☆第408話『スコッチ誘拐』
(1980.5.30.OA/脚本=中村勝行/監督=鈴木一平)
意外と本数が少ない、スコッチ刑事(沖 雅也)の貴重なハードアクション編。じっくりストーリーを語るような作品じゃないのでサラッと流しますが、これまでの『太陽にほえろ!』じゃ聴けなかった素敵なセリフがいくつもあるので、そこをピックアップして行きたいと思います。
ある日、女子高生の恵子(白石まるみ)が下校途中、石橋蓮司たち悪党3人組に誘拐されます。すぐに藤堂チームが動き出すんだけど、なぜか蓮司たちは身代金も何も要求して来ない。石橋蓮司だけに何か別の狙いがありそうです。
すると深夜、自宅待機してたボス(石原裕次郎)にスコッチから電話がかかって来て、蓮司に呼び出されたと言うもんだから驚いた。
「とにかく1人で来いというのが条件ですから。行って来ます」
「おい、ちょっと待て。スコッチ!」
天下のボス様の制止を無視し、一方的に電話を切っちゃうのもスコッチならでは。こういうキャラが1人いるだけでドラマの層が厚くなります。
で、指定された場所に出向いたスコッチは、ライフル銃で武装した蓮司たちにあっさり拉致され、恵子と一緒に大型トラックのコンテナに監禁されちゃいます。
三人組はかつて、2ヶ月かけて綿密に計画した銀行強盗を、たまたま通り掛かったスコッチに職務質問されたせいで、中止を余儀なくされてしまった。
そう、真の目的はスコッチへの復讐であり、現職刑事である彼を次なる強盗計画に加担させること。恵子の誘拐はその為のエサに過ぎなかったワケです。強盗より誘拐の方が罪は重い筈だけど、蓮司の辞書に「捕まる」という文字は載ってないんでしょう。
そんなワケで、本物の警察手帳を持つスコッチが警備員たちを欺き、まんまと蓮司たちは現金1億円の強奪に成功します。
このテの話はアクション系の刑事ドラマじゃすでに定番化してたけど、あまりに荒唐無稽ゆえか『太陽にほえろ!』じゃそれまで一度もやってなかったと記憶します。ファンの間じゃ賛否両論ありそうだけど、私はもちろん大歓迎。こんな話ばかりだと困るけどw、元よりあらゆるジャンルを網羅した「ドラマのデパートメント」なんだから全然アリだと思います。
さてスコッチは、最初に蓮司から呼び出された時点で、この展開をある程度予測してました。おとなしく蓮司たちの指示に従いながら、スコッチは虎視眈々と「倍返し」のチャンスを伺います。
すっかり油断した蓮司たちに恵子が解放され、無事に帰宅したという報せを受けた途端、ボスがふだんは浅黒い顔を青くして呟きます。
「危険だ……」
「えっ?」
「スコッチは人質の命を守るために奴らの言いなりになった。だが、その人質が解放されたとなると、あいつを束縛するものは何も無い」
「かえって危険な状況になったって事ですか!」
「あいつの事だ。何をしでかすか分からんぞ……」
スコッチが殺される事よりも、スコッチが大暴れして甚大な被害が出ちゃう事を心配するボスが最高ですw こういう面白味も今までの『太陽~』には無かったですよね。
案の定、スコッチは行動を開始します。
「おい。タバコくれ」
「なんだって?」
「タバコを吸わせてくれと言ったんだ」
「刑事さんよ。人にモノを貰う時はな、もっと下手に出るもんだぜ!」
「イキがるな、バカ」
「なんだとコノヤロオォォォーっ!!」
蓮司の子分2人の内、より短気そうなヤツを選んでわざと怒らせたスコッチの狙いは、コンテナの片隅に置かれた補充用ガソリンのポリタンク。フルボッコにされながらスコッチは、そのタンクに近づいてニヤリと笑います。
恵子からコンテナ内の状況を聞き出した山さん(露口 茂)も、そこに着目します。
「それだ山さん。スコッチはガソリンを武器に使うつもりだ!」
「危険だ! 危険すぎる!」
「確かに危険です。しかしトラックの居場所を知らせるには有効な方法です!」
そう、スコッチはガソリンを滲ませた衣服に火をつけ、蓮司たちをパニック状態にさせると同時に、その煙でトラックの居場所を周りに知らせます。一歩間違えばポリタンクが爆発して全員木っ端微塵だけど、スコッチは間違えません。
慌てて工事現場に突っ込んだトラックから、スコッチが決死のダイビング! さらに相当な高さの鉄骨から砂場に飛び降りるスタントも、全て沖雅也さんがご自身で演じておられます。(ちなみに蓮司はスタントマン任せw)
あとはもう独壇場。華麗なる立ち回りで1人、また1人とフルボッコにしていくスコッチの勇姿は、凶暴にして神々しいほどカッコいい!
