ご存知、横溝正史さんの大人気ミステリー小説「金田一耕助シリーズ」の中でも特に名の知れた、幾度となく映像化されてる作品。
本作は1969年7月から12月までNET(現テレビ朝日)系列で全24話が放映された、土曜夜10時半スタートの60分枠ドラマ『怪奇ロマン劇場』の一篇(第12話)で、片岡千恵蔵 主演の映画版(’51)に次ぐ2度目の映像化作品。
’77年の映画版では渥美清が、’96年版では豊川悦司が、そしてテレビ版では古谷一行、片岡鶴太郎、稲垣吾郎、吉岡秀隆らが演じた名探偵・金田一耕助を、本作では田村正和さん!……ではなく、この方が演じておられます。
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誰やねんっ!?
何かのスポーツ選手にしか見えない、このサッパリしつつも濃ゆいおじさんは、大河ドラマを中心とした時代劇や『ザ・ガードマン』『キイハンター』等のアクションドラマに多数出演され、声優やナレーターとしても’90年頃まで活躍された、金内吉男さん。
短髪&背広姿の金田一には違和感ありまくりだけど、原作通りのモサモサ頭&袴姿が定着するのは’76年公開の角川映画『犬神家の一族』における石坂浩二さん以降のこと。
それまでは片岡千恵蔵さんのダンディースタイルが主流でした。
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そして『八つ墓村』と言えば’77年の映画版におけるこの方、渥美清さんの金田一がまた俺ジナルに溢れてました。
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まぁ、どんな格好をしたところで「ただの寅さんやん!」ってツッコまれるのは織り込み済みだった事でしょう。
そもそも『八つ墓村』の主人公は寺田辰弥という天涯孤独の青年であり、金田一耕助はその友人という立場のゲストキャラに過ぎず、出番が少ないんですよね。
’77年の映画版で萩原健一さんが、’96年版で高橋和也くんが演じた寺田辰弥を、この『怪奇ロマン劇場』で演じたのが田村正和さんなのでした。
戦国時代に毛利氏の追撃から逃げ延びた8人の落武者たちを匿い、だけど褒賞金に眼がくらんで裏切り、惨殺した「祟り」によって、村人たちが次々に狂死したと云われる岡山県のとある寒村、通称「八つ墓村」。
そこに東京からやって来たのが主人公の辰弥。彼はどうやら村一番の資産家=田治見庄左衛門の子孫で、家系を継ぐべく当代家主の久弥に招かれたんだけど、着いた当日にその久弥が毒殺され、連鎖的に次々と関係者が殺されていく。祟りじゃあ〜っ!?
八つ墓村にはさらに、大正時代に田治見家の先代=要蔵が起こした大量殺戮事件の秘密もあり、どうやら辰弥はその要蔵が村娘をレイプして生ませた息子らしい。
それもこれも落武者の「祟りじゃあ〜っ!?」と信じて疑わない村人たちに、お前が来たせいで呪いが復活したんじゃあ〜っ!?と虐待され、辰弥は「それならいっそ殺じてぐれえ〜っ!!😭」と泣き崩れます。
あの眠狂四郎が、あの古畑任三郎が、あのニューヨーク恋物語が「ぴえ〜ん!」って。
で、そこに颯爽と駆けつけたのが、短髪&背広姿の金田一耕助!
この金田一さんはなんと探偵ですらなく、大学の法医学博士という設定で「やめたまえキミたち!」なんて口調だったりするから面食らっちゃう。
けど、当時の映像作品における金田一耕助のイメージは前述のとおりダンディー、かつ質実剛健で腕っぷしも強かったりする。
主役たるものスーパーマンとして描かなきゃダメ、みたいな空気が当時はあったんでしょう。次回レビュー予定の映画(’61)に登場する金田一耕助には、もっと面食らっちゃうこと請け合いです。
かように金田一のキャラ設定が大きく違うし、60分枠の尺に収めるためストーリーもかなり省略されてるけど、大筋はほぼ原作通り。
ただ、怪談のドラマ化がコンセプトの『怪奇ロマン劇場』ですから、テイストは完全にホラー映画。怖いのがニガテな方にはオススメできません。
だからこそ、本作における金田一耕助がスーパーマンとして描かれることに意味が生まれる。彼が登場するとホッとできるワケです。
’77年の映画版における渥美清さんも、また違った意味でホッとさせるw そこが『八つ墓村』の魅力なのかも知れません。
その’77年版で山本陽子が、’96年版で萬田久子が演じた辰弥の異母姉=春代に、夏川かほる。
そして’77年版で小川真由美が、’96年版で浅野ゆう子が演じた未亡人にしてヒロインの美也子に、大映ドラマ『赤い疑惑』のレビュー記事でもご紹介した実相寺昭雄 監督夫人の、原 知佐子。
同じキャラクター、同じストーリーでも、創る人や演じる人、創られた時代背景などの違いによって、味わいが変わってくる。
レギュラーキャストが入れ代わりながら何年も続く連ドラを愛好して育ったせいか、私はそういうところに面白さを凄く感じます。
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