最終回直前のエピソードとなった第25話は、久々にガキンチョどもと熱血刑事が絡む学園ドラマテイストで、本来の『走れ!熱血刑事』に戻った感じです。
翌週の最終回ではテツさん(坂上二郎)が撃たれ、大介(松平 健)が復讐に燃えるというハード路線にまた戻るんだけど……
青春路線だった初期脚本の残りをここで消化したのか、あるいはもしかすると、初期に撮影されながら放映が見送られてた作品なのかも?
と言うのも、キャスト陣の衣装が急に夏仕様になり、水沢アキさんの髪型もショートからいきなりセミロング(つまり初期の髪型)に戻ってるんですよね。
1クール(10〜13話 )に連続性を持たせる現在の連ドラと違って、1話完結が基本の昭和ドラマでは放映順序がテレコになることも珍しくありませんでした。けど、ここまで激変するのはなかなか珍しいw
それはさておき、刑事ドラマにガキンチョが絡んで来るのを私はあまり好まないんだけど、この回に限ってはちょっとグッと来るものを感じたので、レビューすることにしました。
☆第25話『夢のアメリカ西海岸』
(1981.6.8.OA/脚本=山崎巌/監督=江崎実生)
ある朝、大介がジョギング中に公園で刺殺死体を見つけちゃうんだけど、その地面にはローラースケートの痕跡が複数残っており……
遺体を見つける直前、ローラースケートで走る中学生らしき男女5人組とすれ違ったことを思い出した大介は、彼らの行方を探します。
で、割とすんなり見つけるんだけど、彼らは「何も知らない」と言う。大介は、きっと何か隠してるに違いないと直感します。
おまけに彼らがコインロッカーに隠してたローラースケートから血液反応が出たもんだから、岩下課長(宍戸 錠)のほっぺたが膨らみます。
「一応しょっぴいてみるか」
「待って下さい、オレはあの子たちが犯人だとは思えません! 課長、もう少し調べさせてもらえませんか?」
「いいだろう。ただし、眼を離すなよ」
というワケで大介は、鑑識課員にして嘱託医の淳子(水沢アキ)とわざわざカップルを装い、リーダー格の少年=シゲルとそのカノジョを尾行しながら、淳子がぐいぐい押しつけてくるマシュマロおっぱいの感触を楽しみます。ぼいぃぃ〜ん!
するとシゲルたちが書店で、慣れた手つきで万引きを働いた! しかも大介に追われて逃げる途中、何者かに車で轢き殺されそうになった!
シゲルを心配したカノジョが、淳子に真相を明かします。あの朝、シゲルたちは公園のベンチで寝てる男から財布を盗み、その後でそいつが死んでると気づいた。それで怖くなって逃げたワケだけど、その時にどうやら男を殺した犯人をシゲルが目撃したらしい。
「シゲルを狙ったのはその男よ。お願い、シゲルを守って! 私たち、シゲルがいないと何も出来ないんです!」
大事な模擬試験をすっぽかして遊ぶシゲルたちに、大介が説教をかましますが、彼らは聞く耳を持ちません。
「一流大学を出て一流の会社に入ったって、喜ぶのは親だけで何も面白いことなんか無いんですよ」
サラリーマンみたいな型にはまった生活はまっぴらごめんだと言う彼らには、とある夢があるのでした。万引きを繰り返し、公園で財布を盗んだのも、その夢を実現させる為の資金が欲しかったから。
「オレたち、アメリカに移住するんだ。お金貯めてカリフォルニアに土地を買って、自給自足して自由に暮らすんだ! 誰にも煩わされないで、自分たちの力で生きていくんだ!」
お先真っ暗となった令和の時代、そんな夢を語るようなガキンチョは1人もいないかも知れません。けど、当時は無数にいましたよね?
私もそうでした。別に海外で住みたいとは思わなかったけど、会社員には絶対なりたくなかったし、自分の力だけで生きて行けると根拠もなく信じてました。で、社会に出てから自分の無力を思い知らされるワケです。
でっかい夢を抱くことはもちろん悪くない。けど、その為なら何をやってもいいってワケでもない。彼らには今すぐそれを解らせないといけません。大介は言います。
「乗れよ。俺のジープに乗るんだ!」
自慢のスーパージープに中学生5人を乗せた大介は、人里離れた造成地へと彼らを連れ込み、何処からいつの間に調達したのか、シャベルやクワを無理やり持たせます。
「自給自足ってのはな、土地を耕し、種を蒔き、育てることなんだ」
「分かってますよ、そんなことは」
「じゃあ、やってみろ!」
挙句の果てに強制労働。大丈夫なのか、大介? 土地の所有者に許可は取ってあるのか?
