第三台場にて
春であります。
東京の桜も満開に近い。長い長い冬が終わって、雀躍の季節がやって来たのだ。
しかしこの季節の変わり目というもの、
「何を着ればいいのか」
この問題が毎年、発生して困っている。
うっかり厚着をすると、電車の中などは大汗をかいてしまう。
しかし薄着で出掛けると、思いがけず冷たい風に吹かれたりする。
こういう時は、他の人が来ている服装を参考にするのがいいのだ。
だから、お出掛けする朝には、外を歩いている人を観察するのが習慣になっている。
窓を開け、何人かの服装を眺めて
(マフラー着用率5割。コート8割。ジャケットのみ若干名)
など統計学を応用して、自分の服装を算出するのであります。
しかし、中にはとんでもない格好をしている人もいる。
朝からTシャツ1枚で歩いている輩がいる。かと思えばダウンジャケットで着ぶくれている人もいる。
(この時期にダウンはないだろ)
こう思いつつも、
(確かに風は冷たいし、でも気分的に厚着はしたくない。かといって上着を手に持って歩くのは面倒だし...)
迷いに迷う。
困惑のあまり
(何で外出しなきゃなんないんだ)
(オレ、ずっと家で仕事していたいのにな)
理不尽な不平・不満が沸いてくる。
それでも、何とかコーディネートを完成させ、外に出てみる。
すると、さっきは分からなかったのに、けっこうな雨が降り出している。
(もうっ!)
エレベーターで部屋まで引き返し、傘を持ち、ブーツに履き替えて再度外出。
乗ろうとしていた電車にはもう間に合わない。
(ホントにもうっ!)
憤慨しつつ、駅まで歩いて行く。
すると、思いがけずいい匂いがする。見上げると、見事な桜が咲いているのでありました。