そば屋で食べるかまぼこって、美味しいと思いませんか。
ごつごつした平たい陶器に、分厚く斬られたかまぼこが五、六切れ。かまぼこはあくまでも真っ白。表面が瑞々しく光ってる。
箸でつまみ上げると、ごてっとした頼もしい重量感。まずは何もつけずに一口囓る。
もっちりと歯から離れて、心地良い弾力感と品のいいかほり。やがて咀嚼が進んでかまぼこは細切れになるのだけど、舌の先でぐっと押しつけると、魚のすり身感覚がある。
僕はそば屋に行くと、出てきたかまぼこの出身地を訊くことが多い。今のところは小田原出身のかまぼこが一番多かったけど、これは東京でかまぼこを仕入れるとなれば当然かもしれない。

写真:立川『田堀』
ここのオススメは焼酎そば湯割りだっ
しかしこの美味さの一番の要因は、店の雰囲気によるところが大きいのではないか、と密かに思っている。
「ああ、俺もようやく、そば屋で酒を呑めるようになったなあ」としみじみし、ショーユを拒んでワサビでかまぼこを囓る。地酒をぐいっとあおる。
「そばがきのボウバクとした味もいいんだよな...」(漢字書けない)
「ご主人、だし巻きももらおうかね...」
などと、あくまでも「...」を重視する。恥ずかしがってはいけません。
なお、そば屋に入るときはなるべく一人が好ましい。間違っても体育会系10人組などでなだれ込まぬこと。
恋人と差し向かいになった状況では、
「このツヤね、これが大事」
「そばをカリッと揚げたものがあるんだよ」
なんて通ぶることも可。
無論、相手が長年連れ添った細君なら、
「どうでもいいけど、あんまり飲まないでよ」とたしなめられることでしょう。