
台所を整理していたら、弁当箱が出てきた。
思わず手に取り、なで回した。
それはワタクシが会社に通っていた頃に使っていたものだ。
建築関係の仕事だったので、現場の屋上とかで食べていたことを想い出した。
なつかしーなー。
お弁当って、いいものですね。
コンビニのお弁当とか、そういった既製品ではいけない。
その日の朝、弁当箱に詰め込んできたものでなければいけない。
おかずの味付けは濃いめでないといけない。
いろいろといけないことばかり言っているようだが、今はまさしく混迷の時代。子供の教育だって、いけないことはいけないと、ちゃんと言っていかなければイケナイのだ。
で、えーと、何だっけ。あ、そうそう。お弁当の話だった。
さ、待望のお昼になりました。そして、目の前にはお弁当があります。
おかずは定番の、鶏の唐揚げに卵焼き。隣には彩りも鮮やかなブロッコリーがあって、辛子マヨネーズが少々へばりついてる。隅っこにはぬか漬けのきゅうりと人参を三枚ずつ収め、箸休め体制も万全。
ご飯は白飯。たまには海苔に覆われてるのもいいけど、それは半年に1回程度にとどめる。基本は白飯です。梅干し中央配置を最上級とする。

それではまず、鶏の唐揚げからいきましょうか。箸でつまみあげて、一口。
次に、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたご飯を、箸でブロック状に切り取って口中へ追加投入。
唐揚げからにじみ出る旨味が、冷えて固まったご飯と混ざっていって、この上なく美味しい。とくに唐揚げの衣が美味しい。
んぐんぐと飲み込んだら、今度は卵焼きいきましょう。甘辛く味付けして、ほどよく火を通した卵焼きは冷めても美味しい。焼きたてとは違った滋味がある。
ここでまたご飯を口中へ追加。出汁&醤油の利いた卵は思いのほかコクもあって、
「卵焼きって、こんなに立派なおかずだったのか...」
と、あらためて認識させられる。冷えた卵焼きのパワーをあなどってはいけない。
そうなんであります。お弁当の魅力は、冷めた美味しさなのであります。
冷めているからこそ、濃いめの味付けが活きてくる。
「冷めてて良かった!」と、今日も建築現場の屋上では、作業員の方々が口にしていることだろう。
「今日もちゃんと冷めてた!」と、全国の学校では、青春の匂い立つ若人たちが口にしていることだろう。
しかし、恋人同士や夫婦においての冷めた状態は、どちらかというと後々キケンなことしか待ち受けていない。
冷めてていいのはお弁当だけなのだ。