ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『太陽にほえろ!』最終回―1

2019-01-25 00:00:05 | 刑事ドラマ'80年代









 
14年4ヵ月という長い歴史を締めくくったこの最終回は、昭和の大スター・石原裕次郎さんの遺作でもあり、渡 哲也さんとのツーショットが見られる最後の作品でもあります。

当時、番組の視聴率は既に平凡な数字になってましたが、さすがに多数のスターを生み出した「お化け番組」の最終回として、話題にはなってました。

だけど、その内容は「若手刑事があわや殉職のピンチ」&「欠場してたボスが帰って来る」という、過去にも何度か描かれたシチュエーションのWパックに過ぎず、私としては物足りなさを感じたのが正直なところ。

それが、翌年に裕次郎さんが亡くなられ、結果的に遺作になっちゃった事と、ボスが取調べで生命の尊さを語る長台詞が、全て裕次郎さんのアドリブだった事から「遺言」みたいに解釈されて、最近の雑誌アンケートによる「忘れられない最終回」の第1位に輝くほど伝説化されたんですよね。投票した人が全員オンエアを観てたとは思えないんだけどw

長年の『太陽』ファンである私から見れば、裕次郎さんは単に番組のテーマを自分流に語っただけであり、それは決して遺言なんかじゃなくて、いよいよ幕を閉じる『太陽にほえろ!』への贈る言葉、ひいてはファンへの感謝の言葉なんだと解釈する方が正しい気がします。

いずれにせよ、裕次郎さんが心底から我々に伝えたかったメッセージには違いなく、これは伝説と呼ぶに相応しい作品だったと、私も今となっては思います。


☆第718話『そして又、ボスと共に』(1986.11.14.OA/脚本=峯尾基三/監督=鈴木一平)

OPタイトルはオール打ち込みによる楽曲「太陽にほえろ!メインテーマ’86」(作・編曲=大野克夫)に合わせ、代理ボスである渡さんを中心に編成されたものですが、最終回のみ裕次郎さんの紹介カットも復活した1回限りのスペシャルバージョンになってます。

直前にデューク刑事こと金田賢一さんが降板されたんで、尺的にはプラマイゼロで問題無いんだけど、後半のボス歩きに挿入される各刑事のフラッシュカットはデュークがマミー刑事に差し替えられ、長谷直美さんだけ2回登場するという珍品タイトルにもなってます。

さて、朝の七曲署捜査第一係室。当直明けと思われる「ブルース」こと澤村 誠(又野誠治)に、番組最後の新人刑事「DJ」こと太宰 準(西山浩司)が声を掛けます。

「ねぇ~、今日のさぁ、射撃大会だけどさぁ、俺すごいプレッシャー感じてんだよね」

「んん? そんな顔してないねえ」

「いやホラ、性格的にさ、顔には出ねえからさ」

DJは一係に配属されたばかりの新人刑事で、年齢的にも最年少だった筈ですが、若手のブルースやマイコンに対しては基本タメ口ですw

芸歴はたぶん西山浩司さんの方が長いから…って事かも知れないけど、初代新人刑事のマカロニ(萩原健一)も先輩のゴリさん(竜 雷太)や殿下(小野寺昭)によくタメ口を叩いてましたから、意図的にそういう生意気さや人懐っこさを再現した可能性もありますね。

ブルース役の又野誠治さんは、この時期(PART2の途中まで)無精髭を生やしてました。もともと服装や髪型に一貫性が無い人なんだけど、あの無精髭だけは何だか品が無くて私はイヤでした。『インディ・ジョーンズ』のハリソン・フォードみたいに格好良く感じなかったです。

そんなヒゲとチビの凸凹コンビは、午後から開催される射撃大会に意欲満々なのですが、そこに自動車窃盗の指名手配犯=恩田(杉 欣也)の居所を知らせる匿名のタレコミ電話が入ります。

帰宅前のひと仕事として、その場所を確認しに行こうとするブルースですが……

「ところでDJ。美味い………ケーキ屋知らんか?」

「その顔でケーキ?(笑)」

「………(怒)」

タレコミ情報は本物で、カノジョのアパートに潜んでいた恩田は、ブルースが現れるや窓から飛び出して逃走します。

「恩田っ!!」

ジーパン刑事のテーマをバックにブルースが疾走します。かつてアクションシーンの定番だったこの名曲も、ブルースの時代には(ジーパン=松田優作さんとキャラが被るせいもあって?)選曲される機会があまり無かったのですが、今回は最終回って事で外せなかったのでしょう。

「あの野郎、捕まえたらぶっ殺すからなコノヤロー!」

こんな物騒な刑事(しかもヒゲ)にだけは捕まりたくないもんですw 七曲署に赴任した当初はこんなキャラじゃなかったんだけどw

捕まったらぶっ殺されるとあって、必死に走った恩田は廃屋に逃げ込みます。暗がりの中でブルースを待ち伏せ、鉄パイプで襲い掛かるのですが……

「なんだお前? やってやろうじゃねえか。来い」

百戦錬磨のブルース(しかもヒゲ)に適う筈もなく、あっさり手錠を掛けられ、ぶっ殺されそうになったその時……!

