地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 31

2010年11月26日 | Weblog
【31日目】7/26(月) Samos → Barbadelo
ここのアルベルゲには自動販売機も何もないので、さっさと起きてさっさと出発。
宿泊代は寄付ベース。
素泊まりなので、5ユーロを寄付箱に入れ、いつもよりかなり早い6:45にアルベルゲを出る。


出がけに、昨夜レストラン情報を得たバルに立ち寄り、スィナがサングラスの落し物が届いてないか聞く。
外で待っていると、スィナがサングラスを手に喜び勇んで出て来た。
「あったわ~!誰かが拾って届けてくれてた~

「よかったね。これで3回目のラッキーだね」と応じていると、スィナがふと、「ねえ、私のサングラスってこんな柄だっけ?」と聞いてきた。
よく見ると、それはスィナのサングラスとは似ても似つかない、柄の部分にストライプの模様が入ったものだった。

全然違うやん…。

喜んだのもつかの間、スィナは肩を落としてスゴスゴとそのサングラスをバルに返しにいった。

っていうかさ、自分のサングラスかどうかぐらい、パッと見て分かるやろ
本当にお気楽な人である。



さて、今日はスィナの足取りが重く、遅れ気味に歩いている。
聞くところによると、夜中にお腹が空いて起きてしまったとのこと。
昨夜のディナーで、タコが嫌いなスィナはタコを食べてなかったから、量が足りなかったのか?
でもその代わりにパンをモリモリ食べてたけどなあ…。


この辺りは緑が多く、朝は霧が出ていた。
ガリシア州は雨が多いことで有名なので、緑が深い。




こんなお地蔵さんみたいなのが、道端に建っている。





2時間半ほど歩いてやっとバルが出て来たので、朝食休憩。
先にスタートしていたマークが朝食を食べている。
韓国人のカユンも通りがかる。

相変わらず、スィナがアジア系を見かけるたびにいちいち呼び止めて出身国を聞いたり、私に「あの子知ってる?」と聞いてきたりするのが、面倒くさくて気に障る。
Santiagoに近付くにつれ、私の不機嫌度が増していくのはどうしたものか。


キムと会う。
本日は生理1日目で絶不調だそうだ。
また、昨夜はエリザベスと2名1室のアルベルゲに泊まったが、エリザベスのイビキがひどくて眠れなかったとこぼす。

そうなんだ。
エリザベスとは何度か同じアルベルゲになったけど、イビキがうるさい印象はなかったな。
疲れてたのかなあ?



今日は、Santiago手前100km地点のSarriaを通過する。
徒歩なら100km以上歩けば巡礼証明書がもらえるので、Sarriaを出発地点としてSantiagoを目指す人も多い。
また、近隣に住んでる人であれば、週末巡礼的に、ハイキング感覚で歩いているので、Sarria以降のカミーノの混雑具合はかなりのものだ。


朝食場所からSarriaまでの約8kmは、マークやキムと一緒に歩く。
スィナとマークが前を歩き、私とキムが少し遅れて2人で歩く。

ちなみにキムはここへ来てまたメンタル不調である。
体の不調が心の不調を呼んでいるものと思われる。
私が貸した本はすでに第8章まで読んだと言ってたが、元気がない。

キムは巡礼終了後、家族が住んでいるドイツへ飛び、そこからアメリカには戻らず直接ニュージーランドへ行く予定にしている。
が、家族に巡礼でのことを色々聞かれることにまだ心の準備ができていないので、しばらく時間が必要だという。

しかもニュージーランドへ到着した際は、現地で会う人たちにはカミーノのことは話したくない、とも。
う~む、これはかなりの重症かも。

私も巡礼してる割にはイライラしたり、ふてくされたりすることが多くて、巡礼って一体なんなんだろうと思ったり、心の整理がつかない部分はあるけど、キムほど深刻に考えてはいない。
きっとこの巡礼が終わると、何事もなかったように日本での日常生活に戻るであろう自分が想像できる。

そういえばキムは、Astorgaで一緒だった時に、他に行きたい場所があるので、このまま巡礼を続けるか、途中で抜けるか悩んでいた。
とある有名なベトナム人のお坊さんがいて、その人が南フランスでワークショップというか、なんというか、ヒーリング的な集いをやるそうだ。
それにとても興味があるキムは、参加するかどうかずっと悩んでいた。
せっかくフランスに近い場所にいるんだし、興味あるなら参加すればいいのにと思うが、本人はなかなか決められないでいた。

その件は結局どうなったのかと聞いてみると、その後もずっとギリギリまで悩んでいたら、他の巡礼者に「今すぐインターネットで交通経路を調べなさい。それでうまく乗り継いで間に合うようなら、明日の朝すぐに出発しなさい。うまくつながらない場合は諦めなさい」とアドバイスされ、ネットで検索したところ、そのお坊さんがいる南フランスまでのうまいアクセスがなかったとのこと。
なので諦めてカミーノを歩き続けているそうだ。

