☆第26話『愛するって何ですか?』
(1980.4.30.OA/脚本=大原豊/監督=土屋統吾郎)
ラグビー部のキャプテン=水野(井上純一)にカノジョが出来ます。
最近あさひが丘に引っ越して来た謎の美少女=弘子(白石まるみ)が浜辺に落としたペンダントを拾ったのをキッカケに、ダメ元でアタックしようとしたら彼女の方から「友達になって下さい」と言って来たもんだから驚いた!
「もちろん! もちろんだよ!」
だけど世の中、そんなウマイ話はありません。いくらTVドラマとはいえ……いや、TVドラマだからこそ、なんの努力もせずに欲しいものが手に入るなんてことは有り得ない、あっちゃいけないんです。
弘子は夕方5時という小学生みたいな門限を律儀に守り、サイクリングに誘っても「私、そういうことはダメなの」と暗い顔をして、理由を尋ねても「今は言いたくない」としか答えない。これじゃチョメチョメ出来ません!
それでも本気で弘子を好きになっちゃった水野は、彼女が自分から理由を言う気になるまで待つと決意し、チョメチョメは我慢します。チョメチョメしたい真っ盛りの高校生なのに、偉いぞ水野!
ところがある日、待ち合わせ場所で弘子を待つ水野の前に現れたのは、なんだか陰気な顔をした中年男=山根(城所英夫)、なんと弘子の父親でした。
「娘はここには来ない。それに、今後の付き合いもお断りする」
「ええ? ちょっと、どういう事ですか?」
「とにかくこれ以上、娘には近づかないで頂きたい。それだけだ」
「そんな、理由も言わずにいきなりそんなこと言われても! とにかく弘子さんに会わせて下さいよ!」
「弘子ももう会わないと言ってるんだ。これ以上しつこくするな!」
それだけ言って山根は車に乗って立ち去ります。ちょっと待ってくれ、どういう事なんだ?! 俺のチョメチョメはどうしてくれるんだチョメチョメは?! チョメチョメはーっ?! チョメチョメーっ!!
当然、納得いかない水野は僅かな手掛かりから弘子の家を探しだし、近所迷惑も考えずに「弘子さん! 開けてくれよ弘子さん! 出てきてくれよ弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん! 弘子さん!」と喚き散らすもんだから警察が駆けつける騒ぎとなり、またもや竹内教頭(高城淳一)を「水野は退学だな」とニンマリさせちゃうのでした。
見かねたハンソク先生(宮内 淳)が山根家を訪れ、父親から真相を聞き出します。
「心臓疾患?」
そう、弘子は山さんの奥さんと同じように心臓に持病があり、いつ発作を起こすか分からないから刺激を避けて生活しないといけない。だから水野とチョメチョメするなどもってのほか。そんな殺生な!
父親の山根は妻を亡くし、たった一人の娘を守るために転職し、出来るだけ静かな環境を選んで引っ越して来た。
「あの子が、いま一番欲しがってるのは友達だということは知ってます。しかし、弘子が発作を起こすと怖がってみんな離れて行ってしまう。そのたびに傷つくあの子を、私はもう見たくないんだ」
「水野はそんなヤツじゃありませんよ」
「同じだよ! キミも同じだ。同じ思いを二度とさせたくないんだ。分かったら帰って下さい!」
「彼女はどうなんですか? だからってこの先、友達も持たずに、ただ病気を怖がって、ひっそり暮らして行くだけなんですか? 彼女はそれで幸せなんですか?」
「…………」
「幸せなんですか?」
そんなハンソク先生の真摯な訴えが功を奏し、水野と弘子はデートすることを許されます。ただし、常にハンソクが監視することを条件にw これじゃ一生チョメチョメ出来ません!
