☆第390話『二十歳の殺人』
(1980.1.18.OA/脚本=小川 英&尾西兼一/監督=木下 亮)
平田という男が殺され、目撃者の証言などから容疑者は二十歳になったばかりの森口吾郎(清水昭博)という若者にほぼ確定され、殿下(小野寺 昭)とスニーカー(山下真司)が逮捕に向かうんだけど逃げられちゃいます。
森口にはみどり(斉藤とも子)という19歳の妻と、生まれたばかりの娘=ひろみがいて、生活が苦しいというのに平田に10万円の借金を踏み倒され、取り返そうとして争った弾みで死なせてしまったらしい。
で、夫の代わりに事情聴取を受けたみどりは、こんなことを主張します。
「吾郎ちゃんはまだ19歳だったんです! 未成年だったんです!」
つまり平田を殺した時、森口は誕生日イブでまだ成人してなかったと彼女は言う。それが本当なら、量刑がかなり軽減されることになります。
確かに、犯行時に壊れた置時計は夜の11時55分で止まってる。だけど現場から逃げる森口が目撃された時刻は、その約20分後。この誤差はいったい何なのか? 森口が犯行時刻を誤魔化すために時計の針を動かした、としか考えられません。
だとしても、森口は内面的にまだ子供だし、妻子を抱えてる事情も考えれば、たった数分の違いぐらい見逃してやりゃいいじゃん!って、若いスニーカーは言うんだけど、勿論そんなワケにはいきません。平田が午前0時にはまだ生きてた事実も証明され、森口の「二十歳の殺人」はいよいよ確定となります。
そんな折り、赤ちゃんのひろみが急性肺炎を起こして入院し、藤堂チームは街宣車を使って「すぐ病院に連絡しなさい」と森口に呼び掛けます。
罠じゃないかと疑いつつ、やっぱり心配で森口は病院に電話します。対応したのは殿下でした。自首を促す殿下に、森口は泣きながら訴えます。
「なにが成人だよ! たった2~3分のことじゃねえか! それだけで、たったそれだけで、俺がなんでそんな重い罪を背負わなきゃなんねえんだよ!?」
「森口!」
「今まで大人たちは俺たちをどんな眼で見てきたと思う? 若いのに結婚してうまくいく筈がねえとか、子供に子供が育てられるワケがねえとかよ……それがどうして、どうしてたった2~3分の違いで大人の法律で裁かれなきゃいけねえんだよ!」
「甘ったれるな森口!」
「なにぃ!?」
「お前は、ひろみちゃんの父親なんだぞ! 成人してようがしてまいが、お前は夫であり父親なんだ! 一人前の大人なんだぞ!?」
「…………」
「だったら、ちゃんと一人前に、犯した罪を償うんだ。それでこそお前は、誰にも恥ずかしくない、ひろみちゃんに対しても恥ずかしくない、立派な男と言えるんじゃないのか?」
「…………」
森口は何も言わずに電話を切ってしまいます。深夜、雪(ホンモノ)の降る中、殿下は病院の玄関で森口が現れるのをひたすら待つのでした。
今にも雪まつりの氷像と化しそうな殿下に、スニーカーが問います。
「来るでしょうか、森口……」
「来る」
そんな凍死寸前の殿下の優しさに応えたのか、夜明けになって森口はやって来ました。ロビーで待ってたみどりが、泣きじゃくりながら抱きつきます。
「ひろみちゃんのそばにいてやるんだ。あまり時間は無いがな」
殿下にそう言われて、森口はみどりと寄り添いながら病室へと向かうのでした。
まぁ相変わらず地味な話ではあるんだけど、殿下のキャラクターがよく活かされて良かったんじゃないでしょうか? これが山さんや長さんだと説教臭くなりそうだし、ゴリさんには似合わないし、ましてやロッキーが顔を毛むくじゃらにしながら「自首しろぉーっ!自首するんだぁーっ! 自首しろぉーっ!自首するんだぁーっ! 自首しろぉーっ!自首するんだぁーっ!」って説得しても森口は一生現れなかった事でしょう。
しかし今回はストーリーよりも、若手清純派女優として注目されてた斉藤とも子さんが、初めて母親役を演じたことで話題になりました。
しかも夫の森口を演じたのは学園ドラマ『青春ド真中!』と『ゆうひが丘の総理大臣』で斉藤さんのクラスメイトだった清水昭博さん。お二人の確かな演技力とコンビネーションが、本作を見応えあるものにしてくれました。やっぱり、当たり前だけど演技力は大事です。
斉藤とも子さんは当時18歳。デビューは'76年のNHK少年ドラマシリーズ『明日への追跡』で、土曜ドラマ『男たちの旅路』で演じられた車イスの少女も忘れ難いけど、ブレイク作は何と言っても前述の学園ドラマ2本。たぶん『太陽にほえろ!』にゲスト出演された頃は一番多忙だった時期で、当時放映中の『あさひが丘の大統領』には残念ながら出演叶わず。その代わりに(?)ちょっと前にヒロインを務められた映画『悪魔が来りて笛を吹く』で宮内淳さんと共演されてます。
刑事ドラマのゲスト出演は、同じ'80年の6月に放映された『大捜査線』第20話と、翌'81年放映の『部長刑事』第1202話、それと2015年放映のNHK土曜ドラマ『64/ロクヨン』がWikipediaに記載されてます。
清水昭博さんは息が長いですね。若い頃より今のほうが渋みを増してカッコいいです。元奥さんが小野みゆきさんだったというのはビックリしました。
清水さんはダメ男の役が多かったけど、じつは長身でイケメンですよね。小野みゆきさんと結婚されてたのは知りませんでしたが、けっこう似合いのカップルだったんじゃないでしょうか。