89年という年は、初めて海外旅行に出た年だった。行き先はイタリアとギリシアである。だから、旅行から帰ってきて間もない頃、イタリアの旅行記に目がとまったのは当然かもしれない。
しかしラグーサという街は知らなかった。その旅行では、ラグーサのあるシチリア島に行かなかったし、そもそも外国の街の名というものは、一度耳にしたとしても憶えにくいものだ。
その後、海外に出る機会はなかった。ラグーサという街の名前はすっかり忘れてしまっていた。
ところで...。
僕は近々、海外旅行に行くことにした。行き先はというと、再びイタリアなのである。日程の半分を、南のシチリア島で過ごす予定だ。
寝室の壁に、シチリア島の大きな地図を貼りつけた。どういうルートで回ったら効率よく観光出来るか。それを思案するのが、寝る前の日課になっている。ギリシア文明の遺跡は出来るだけゆっくりと眺めたいし
(シチリア島にはアテネにあるパルテノン神殿のような遺跡がたくさんあるらしい)、
『グラン・ブルー』に出てきた海沿いの風景も見たい。
そんな風に旅行の準備を進めている中で、突然想い出したのが、くだんの89年版エスクァイアに載っていた写真なのである。イタリアのどこかの風景だったが、あれはシチリアではなかったのか...。
つづく