☆第274話『帰ってきたスコッチ刑事』
(1977.10.28.OA/脚本=杉村のぼる&小川 英/監督=竹林 進)
やっぱり、この人が加わると画面が引き締まり、番組のクオリティーが数段アップされます。スコッチ(沖 雅也)が帰ってきた本エピソードは、1977年後半の全作品を見渡してもダントツの見応え。私は何度繰り返し観たか判りません。
白昼堂々、人混みのど真ん中で起きた殺人事件と、山田署管内における暴力団員射殺事件で使用された拳銃が同一であることが判明し、スコッチが半年ぶりに七曲署管内で大暴れ。
戸川組の事務所に乗り込み、ナメた態度をとる幹部を殴りつけ、色めき立つ組員たちにすかさず銃口を向けて、スコッチはこう言います。
「遠慮はいらん。ぶち込まれたいヤツは前へ出ろ」
この時期の七曲署……いや、歴代メンバーを見渡しても、そんな台詞を言える刑事はボス(石原裕次郎)ぐらいしか他にいません。同じクール路線の刑事でもジプシー(三田村邦彦)やデューク(金田賢一)じゃサマにならない。本当にぶっ殺しかねないオーラを持ってるのはスコッチだけw
そんなスコッチが後任刑事=ロッキー(木之元 亮)と組んで犯人=池上(遠藤征慈)を追うんだけど、池上は重度の覚醒剤中毒者。もはや情もモラルも全く通用しない狂人で、これ以上に危ない犯罪者はいません。
で、警官を射殺した池上をスコッチ&ロッキーが発見し追い詰めるんだけど、そこでなんとロッキーの「拳銃恐怖症」が再発! 肝心な場面で固まってしまい、バケモノと化した池上を再び野に放つ結果を招いちゃう。
すっかり自信を無くしたロッキーを励まそうとするボン(宮内 淳)に「やめとけ。怖いヤツに理屈を言っても無駄だ」とクールに言い放つスコッチ。なのに、スコッチはあえてロッキーを連れて捜査を続行、再び池上を廃屋まで追い詰めます。
池上は銃砲店から奪ったライフル2挺で完全武装。しかも恐怖や痛みを感じない、ある意味「無敵」状態のモンスターが相手とあって、さすがのスコッチも脂汗と手の震えが止まりません。
そんなスコッチの姿を間近で見て、衝撃を受けたロッキーは逆に冷静さを取り戻すんですよね。で、二人は見事な連携プレーで池上を取り押さえるのでした。
ところが事件が解決すると挨拶もせず、サッサと山田署へ戻っちゃうスコッチ。一言お礼を言いたかったのに!と残念がるロッキーに、だからスコッチは黙って去ったんだと先輩刑事たちは言います。
「およそ他人には見せたことのない弱みを、お前にだけは見せた。誰でも怖い時はあるということを、お前に教えたかったんだよ」
思えばスコッチも、拳銃による過去のトラウマを抱えてる点ではロッキーと同じ。誰だって拳銃は怖い、怖くて当たり前なんだってことを、理屈抜きで教えられる人間はスコッチしかいなかったワケです。
ロッキー登場編では「取って付けた」ような印象しか無かった拳銃恐怖症の設定が、まさかスコッチのゲスト回で活かされ、こうも感動的なドラマに昇華されるとは! もし、それが最初からの計算だったとしたら、あらためて『太陽~』スタッフ恐るべしです。
それにしても前回はボス(石原裕次郎)の格好良さを引き立て、今回はスコッチの素晴らしさを引き立てたロッキーの、底抜けのカッコ悪さはどうでしょう?w
もちろん『太陽~』は新米刑事の成長を描くドラマですから、最初は色んなことが「出来ない」のが当たり前なワケだけど、それにしても初期ロッキーはヘタレっぷりがあまりに目立ちます。あのマイコン(石原良純)でさえPCの扱いなら誰にも負けなかったのに!w
これじゃ人気が爆発しないのも当然で、なんだか木之元さんが気の毒です。とはいえ、相方=ボンとのバランスを考慮した結果でもあろうし、番組がよりシリアスな路線に傾倒していく時期の新人刑事ですから、仕方がなかったんでしょう。
これより2年半後、スコッチは七曲署に本格復帰。成長してちょっとだけ格好良くなったロッキーとw、再び一緒に捜査することになります。
ムーミン
特技が山登りっていうのがまた、地味だし発揮できる機会もほとんど無い。そのうえ拳銃恐怖症ですから、人気が出るワケない。思えば不憫なキャラクターでした。