似たようなキャラの刑事は『太陽~』以外の番組にも沢山いるけど、アクションでここまで魅せられるのは『大都会 PART ll』の徳吉刑事(松田優作)ぐらいしか見当たらないし、現在だともう皆無でしょう。まさにレジェンド!
わざわざ居場所を知らせるまでもなく、藤堂チームの仲間たちが駆けつけた時にはもう、敵はすっかり制圧されてました。
「ロッキー、スニーカー。あとの2人は向こうに転がってるぞ」
蓮司にライフルの銃口を向けつつ、後輩たちに後片付けを指示するスコッチも超カッコいい! こんな姿をもっといっぱい見せて欲しかったですね。(やがて沖さんが体調を崩され、スコッチは山さん化していきます)
「たっ、助けてくれ! 助けてくれよ、おい!」
こいつなら本気で殺しかねないと悟った蓮司は、ちゃんと分別がありそうな長さん(下川辰平)に救いを求めます。
「よしよし、助けてやるよ。お前たちの証言が無くちゃ滝刑事は助からんからな」
そう、スコッチは蓮司たちを半殺しにするより前に、銀行強盗の片棒を担いじゃってる。いくら人質を取られてたとは言え、お堅い警察上層部はこれを契機に厄介払い=スコッチをクビか左遷にしかねません。
本庁から戻って来たボスは、浅黒い顔をまたもや青くしながら、暗いトーンで言います。
「今度の件に関して、いろいろ検討した結果、やはり……」
「やはり?」
「オッケーだよ~ん!」
ここでボスがいにしえの「がちょ~ん!」ポーズを披露されたのは、のちに石原プロの『ゴリラ/警視庁捜査第8班』で谷啓さんがキャスティングされるのを予知しての事に違いありませんw
いや~、やっぱりアクション物はいい! 血湧き肉踊るとはまさにこういうこと。ただし、それがちゃんとサマになる役者さんがいればこそで、後のジプシー(三田村邦彦)やデューク(金田賢一)じゃこうはいきません。沖雅也さんはやはり日本映像界の宝だったと、つくづく思います。
前回レビューの『あさひが丘の大統領』#26じゃヒロインだった白石まるみさんは、さすがに今回みたいな内容だと「お飾り」にならざるを得ないけど、そこにいるだけで輝く「華」であればこそのお飾りで、その役目は十二分に果たされたと思います。
その功績が認められてか、以後も#439『ボスの告発』、#560『愛される警察』、#617『ゴリさん、見ていてください』、#629『ドリーム』とゲスト出演が続いていきます。
ほか、刑事ドラマは『噂の刑事トミーとマツ』第2シリーズ#35、『誇りの報酬』#03、『特捜最前線』#444等にゲスト出演。'80年代後半にはヌードも披露され、近年はタレントデビューされた愛娘=守永真彩さんと親子ペアで漫才にチャレンジされたり等、何かと話題を提供されてます。
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