弘子の希望により病気のことを知らされてない水野は、スキだらけのハンソクのスキを狙ってあっさり監視を逃れ、遊園地で弘子をジェットコースターに乗せた挙げ句、いきなりチョメチョメ……はさすがに無理だから、ファーストキスを奪っちゃう。すると……
「あっ……んん……あああ!」
えっ、そんなに悶えるほど俺のキスよかったの? うへへへ!と水野が喜んだのも束の間、弘子は倒れてしまいます。そう、父親があんなに恐れていた心臓発作。それは弘子自身が水野を失いたくない一心から、限界にチャレンジした結果でもありました。
救急病院に搬送され、弘子はなんとか一命を取り留めたものの、父の山根は当然ながらハイパー激怒。ハンソク先生が土下座して謝っても許してくれません。
「私がバカだった……私がバカだったんだ! 今後もう二度と、私らには関わらないでくれ!」
何も知らなかったとは言え、水野は自分を責め、泣きじゃくります。
「オレのせいなんだ……オレのせいなんだよ! オレ、連絡とるのが遅れちゃって、救急車が来るのが遅かったんだよ……その間、彼女ずうっと苦しんでて……オレ、彼女があんなになるなんて思ってもみなかった……思ってもみなかったんだよ!」
「もういい、水野。お前だけが悪いんじゃない。自分だけ責めるな。大丈夫だよ、彼女は。きっと大丈夫だよ」
何の根拠もなく言うハンソク先生だけどw、その言葉どおり山場を乗り越えた弘子は、治療のため専門病院に転院することになります。そして……
「水野くん、来てくれてありがとう」
「ああ。今度の日曜日には行くからね。頑張れよ」
山根の車に乗せられ、次の病院へと向かう弘子をハンソク先生と一緒に見送ったのが、水野が彼女の笑顔を見た最後の時となりました。
「そんな……嘘だ……嘘だよ!」
数日後の朝、あさひが丘学園を訪れた山根から、水野とハンソク先生は弘子が亡くなった事実を聞かされます。あのあと再び発作を起こし、あっけなく……
「そんな……そんな……そんな事って……うああああーっ!」
水野が叫び声を上げながら走り去った後、山根はハンソク先生に言います。
「あの子は、小さい頃から病気を背負ってひっそりと生きて来たんです。いや、私の方が病気を恐れて、そんな生き方をさせてしまったんです」
「…………」
「そんな生き方を強いられて来たあの子が、生まれてきて良かった……生まれてきて良かったと、そう言ってくれました」
「そうですか……」
いつもの砂浜で、朝から夕方まで泣き続けてる水野に、ハンソク先生がペンダントを手渡します。弘子と仲良くなるキッカケになった、あのペンダントです。
「お前に渡してくれと言ったそうだ」
「…………」
「お父さん、お前に感謝していたよ。お前と逢ったことで、彼女は生まれて初めて、生きてることを感じたのかも知れないって……そう言ってたよ」
「…………」
「お前は、彼女の命を縮めたんじゃないんだよ。お前が愛したことで、彼女は本当に生きられたんだ」
「…………」
「生きて、死んでいけたんだよ」
……かくもストレートなメロドラマ、そして難病モノも、'80年代に突入した当時はすでに「あざとい」あるいは「ダサい」と思われてたかも知れません。
けど、そういうのがすっかり観られなくなった現在あらためて観ると、なかなか良いもんですよねw 井上純一さんの熱演もあって、私はもらい泣きしそうになりました。
ナイター中継で順延になった前回分(#25)の放映がさらに後回しにされたのは、恐らくこの純愛物語の放映日程を変えたくなかったから。女子ウケしそうだし、井上さんと白石まるみさんのキスシーンが大々的に宣伝されてましたから。
現在の眼で見ると大した描写じゃない……かと思いきや、ソーシャルディスタンスを意識しなくちゃならない今となっては逆に貴重かも? そういや2020年現在の恋愛ドラマは、ラブシーンをどう処理してるんでしょう? AVは一体どうしてるの? どっちも最近観てないから分かんない。
んなことはどーでもよくてw、このエピソードに番組スタッフが勝負を賭けるほど、当時は井上純一さんが女性人気を引っ張ってたワケです。ハンソク先生にいまいち人気が無いからと言うより、そういう対象がどんどん低年齢化してたんですよね。当時まさにジャニーズの「たのきんトリオ」が一世を風靡しており、私はほんとヘドが出そうでしたw
そして相手役の白石まるみさんも絶賛売り出し中で、この直後に『太陽にほえろ!』#408にも登場、以後も4回出演される常連ゲストとなられました。
ラブシーンは恐らく今回が初めてで、ご本人にとっても思い出深い作品になったんじゃないでしょうか。
切ないお話でしたね。
まさか彼女が最後に死んでしまうとは思いませんでした。
どこか遠くの病院に行ってしまうからお別れだね…って結末かと思いきや、まさかの展開!
私もホロリと来ましたよ。
この位になると、ハンソク先生もかなり落ち着いて来て、生徒想いの良い先生になっていますよね。
きっと初期のハンソク先生なら、水野くんを茶化して楽しんでいたかな?
それにしても、こちらに掲載されている上から三枚目の写真のハンソク先生の笑顔が可愛くてツボにハマってしまいました。
特に今回みたいな切ないストーリーにおいては、なくてはならない拠り所ですよね。