☆第358話『愛の暴走』(1979.6.8.OA/脚本=小川 英&尾西兼一/監督=児玉 進)
病院のボインボイィィ~ン!な可愛い看護婦=洋子(石田えり)が、ナイフを持った若い男=武司(中西良太)に拉致され、タンクローリーで連れ去られるんだけど、たまたま病院に来てた毛むくじゃらの大男が無理やり助手席に乗り込んで来て、ナイフを持った狂犬と舌っ足らずな熊に挟まれて遠距離ドライブに連れ回されるという、これ以上ない悪夢に見舞われます。
やがてその熊がロッキーと呼ばれる刑事(木之元 亮)であることが判るんだけど、彼は「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」と馬鹿のひとつ覚えみたいに同じセリフを繰り返すばかりで何の役にも立ちません。
武司は洋子の元カレなんだけど、洋子が杉浦というチンピラ(河西健司)に心変わりした上、杉浦とその手下どもにリンチされたもんで逆上し、彼女と心中するつもりで拉致したのでした。
タンクローリーには大量のトルエンが積まれており、民家にでも突っ込んだら大惨事を招く恐れがある為、ロッキーは「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」と連呼しますが何の役にも立ちません。
で、武司は途中で杉浦の手下が乗るバイクを見つけ、ロッキーが「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」と制止するのも聞かずに撥ね飛ばしてしまい、復讐に燃える杉浦一派(要は暴走族)にアサルトライフルで狙われる事態にまで発展し、ロッキーはなんとか武司を止めるべく「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」と必死に説得しますが、何の役にも立たないのでした。
本作は当時新人ライターだった尾西兼一さんのデビュー2作目だけど、若い男女の逃避行に若手刑事が付き添う構図といい、いまいちハートに響いて来ない感じといい、前作(#343『希望のサンバ』)とよく似てます。私はどうも尾西さんとは相性が悪いのかも知れません。
主役のロッキー=木之元亮さんが相変わらず一本調子な演技で「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」しか言わないし、劇団「ミスター・スリム・カンパニー」のツッパリ俳優たちのツッパリ演技もステレオタイプでつまんないしで、石田えりさんというオアシスが無ければ何の見所もなく、観ながら「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」って叫びたくなります。
唯一面白かったのは、覆面車でタンクローリーを追跡してたゴリさん(竜 雷太)が、車で進路妨害してきた杉浦の手下を引きずり下ろし、フルボッコにする場面。
「貴様、なんで我々を妨害した!?」
「面白えからだよ!」
「面白え? なにが面白え? なにが面白えーっ!?」
……って、進路妨害されただけにしちゃゴリさんの怒り方がハンパないw なんだか調子に乗ってるスリム・カンパニーの連中が気に食わなかったのかも知れませんw
クライマックスは、ライフルを持った杉浦一派に追われて山小屋へ逃げ込んだロッキーが、自分がオトリになって武司と洋子を逃がしてやるも、途中で武司が引き返してロッキーと共闘する展開になります。
「俺、戻るよ。俺のやったことで、あの刑事1人死なせるなんて、俺……そんなこと出来ないよ」
「……イヤよ、私はイヤ! あなたもイヤ! 杉浦さんもイヤ! みんなイヤ!!」
そんな洋子の反応だけは、リアルで良かったと私は思います。
で、武司の協力により杉浦一派からライフルを奪ったロッキーは逆転勝利。
「おい、無事だったか!?」
駆けつけたボン先輩(宮内 淳)に、ロッキーは顔を毛むくじゃらにして言います。
「ええ。どういうワケか、仲間が出来たもんですから」
「仲間?」
「いや、俺はそんな……」
照れる武司だけど、ひたすら「止めろ! 止めるんだ!」「落ち着け! 落ち着くんだ!」としか言わないロッキーに対して、武司がいつ仲間意識を芽生えさせたのか、眼がふし穴の私にはさっぱり判りませんでした。
あっさり武司を見捨てた洋子の描かれ方だけはリアルで良いと思ったのに、ラストシーンで留置所の武司に洋子が差し入れを持って来たらしい、みたいなフォローを入れちゃうし(そこは例によって小川英さんの手直しかも知れないけど)う~ん、尾西脚本……私にとっては鬼門になるかも知れません。
石田えりさんは当時19歳。前年に映画『翼は心につけて』で注目され、翌'80年の『ウルトラマン80』レギュラー出演、そして'81年のATG映画『遠雷』等で本格ブレイクされることになります。
刑事ドラマへのゲスト出演は本作しかWikipediaには記載されてませんが、以前ここでレビューした『刑事犬カール』#27みたいに別名義で出演された作品は他にもあるかも知れません。
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