『われら闇より天を見る』 クリス・ウェタカー 鈴木恵訳 早川書房
アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘイヴン。30年前にひとりの少女命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還はかりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。
複雑なお話。一つの話だと思っていたら、いくつもの話が絡まり合っていた。すごい。
ロビンとダッチェスの子どもたちには、幸せになってほしい。ドリーやハルなど理解のある大人がいて、救われた。私ならば、そこまで寄り添えないと思う。
『隠居すごろく』 西條奈加 角川書店
巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛。還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活を楽しもうとしていたが、孫の千代太が訪れたことで人生第二のすごろくが動き始めた……。
人情噺に心が温かくなる。子どもたちの真っすぐさ。それを見守る大人たち。大人もいろいろ失敗するが、やり直すことができるよね。生きてきたことは無駄ではないよね。と励まされる。
ラストに涙が止まらなかった。
『あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室』 寮美千子 西日本出版社
奈良少年刑務所で行われていた、作家・寮美千子の「物語の教室」。絵本を読み、演じる。詩を作り、声を掛け合う。それだけのことで、世間とコミュニケーションを取れなくて罪を犯してしまった少年たちが、身を守るためにつけていた「心の鎧」を脱ぎ始める。
「宿題」を知らない子がいたのは衝撃だった。ネグレクトで学校に行っていないので、宿題という言葉を知らないのだった。
そういう想像を絶する環境から自分を守ろうとして自分の鎧を見につける。しかし、その鎧は出来が悪くて自分を守るどころか、さらなる窮地に追い込んでしまう悲しい代物。でも、その鎧を脱ぎ捨てて心の扉を開けたとき、やさしさがあふれ出す。心の扉を開いたのは、「詩」と言う自己表現と受け止めてくれる仲間の存在。このことを述べている前書きが全てを表していると思う。
「人は変われる」「人は本来やさしい生き物だ」と作者は信じることができたのが大きかったという。ある教官は、人は真っ白な心を持ってうまれてくるが生育の過程で傷ついてしまう。その傷をうまく癒せないと心が引きつれて歪んでしまい、犯罪に至る。変わりなさいと言いうとその子を否定することになりかねない。もう一度、赤ちゃんの心に戻る、元に戻ることが大事だと。
教官たちの態度に頭が下がる。なんと愛情深く、彼らに理解のあることか。また、評価をしない、強要しない、指導しない、せかさない、安心安全な場所を作ることを心掛けていることか。
寮さんのプログラムによって解放された、彼らの瑞々しい詩が本当にすばらしい。
アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘイヴン。30年前にひとりの少女命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還はかりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。
複雑なお話。一つの話だと思っていたら、いくつもの話が絡まり合っていた。すごい。
ロビンとダッチェスの子どもたちには、幸せになってほしい。ドリーやハルなど理解のある大人がいて、救われた。私ならば、そこまで寄り添えないと思う。
『隠居すごろく』 西條奈加 角川書店
巣鴨で六代続く糸問屋の主人を務めた徳兵衛。還暦を機に引退し、悠々自適な隠居生活を楽しもうとしていたが、孫の千代太が訪れたことで人生第二のすごろくが動き始めた……。
人情噺に心が温かくなる。子どもたちの真っすぐさ。それを見守る大人たち。大人もいろいろ失敗するが、やり直すことができるよね。生きてきたことは無駄ではないよね。と励まされる。
ラストに涙が止まらなかった。
『あふれでたのはやさしさだった 奈良少年刑務所 絵本と詩の教室』 寮美千子 西日本出版社
奈良少年刑務所で行われていた、作家・寮美千子の「物語の教室」。絵本を読み、演じる。詩を作り、声を掛け合う。それだけのことで、世間とコミュニケーションを取れなくて罪を犯してしまった少年たちが、身を守るためにつけていた「心の鎧」を脱ぎ始める。
「宿題」を知らない子がいたのは衝撃だった。ネグレクトで学校に行っていないので、宿題という言葉を知らないのだった。
そういう想像を絶する環境から自分を守ろうとして自分の鎧を見につける。しかし、その鎧は出来が悪くて自分を守るどころか、さらなる窮地に追い込んでしまう悲しい代物。でも、その鎧を脱ぎ捨てて心の扉を開けたとき、やさしさがあふれ出す。心の扉を開いたのは、「詩」と言う自己表現と受け止めてくれる仲間の存在。このことを述べている前書きが全てを表していると思う。
「人は変われる」「人は本来やさしい生き物だ」と作者は信じることができたのが大きかったという。ある教官は、人は真っ白な心を持ってうまれてくるが生育の過程で傷ついてしまう。その傷をうまく癒せないと心が引きつれて歪んでしまい、犯罪に至る。変わりなさいと言いうとその子を否定することになりかねない。もう一度、赤ちゃんの心に戻る、元に戻ることが大事だと。
教官たちの態度に頭が下がる。なんと愛情深く、彼らに理解のあることか。また、評価をしない、強要しない、指導しない、せかさない、安心安全な場所を作ることを心掛けていることか。
寮さんのプログラムによって解放された、彼らの瑞々しい詩が本当にすばらしい。