
 やはり仁左衛門さん(いがみの権太)は、スゴイ。華がある。うまい。ねじり鉢巻きで涙をぬぐうふりや子を足蹴にできず逡巡するところなどグッときた。小金吾役の千之助さん(祖父が仁左衛門さん、父が、孝太郎さん)が、初々しく熱演。扇雀さん(鮓屋の看板娘・お里)が、かわいらしい。そして、子役がすごかった。高貴な子の役の子は、長い間微動だしなかった。権太の子の役の子は、身代わりとして花道をトボトボと歩く姿や父を慕う姿に涙を誘われた。時蔵さんは、小粋な女形が似合うと思っていたが、高貴な維盛役をやっていてビックリ。

<面かぶり> 
 鴈治郎さんの舞踊。登場した童子役・鴈治郎さんの愛らしいこと!早着替えや花笠が飛ぶ仕掛けなど見どころもいっぱい。馬具を使った踊りは圧巻。馬具の足拍子がお囃子とピッタリと合う。なによりあの馬具を使っての踊りは、とても難しいはずなのに軽々と踊る鴈治郎さんに目が釘付けだった。

<弁天娘女男白浪>
 有名な演目だが、見たことがなかったので見ることができてうれしい。愛之助さんが、正体を見破られて、可愛らしい娘からごろつきの男に変わる対比が鮮やか。愛之助さんは、言葉がはっきりして聞きやすいし、声がいい。
 花道の入り口から傘だけがニョキと出て、登場となるが、傘が花道横のお客さんに当たりそうでヒヤリとする。

<三社祭り>
 千之助さんと鷹之資さんの舞踊。一生懸命に踊る姿を応援したくなる。

 席は後ろだが、花道の横。権太の女房・小せんを演じる秀太郎さんが花道のお客さんと目を合わせて微笑みながら花道を去るのがうれしい。しかし、花道の奥の話声が気になった。(特に、弁天娘女男白浪)幕間に表の戸を開けるのか、結構寒かったし。2扉に近い席の方は、ショールや羽織ものが必要かも。

 さあ、これで、年が越せる。大掃除しなくちゃな。
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顔見世 夜の部

2017-12-09 23:24:24 | 歌舞伎
當る戌歳吉例顔見世興行 平成29年12月1日~18日 ロームシアター京都
芝翫さん、三人の息子さんの橋之助さん、福之助さん、歌之助さんと親子四人の襲名披露です。おめでたい!



ロームシアターのまねき


ロビーにある竹馬 ご贔屓筋の祝儀を顔見世ではこんな風に飾るのだとか


B'zの松本さんの竹馬もありました


佐藤可士和氏デザインの祝幕 赤い丸の中には金字で芝、橋、福、歌と名前の一字が書かれています


顔見世期間限定の八ッ橋サンド これが絶品でした!八ッ橋のあんと生クリームがとても合うのです。ぜひぜひ召し上がってみてください。

●良弁杉由来 二月堂
 鷲にさらわれた我が子の行方を求めて諸国を放浪する渚の方。東大寺の良弁大僧正が昔鷲にさらわれたという話を聞き、東大寺にやってきて、三十年ぶりに我が子と再会する。
 鴈治郎さん演じる良弁が上品。渚の方を演じる藤十郎さんは、言葉がはっきりしないが、それが老女の雰囲気を出していて、さすがです。
●俄獅子
 芸者と鳶頭の踊り。
 時蔵さん、孝太郎さんが演じる芸者さんが、かっこいい。屋号をかいた傘がくるくると回って、印象的です。橋之助さん、福之助さん、歌之助さんの三兄弟も粋な鳶頭で登場。三人も息子さんを産んで立派に育てた三田寛子さんは、梨園で「でかした!」と言われているのではないでしょうか?


レストラン菊水のハイカラ洋食弁当 祇園 テレビで歌之助さんがおススメと言っていましたね。
右上 スモークサーモン、ポテトサラダ 中央上 ローストビーフ、ビフカツ、ロールキャベツ、スパゲティ 左上 オレンジ、メロン
右下 ご飯、ホワイトソース 左下 ゆで卵、パテ、ホタテのフライ、カニ爪、伊勢エビ、魚のフライ、水菜
豪華です。普通、揚げ物の下にしいているスパゲティはあまり美味しくありませんが、このお弁当のスパゲティは美味しかったです。ポテトサラダ、ロールキャベツ、フルーツまでも美味しかったです。ところで、ホワイトソースは何につけて食べるのが正解だったのでしょうか?私はご飯につけて食べましたが・・・。

 芝翫さんの奥様で三人の息子さんのお母様である三田寛子さんをお見かけしました。ロビーではなく会場にまで入ってご贔屓筋にご挨拶をしているようでした。ご挨拶をうけた方は、感激されていた御様子。ご挨拶がすむと下を向いて目立たないように小走りで去る三田さん。大変だと思うのですが、いつも笑顔なのは、さすがです。

