早くも秋である。
ついこないだまで、外を歩くのも辛い暑さだったのに、今は外出をするにも
「長袖を着ていこうか、どうしようか」
迷うようになった。
そして、秋は食欲の季節でもあります。
ことに、白いご飯がウマい。
おかずが何であれ、ひと口食べて口中に味を充分に染み込ませ、そこに白いご飯を投入する瞬間ほど、幸せなことはない。
白いご飯といえば、トンカツ屋のご飯はどこも美味しい。
東京のトンカツであれ、名古屋の味噌カツであれ、ご飯でハズレることは滅多にない。
どこもみな、少々固めに炊いてあるようだ。
しかし、美味しいご飯が固めということではないと思う。
僕が思う美味しいご飯は、内部までふっくらと炊きあがり、かつ表面にはハリがあって、歯触りも愉しめるものだ。
こういうご飯は、家ではなかなか炊けない。
やはり、一度に一升も炊くようなところで食べるのが正解であります。

今では間違った概念だそうです
先日、名古屋に行ったときに、名鉄ビル内の味噌カツ屋に入った。
[矢場とん]というチェーン店であります。
この店が、とてもよかった。
ご飯はふっくらと、かつ固めに炊きあがり、文句なし。
肝心の味噌カツも、甘さほどよく、ご飯の相手をさせるにはちょうどいい塩梅。
そして何よりも、店員たちがよかった。
昔は乙女だったであろう年齢の、女店員たちが、くるくるとよく働いている。
味噌カツを頼むと
「練り辛子とすりゴマがよく合いますよ」
アドバイスしてくれる。
各テーブルには調味料セットが備わっているのだが、初めて入った店だと、どれを使えばいいのか分からないことが多い。
そこを、ずばりと「これを使うのがベスト」と教えてくれる。
何事も「選択と集中」が叫ばれる現代、実に頼りになる昔の乙女なのであります。
東京のトンカツ屋といえば、目黒権現坂通りの[とんき]が一番好きだ。
暖簾をくぐった瞬間から、もう魅力が溢れている。
天井からは電球がいくつも下がり、その下には長大な無垢板のカウンター。これがいつも完璧に磨き上げられている。
カウンターの内側には、昔から変わらぬ男たちが一心に立ち働いている。
カツを揚げて、油を切り、熱々のところを包丁で切っていくその手はグローブのように分厚い。
時折、黒電話がジリリンと鳴る。
キャベツがなくなりそうになると、すぐに若い店員がキャベツを山盛りにしたザルを持ってきてくれる。
女店員が酒のお代わりを心配してくれる。
それでいて、どの店員も笑顔が絶えないのであります。
「仕事が楽しくてしょうがない」
という表情なのだ。こんな店はいったい、日本にどれだけ残っているのか。
無論、ここの白いご飯もウマい。
カツは、中までしっかりと火が通っていて、これは好みが分かれるようだ。僕自身も、本当は中はレアなものが好みだ。
それでもこの店に惹かれてやまないのは、結局、人に惹かれているのだと思う。