雑誌『昭和40年男』最新号の“バディ”特集をブログで取り上げたのをキッカケに、初めて『傷だらけの天使』をレビューし、その流れから『俺たちの勲章』を起点とするバディスタイルの刑事ドラマを連続レビューして来ました。
その歴史に刻まれた作品たちを並べてみると、けっこう傑作が多いことに気づかされます。
バディ物に限定せず「ダブル主演」と謳われた作品も挙げていくとキリが無くなっちゃう。たとえば2011年にテレビ朝日の深夜枠で放映された、あの『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』。
黒木メイサ&多部未華子の組み合わせによる“女性版『俺たちの勲章』”ってな触れ込みにどれだけ期待したことか!
ところが蓋を開けてみたら二人が同じ部署にいるのは最初の2話だけで、あとは最終話までほとんど顔を合わさないという意表を突きまくった構成。それを抜きにしてもツッコミどころ満載のカルト作で、今となってはとても懐かしい!
それはともかくとして、フジテレビの“月9”枠で『東京DOGS』が放映されたのが2009年ですから、’80年代に『あきれた刑事』と『ベイシティ刑事』がコケて以来、このジャンルにはけっこう長い“冬の時代”があったワケです。
そんな中で突如現れ、2002年以降「刑事ドラマの代名詞」の座を独占し続けてるのが『相棒』というテレビ朝日水曜21時枠のお化け番組。今秋、いよいよ“シーズン22”に突入しちゃいました。
アキラ=水谷豊さんの主役回である『傷だらけの天使』#19から始めたバディ特集なので、ラストも水谷豊さんで締めようと思います。
このシリーズに関しては今まで悪口ばっか書いて来たし、全ての刑事ドラマを“刑事がただ突っ立って謎解きするだけの紙芝居”にしちゃったA級戦犯って捉え方を変える気は無いけど、一方で「観ればたいてい面白い」し「とっくに死に体だった刑事物ジャンルをここまで延命させた救世主」だと認めても来ました。
あらゆる理由で’70年代や’80年代みたいな創り方が不可能となった今、どうすれば刑事物がサバイブして行けるかっていう指標を示してくれた番組なのは間違いなく、好き嫌いは置いといてリスペクトするしかありません。
やっぱり実際、観ればたいてい面白いんですよね。前シーズンの1話&2話がそうでもなかったからそろそろ限界か?って思ったけど、今シーズンの1話&2話はしっかり面白かった。
やり手の弁護士である栗山千明さんが、失踪した婚約者の捜索を警視庁“特命係”の杉下右京(水谷 豊)に依頼し、上手く乗せられた右京がバディの亀山(寺脇康文)と共に探っていくと、話はカルト教団が引き起こしたテロ事件へと繋がり、さらに教団の壊滅を企む公安部(引いては政府)の陰謀論へと拡がっていく。
時事ネタを積極的に取り込み、国レベルにまでスケールを拡げるこの作劇スタイルも『相棒』以降の刑事ドラマ群がこぞって真似した筈で、今やすっかり手垢が付いたにも関わらずちゃんと面白いのは、やっぱり凄いと認めざるを得ません。
今回は右京たちがカルト教団の本部に潜入し、脱出するスリラー的要素もあり、実年齢71の水谷さんが格闘アクションまで見せてくれて私は感動しましたよ!
基本的にはインテリジェンスながら荒唐無稽なことも平気でやっちゃう。だから『相棒』は面白いワケだけど、それは“水谷豊が演じればこそ”かも知れません。
やっぱり、今さらだけど、俳優さん個々の力量とその組み合わせが“面白さ”に与える影響は計り知れない。それをつくづく感じました。
水谷さんのバディは寺脇さんが一番しっくり来るし、今回はゲスト=栗山千明さんの持ち味を120%活かした創り手たちの功績もデカい!
刑事役を数多く演じて来られ、このブログにも何回登場されたか判んない栗山千明さんが初回ゲストと知って、満を持してのご登場だなと思う反面、新鮮味は皆無だろうとも私は思ってました。
けど、それは杞憂に終わりました。近年の作品で見せておられる天真爛漫さから、失踪した恋人を想う女性としての憂い、そして最後は……
完全にネタバレだけど、こんな恐ろしさを特殊メイク無しで表現できる女優さんはそうそういない筈。ホラーのジャンルから頭角を表された栗山千明さんの面目躍如です。
それにしてもまぁ、レギュラーキャスト陣の平均年齢が異常に高いw 若いシュッとしたイケメンが1人もいないのがホント素晴らしい!
内閣情報官“社 美彌子”役の仲間由紀恵さんもすっかりベテランの風格だし。
阿部寛さんとバディを組んだ『トリック』からもう23年ですよ! その頃の私はまだ30代前半(ギリギリだけど)。今年もあっという間に残り2ヶ月。言葉が見つかりません。
とにかく、水谷豊さんはやっぱり凄いし、バディ物には傑作が多い。そんな気づきが今回の収穫でした。
久しぶりの青木もいいアクセントでした。
仲間由紀恵さん不気味な演技ハマりますね。社役も不気味ですが、大奥の治済役は怖すぎます。
やっぱりちょっと人間離れしてる感じがあり、今回はそこが見事に活かされたと思います。