2012年の春シーズン、テレビ朝日系列の水曜夜9時枠で全9話が放映された刑事ドラマ。
冤罪などが相次ぎ、失墜した警察の信用を回復するため警視庁捜査一課に「検証捜査係」が新設されるも、その実質は調書の誤字脱字をチェックして検察庁に提出するだけの事務作業。
そこに正義感が強すぎて出世コースから外されたキャリア=新海警視(観月ありさ)が管理官として就任。調書から感じる些細な違和感から解決済み事件を洗い直し、現場の刑事たちに疎まれながらもブレずに真実を追及し、冤罪を次々と晴らしていく彼女の姿に、お役所体質が染み付いた部下たちもやがて感化され、本来あるべき検証捜査係の姿に変わっていくというストーリー。
検証捜査係のメンバーに片岡鶴太郎、松重 豊、五十嵐隼士、強行犯係のメンバーに田辺誠一、眞島秀和、橘 慶太、首席管理官に風見しんご、捜査一課長に田山涼成、検察事務官に西田尚美、鑑識課員に野間口 徹、といったレギュラーキャスト陣。
おそらく「観月ありさにクールな凄腕捜査官を演らせよう」っていう着想からスタートし、捜査ドラマの人気ジャンルとして定着した「コールドケース」物と、都落ちしたエリートが覇気をなくした庶民たちの意識を変えていく、これまた過去のヒット作のパターンを組み合わせて出来た企画かと思われます。
ほとんど全てのドラマはそうして過去作の「いいとこ取り」で成り立ってるワケで、特に刑事物はあらゆるパターンをやり尽くしてますから、マンネリだパクリだと文句を言うのは不毛なこと。それを誰がどう演じるかを楽しめばいいんだって、今となっては割り切ってます。
けど、放映当時の私はまだ諦めてなかったw 前々回の『ATARU』と同じように、当時のブログに書いた記事を下にコピペしておきます。テレビ業界に対してまだ期待を抱いてたからこそ、文面は今より辛口になってます。
あれから7年……状況は何も変わらず、むしろ悪くなる一方で、私はすっかり諦め、落ち着いて、ますますハリソン・フォードそっくりになりました。
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☆『Answer/警視庁検証捜査官』#01(2012年の記事)
これはもう、どんな内容で、それを自分がどう感じるのか、観る前から分かってましたので、別に腹も立ちません。
『鍵のかかった部屋』が福山雅治くんのヒット作『ガリレオ』そっくりで、フジテレビは役者と設定を微妙に変えながら、そのパターンを延々と続けて行くつもりじゃないか?っていうコメントも頂きました。
このテのタイトル、例えば『CHIKUBI/警視庁特別チョメチョメ班』みたいな正統派の刑事ドラマは、まさにそんな感じですよね。固定されたフォーマットをちょっとずつ変え、役者を入れ替えて、延々と続いてる1つのシリーズ物みたい。
個性のカケラもないタイトルのつけ方に、それが象徴されてます。この番組で勝負する気はサラサラありませんって感じで。うまく役者がハマって『アンフェア』とか『BOSS』みたいに当たってくれれば儲けもの、みたいな。それを期待して刑事物の放映枠をとりあえずキープし続けてる。
過去を振り返ってもしょうがないけど、かつて刑事ドラマと言えば各テレビ局の看板であり、勝負番組でした。若い世代には想像もつかないだろうけど、ホントにそんな時代があったんです!
それが、フィルム撮りドラマの消滅と呼応するかのように、刑事物の地位というか、価値がどんどん下がっちゃった……という気がしてなりません。
「ここの枠、空いちゃったの? じゃあ刑事物でも放り込むか」「この役者のスケジュールを押さえたけど、いい企画が出ない? じゃあ刑事物でもあてがっとくか」みたいな空気。
私は、刑事ドラマが花形の4番バッターだった時代に思春期を過ごして来ましたから、現在の戦力外スレスレみたいな扱われ方には、何とも言えない淋しさを覚えずにいられません。
いや、正確に言えば「刑事ドラマ」はもう、とっくに絶滅してるんですよね。さっき書いた通り、フィルムで撮影するドラマが途絶えたのと、ちょうど時を同じくして……
私の言う「刑事ドラマ」とは、文字通り刑事が主役のドラマです。事件捜査を通して、刑事という職業に就いた「人間」の成長を描くドラマ。まぁ要するに『太陽にほえろ!』の事ですw
それが『踊る大捜査線』の大ヒットで、決定的に変わりました。刑事の目線を通して警察組織というカンパニーを描く、お仕事ドラマにシフトして行った。刑事ドラマというより警察ドラマですね。
青島刑事(織田裕二)は確かに魅力的なキャラだけど、その実、彼はストーリーの進行係であって、一つの駒に過ぎない。だからいつまで経っても成長しません(出世はしたけど、それと内面的な成長とは違います)。
で、そんな警察ドラマも飽きられて来たところに登場したのが『相棒』です。これも刑事はただの進行係で、主役は事件であり謎解きなんです。これが安上がりで不景気の世にたいへん便利って事で、現在の主流……というか、これ一色w
そうなるともう、主人公は刑事であろうが探偵であろうがやる事は一緒。弁護士、医者、オタク、家政婦、子供、果てはネコでも中身は変わらない。たまたま刑事が主人公であるだけの番組を、私は「刑事ドラマ」とは呼びたくないですホントに。
それでも、この硬直化した状態を打ち破るような、新たな衝撃作がいつか現れるんじゃないかって、僅かな希望に賭けて捜査ドラマをチェックし続けてる私って、ほんと哀れですw
でも、そのお陰で『デカワンコ』に出会い、幸か不幸かwタベリストとなって新たな仲間達にも出会えたワケですから、決して無駄な事ではない。
実際『ジウ』や『悪党』『SPEC』みたいに個性的な番組も突発的に現れてますから、油断は出来ません。まぁ、今年は刑事よりも弁護士や浪花の女教師(注:多部未華子さんの『浪花少年探偵団』)が楽しい捜査を見せてくれそうですがw
で、今回の『Answer』は、観月ありさが所轄の署長から降格され、解決した事件の調書を検察へ送る前にチェックする窓際部署の係長に就任、あやうく冤罪になりそうな事件を鋭く見抜いて洗い直すという、要するにスタンダードな捜査物です。
既に判決まで下りた事件を、所轄の一刑事が自らのクビを賭けて再捜査するって話は『太陽にほえろ!』にもありました。身内である警察組織ならびに検察庁、裁判所をも敵に回すワケですから、現実にはあり得ないにせよ、とても見応えある熱いエピソードでした。
でも、観月さんの場合は送検する前の洗い直しですから、実際に捜査した連中から疎まれる事はあっても、クビを賭ける程のリスクは背負わない。描かれるのは刑事の心意気よりも、やっぱり謎解きメインなんですよね。ちっとも熱くない。
他にも言いたい文句は色々あるんだけど、それもこれも言い飽きた事ばっかりなんでw、いかに「いつも通りのやり方」をなぞってるドラマかって事ですね。
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観月さんは、こんなクールな役をやっても光らないです。かと言って十八番のドジっ子役で通せる年齢でもないでしょうから、試練の時期かと思います。(乳首)