●人情噺文七元結
 博打で落ちぶれた暮らしをしている長兵衛。娘のお久は、親のために身を売って金を作ろうとする。お久の孝心に心を動かされた廓の女主人は、50両を貸し、来年の三月までに返せば娘を店に出さないという。娘の気持ちと女主人の情けを感じた長兵衛は、性根を入れ替えようと決心する。川端を通りかかると若い男・文七が身投げをしようとしている。男は、お金の回収にいったが、その50両をすられてしまったので、お詫びに死のうとしていた。長兵衛は、「人の命は金じゃあ買えねえ」と文七に50両を投げつけて家に帰る。次の日、文七の主人清兵衛がやってくる。文七の命の恩人である長兵衛に50両を返し、お礼にお久の身請けをし、さらに文七をお久の縁談を持ち掛けるのであった。
 芝翫さん演じる長兵衛と扇雀さん演じるお兼の夫婦のやり取りがおもしろいです。お兼さんが「ちょんまげをして前掛けをしめて」と言うところを「ちょんまげをしめて」と言い間違い、それからアドリブで「ちょんまげをしめる?」などとワチャワチャやっていました。このハプニングに会場は爆笑です。芝翫さんは、こういう情があって、おかしみのある役もうまいのですね。勘三郎さんを思い出しました。壱太郎さん演じるお久さんは可憐。チョコチョコと小走りで背を丸めて歩く姿がお久の貧しい育ちを表していますが、なんとなく品があります。それにしても顔が小さい!口上のため、鳶頭役で仁左衛門さんがチョコっと出るのも、贅沢な気分になります。

●大江山酒吞童子
 女をさらって食う酒吞童子を源頼光が平井保昌、四天王とともに退治する。
 勘九郎さん演じる酒吞童子が酒を飲んで酔っ払う演技がコミカルで、さすが上手いです。線が細いようなかわいい出で立ちにビックリしましたが、鬼は子供の姿をして酒を好んだから酒吞童子と言われるという話に納得。しかし、最後は、鬼のように骨太な感じで登場し、くりくりと回ってバッタリと前に倒れるのには圧巻です。


ロームシアター前にあるみやこめっせのウィンターイルミネーション

 会場に行く途中、信号待ちをしていたら、鳥のふんがヒット。トホホの気持ちでしたが、顔見世を見て、気持ちが晴れました。満足の一日でした。









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七月大歌舞伎 夜の部 舌出三番叟・盟三五大切

2017-07-09 17:31:18 | 歌舞伎
 変な夢を見る。スペースシャトルのようなずんぐりした飛行機が日本に墜落する夢。どういう深層心理からこんな夢を見るのかな。

 さて、久しぶりの歌舞伎。いつもいい席をとってくれた方が亡くなり、自力でチケットを取るので、今回は2階席。視力が落ちているのか、夜の場面が多くて舞台がうす暗いのもあり、よく見えなかった。オペラグラスを忘れたのが返す返すも残念。