「バカヤローッ、そんなへっぴり腰でカリフォルニアの砂漠が耕せるか!」
急に暴れん坊将軍になった大介は、巨大ミミズに悲鳴を上げる女子にも容赦しません。
「向こうにはガラガラ蛇だっているんだぞ!? しっかりしろっ!!」
いきなりシャツを脱ぎ、この日のために鍛え上げた筋肉と脇毛と黒い乳首を見せびらかしながら、大介はヘロヘロになった中学生たちを叱咤し続けます。
「夢ってのはな、ただの夢で置いとく分にはそれでいいが、実現させようと思ったら血の出るような努力が必要なんだ! 汗を流すのを惜しんでたら、夢を掴むことなんか出来やしないんだぞっ!!」
その通りです。本来ならそれを、大人になって実際にチャレンジして思い知るべきだけど、犯罪に走ってしまった彼らには今、荒療治で解らせるしかない。大介はそう判断したんでしょう。
「第一、未成年者が外国に出るには両親の許可が無ければパスポートも下りやしないんだ!」
そんなことも知らなかったんでしょう、ガキンチョたちはとうとう泣き崩れるのでした。
これもいつの間に用意したのか、水筒の水をガキンチョたちに飲ませてやる大介に、リーダー格のシゲルが泣きながら言います。
「僕、決していい加減な気持ちでみんなを引っ張って来たんじゃないんです! ホントに真剣だったんです! でも……間違ってました。僕のせいで、みんなが……みんなが!」
心から反省した様子のシゲルを見て、ようやく優しい顔に戻った大介は、黒い乳首を見せつけながら言います。
「若いのにすぐ諦めんなよ。いくらだって時間はあるんだ」
改心し、自分たちがオトリになって犯人逮捕に協力するとまで言うガキンチョたちを、家庭裁判所送りにならないよう情状酌量してやって欲しいと願い出た大介に、岩下課長はほっぺたを膨らませながら反対します。
「バカ野郎、そんなことが出来るか!」
「彼らは命を狙われる危険を冒してまで証言しようと言ってるんですよ!? 我々警察は証言だけを貰って、あとは知らんフリというワケですかっ!?」
また急に暴れん坊将軍になった大介の剣幕に、課長のほっぺもみるみる萎んでいきます。
「……分かった。この件はオレが責任を持つ」
「課長! 有難うございます!」
そんなワケで、あとは真犯人を逮捕するだけ。わざと事件現場の公園でローラースケートするシゲルたちを、爆弾を搭載したラジコン飛行機がヒッチコック映画よろしく襲って来るんだけど、大介が愛銃COLTパイソンで撃ち落とし……
変装して潜んでた愛住署の刑事たち(なぜか嘱託医の淳子まで!)によって、真犯人はみごと逮捕されるのでした。未成年者たちをオトリに使って、もし万が一失敗してたら、大介に脅されて許可しちゃった課長の人生が終わってましたw
「大事なことを教えてくれて有難う」
最後にはガキンチョたちに頭を下げられ、センセイ気分に酔いしれる黒乳首サンバ男なのでした。
これが本来の『走れ!熱血刑事』なんですよね。かなり学園モノ寄りの青春アクションドラマなんです。
当時、学生役の若手俳優たちはビックリするくらい演技がヘタでしたから、現在の感覚で観ると学芸会みたいで鑑賞に耐えないんだけど、今回のガキンチョたちは悪くなかったし、内容も共感できるもので良かったと思います。
夢を抱くと言えば聞こえがいいけど、突き詰めればそれはただの現実逃避だったりする。まだ幼い子にそれを自覚させるのは残酷だしツラいことだけど、あえてその役目を引き受けた刑事・大介くんは、乳首こそ黒いけどカッコ良かったです。
が、どうせなら水沢アキさんの乳首が見たかったし、見せるべきでした。
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