背後に気配を感じ、ハッと振り返ったブルースの腹部に銃弾が撃ちこまれます。どうやらこれは、最初からブルースの生命を狙う罠だった!

楽しみにしてた筈の射撃大会に現れず、連絡もつかないブルースの身を「ドック」こと西條 昭(神田正輝)が案じます。

「DJ、ブルに何か変わったこと無かったか?」

「いや、別に……あ、なんか美味いケーキ屋知ってるか?なんて言ってました(笑)」

「ブルがケーキ? そういうのお前、変わったことっつーんだろ!(怒)」

DJが紹介したケーキ屋に行くと、ブルースは奥さんに贈るバースデーケーキを注文してから現場に向かった事実が判明します。あの顔でバースデーケーキですw

捜査第一係長代理の「警部」こと橘 兵庫(渡 哲也)が刑事部屋に戻り、今やただ一人のベテラン刑事となった「トシさん」こと井川利三(地井武男)から状況を聞き出します。

「澤村から連絡は?」

「いや、ありません。警部、やはり……」

「何かあったな」

ケーキ屋から女のアパートへと足取りを追ったドックとDJは、例の廃屋で血痕とブルースの警察手帳を発見します。

一方、恩田のカノジョをマークしていた「マミー」こと岩城令子(長谷直美)と「マイコン」こと水木 悠(石原良純)は、映画館でカノジョと落ち合おうとした恩田を確保します。

恩田は何者かに自動車窃盗及び覚醒剤所持のネタを握られ、成功報酬100万円でブルース襲撃に協力させられた事を自白します。

更に、ブルースが撃たれた時の状況を恩田から聞き出したマイコンは、ダサい顔をして橘警部にそれを報告します。画像をご覧下さい。どの瞬間を捉えても、マイコン刑事はダサいのですw

「その場に倒れ込んで、動けない程の重傷だったそうです」

一応医学に詳しいドックも、現場で発見した血液の量からブルースの重傷ぶりを推測します。

「警部、あのまま出血が続いてるとすれば、ブルは間違いなく死にます」

そこに不吉なタイミングで電話が掛かって来て、応対した橘警部の顔色が変わります。

「多摩川の河原で、男の死体が発見された」

まさか、ブルースが!? 通常なら『太陽』のレギュラー刑事がそんなアッサリ死ぬワケ無いんだけど、最終回だけに何が起こるか分かりません。

「多摩川の河原」という大雑把な情報だけで現場に駆けつけたドック達はw、恐る恐るシートをめくり、その死体が大部屋の無名俳優(あるいは撮影スタッフ?)である事を確認し、胸をなで下ろします。例え無名でも生命は生命なんですがw

「ハッピーバースデーツーユー♪」

「ええっ?」

ドックは空元気いっぱいで、ブルースが注文してた特大バースデーケーキを、彼の愛妻=泉(渡瀬ゆき)に届けます。

「そんなビックリしないで。頼まれたんですよ、ブルに」

「主人に?」

「ちょっとブルね、張り込みで手が放せなくて。ほらアイツ真面目だからさ、手ぇ抜くこと知らないんだもん」

こういう場合、警察としては事実をそのまま伝えるべきなのかも知れませんが、刑事である前に人間であることを重視する『太陽にほえろ!』ですから、家族を心配させない配慮を選択したワケですね。

それにしても馬鹿でかい(いかにもブルースらしい)ケーキを見て、泉は楽しそうに笑います。

「こんなに食べきれるかねぇ~」

泉役の渡瀬ゆきさんは、石原プロ作品(たぶん『西部警察』)にゲスト出演された際に渡哲也さんの眼に止まり、それまで違う芸名だったのを(渡さんの本名を頂いて)渡瀬に改名された……と何かの記事で読んだ事があります。

見るからに明るくて性格の良さが滲み出てるし、演技力もある人ですから、渡さんに気に入られたのも大いに納得出来ます。ぶっきらぼうなブルースとの組み合わせがまた楽しくて、私も『太陽』セミレギュラー陣の中で特に好きだった女優さんです。

さて、それにしてもブルースの行方は未だ掴めません。頼みの綱だった恩田は真犯人の正体を知らず、捜査は行き詰まった状態。早く見つけ出して救出しなければ、一係はまた仲間を1人失う事になってしまう……!

憔悴しきった橘警部が一係室に戻って来ると、さっきまで自分が座ってた係長の席に、誰かが座っている!

「藤堂さん!」

そう、いよいよ我らが「ボス」こと、藤堂俊介(石原裕次郎)が帰って来たのでした。

(つづく)
 

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