七月大歌舞伎 夜の部 平成29年7月3日~27日 大阪松竹座
<舌出三番叟>
鴈治郎さんと壱太郎さんの舞踊。壱太郎さんが可憐。

<盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)>
●佃沖新地鼻の場
 三五郎の漕ぐ舟に乗るのは、芸者の小万。小万と三五郎は夫婦。勘当の身の三五郎は、父から旧主のために百両を用立ててほしいと頼まれ、小万は芸者勤めに出ていた。そこへ、小万に入れ込む源五兵衛が乗った舟が漕ぎよせ、小万に声をかける。
 花道に水色の布が敷かれ、三五郎と小万の乗った舟が進む。花道に舟が進むのを、私は初めて見た。最後に源五兵衛、三五郎、小万が見得を切るところは、一幅の絵のように美しかった。
●深川大和町の場
 源五兵衛の家。若党の六七八右衛門が家財道具を運び出そうとする道具屋ともめている。五兵衛は、道具屋の言う通りにしろと言う。塩治家の家臣であった五兵衛は、御用金を盗賊に盗まれた落ち度で浪人になった。主君は高野師直に刃傷に及び切腹、塩治家はお家断絶。亡き主君の仇討ちの一味に加わりたいと思う五兵衛。そこへ小万が仲間とやってきて、腕に「五大力」(男女の恋の誓いのしるし)を彫っているという。さらに伯父の富森助右衛門が仇討ちに加われるように百両を持ってくるが、五兵衛の放埓を諫める。八右衛門に追い返される小万たちだが、入れ替わりに三五郎がやってきて小万のところへ行くよう誘う。始めは自重する五兵衛も小万会いたさに出かけていく。
 八右衛門の松也さんが、爽やかで主人を想う家来を熱演。以前見た時は、大げさな芝居が気になったが、今回はそんな気もせず、よかった。
●二軒茶屋の場
 二軒茶屋の伊勢屋の座敷。伴右衛門の身請けを拒む小万のところへ、三五郎に連れられ、五兵衛が現れる。なす術のない五兵衛を見ると小万は自害を企てる。すると、五兵衛は伯父の助右衛門から受け取った百両を小万の身請けに差し出す。そして、五兵衛は三五郎と小万と夫婦であること、この場は五兵衛から金を巻き上げるための芝居と知る。恨みを残して五兵衛は立ち去る。
 仁左衛門さん扮する五兵衛が怒りを抑えながら花道を去るところが圧巻。
●五人切の場
 五兵衛から金を巻き上げた者たちが太鼓持ちの虎蔵の家に集まっている。三五郎は小万の腕の彫り物を「五大力」から「三五大切」と書き替える。一同寝静まったところへ、五兵衛が現れその場に居合わせたものを次々に切っていく。その物音に気付いた三五郎と小万はその場から逃げていく。
 障子に影が映り、五兵衛登場。切って切りまくる仁左衛門さんが凄味のある美しさ。私は薄暗くてよく見えなかったが、一緒に行った子どもによると首や腕が転がる血まみれホラーだったとか。
●四谷鬼横町の場
 四谷鬼横町の長屋。昨日引っ越してきた八右衛門は、幽霊が出たと引っ越そうとしている。大家の弥助は、お岩の幽霊が出ると言う。一日でも一月分の家賃を払えと八右衛門と弥助がもめているところへ、小万と三五郎がやってくる。挨拶をしていて、弥助は小万の兄とわかる。そこへ通りかかったのは了心。了心は三五郎の実父で不破数右衛門(源五兵衛)に仕えており、数右衛門が仇討ちに加わるための百両の工面に腐心していた。三五郎は了心に五兵衛から巻き上げた百両を渡す。数右衛門に金を渡すために帰った了心と入れ違いにやってきたのは、五兵衛。怯える三五郎たちに兄弟同然の付き合いをしてほしいと酒樽を渡す。そこへ役人が来て、五人切りの下手人として五兵衛を捕らえようとする。八右衛門は飛び出し自分が下手人だと申し立て、五兵衛の身代わりとなって縄を打たれて引き立てられる。五兵衛も小万のことは思い切ったと言い捨て去る。
 夜になるとお岩の幽霊が出るが、正体は弥助。幽霊に化けて店子を追い出し、家賃を稼いでいたのだ。そこへ、三五郎が以前この部屋に住んでいた高野家の出入りの大工が持っていた高野家の図面を見つける。弥助は図面を取り上げ酒をねだるので、五兵衛持参の酒を飲ませる。腕の彫り物から弥助が塩治家から御用金を盗んだ犯人とわかったところ、弥助が苦しみだす。五兵衛が持参した酒は毒酒だった。三五郎は弥助にとどめを刺し、図面を了心に渡すようと小万に頼んで、自害しようとする。そこへ現れた了心は、三五郎をなだめて、三五郎を四斗樽の中に隠し自分の家へと運んでいく。了心が去り、小万が兄を弔うところへ五兵衛が現れる。赤子の泣き声で三五郎と小万の子がいることを知り、小万の彫り物が「三五大切」になっていることに気付くと小万に切りかかる。我が子の命ごいをする小万の手を刀に添えて五兵衛は、赤子に突き立てる。さらに小万の首を打ち落として懐へ押し込み長屋を後にする五兵衛だった。
 悪の美学というのだろうか。最後、雨の中立ち去る五兵衛は、凄惨な中に妖しい美が。刀を振り回す五兵衛に、会場は息をのんだように物音一つ立てずに魅入られた。
●愛染院門前の場
 隠れ住む愛染院の庵室に戻った五兵衛は、小万の首を前に食事をする。そこへ、了心が図面を持って現れ、五兵衛は大星由良之助へ図面と百両を渡すように頼む。五兵衛が罪を打ち明け切腹しようとすると側の樽がばらばらと開き、出刃を腹に突き立てた三五郎が現れる。三五郎は、主君とも知らず金をだまし取った罪滅ぼしに五兵衛の罪をかぶるので、五兵衛にかたき討ちに加わるように願うのであった。
 薄暗くてよく見えなかったのだが、子どもによると小万の首の口が開いて怖かったとか。

 百両はただグルグル回っただけで、多くの人が命を落とすという、なんとも言えない話。しかし、夏にはピッタリの背筋が寒くなる怖い話。仁左衛門さんの凄味のある美しさと松也さんの一途さが印象的だった。


 
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