そうだね、それでよかったと思うよ。
踏ん切りがつかない時には、そうやってキビキビと指示してくれる人がそばにいるといいね。


ふと、キムに「歳聞いてもいい?」と言われたので、「いいけど、びっくりするよ」と前置きしてから正直に答えると、キムは愕然として「一体あなたたちのDNAってどうなってんの?! ほんっとうらやましいわ!」と。
あはは。確かに東洋人はかなり若く見えるもんね。



ほどなくSarriaへ到着。
お店やオフィスが立ち並び、かなりにぎやかな通りを進む。
ちょうど薬局が見つかったので、虫さされ用の塗り薬を購入。

お店の人に伝える時に、”remedio”という言葉を使い、Bed Bugに刺された腕を見せるとすぐに理解してくれた。
アナマリアから教えてもらった表現が役立った。
ちなみにスペイン人であるアナマリアに聞いても、Bed Bugのスペイン語は分からなかった。
なぜだ?
日本語だったら、正確な訳ではなくても、「ああ、ダニ系のやつね」とすぐに出てくるのだが、何故スペイン語では対応する単語が出てこない?
スペインにもダニいるでしょ、当然?

なにはともあれ、無事にかゆみ止めの薬を入手できた。
薬局の人からは、「1日に3回塗るように」との指示。
ラジャー。


次にスィナがサングラスを買いたいというので、メガネショップに。
カミーノでサングラス無しはかなり厳しい。
キムもサングラスを失くした翌日には、紫外線で目が真っ赤になったので、安物のをどこかで購入したらしい。

店に入り、「アナマリアから借りてたサングラスはここのメーカーのやつなのよ」と言いつつ値段を見たスィナが驚愕。

スィナ、それ、レイバンだよ。
高いに決まってるよ。
そんな高いもの借りてくる神経がそもそも分からない。

「さすがにこんな高いの買えないわ~」と言って、安めのを探すが、なかなか気に入ったのが見つからず、今回は断念。



坂を上り、教会やアルベルゲがあるエリアへと進む。
体調が悪いキムは、今日はここでストップすると言い、私営アルベルゲにチェックイン。

私とスィナは、そろそろクレデンシャルの空きスペースが少なくなってきたので、新しいクレデンシャルを買いたい。
が、本日は月曜なり。
教会は閉まっている。

アルベルゲの人に聞くと、この先の修道院なら空いていて、そこでクレデンシャルが買えるとのこと。


ひとまずお腹を満たそうということになり、マークやキムとも連れだって近くのバルへ。
軽い食事を取りながら、話をする。
不調なキムが、「周りのみんなはとても順調にやってるように見えるのに、私だけなぜこんな目に…」と泣きだす。
いや、そんなことないよ。
他にも足の故障でリタイアした人とか、精神的につらい人とかいっぱいいるし、体調悪い時は休んで、歩ける時に歩けば全然大丈夫。
Santiagoはもうすぐそこ、100km先にあるんだから

私とスィナで一生懸命慰め、マークは目の前で泣かれて困惑顔。

マークのようにフランスのLe Puyから1,300kmもの距離を歩こうとしている、強靭な肉体と精神を持った人もいる一方、たとえ100kmでも歩くことが難しいと感じる人はいる。
肉体よりもやはり精神面が大きく作用するけれど、体の調子が悪いと心の調子も悪くなることはうなづける。


マークもSarriaに宿泊するというので別れを告げ、私とスィナは先へと進む。
修道院までキムもついてくると言って一緒に歩き始めたが、途中で「やっぱり調子悪いからアルベルゲに戻るわ」と。

見ると、この暑いのに全身に鳥肌が立っている。
確かに体調不良だ。

「とにかく、何も心配しないで、今夜はゆっくり体を休めなさい」と諭し、キムを見送る。

大丈夫かなあ、ちゃんと立ち直って最後まで歩いてくれるかなあ。



坂をヒイヒイ言いながら上り、修道院へ到着。
が、13:00からシエスタの時間で扉は閉ざされていた。
しまった、10分ほど到着が遅かった。

このマグダレナ修道院は、見学する値打ちがありそうだが、でも夕方まで待ってる時間はない。
ここでもまた、ほとんどの巡礼者がSarriaという巡礼路一大拠点を楽しんでいるところ、私たちはほぼ素通りで先へ進むのであった。

が、私は個人的に今日はそんなに長距離を歩きたくない気分。
Sarriaから4kmちょっと先のBarbadeloまでしか今日はもう行かないぞと心に決める。


途中、スィナと2人でキム宛てのメッセージを書き、カミーノの目立つ所に貼っておいた。
明日、キムがSarriaを出発したら必ずこの道を通るから見つけてくれるだろうか。
キムはいつも朝が早いので、暗くて見落とされてしまうだろうか。
でもとにかく、巡礼者同士応援してるから、がんばって!



Barbadeloに到着すると、なにやら宗教イベント?お祭り?のようなものが開催中。
教会から、人形が乗ったお神輿のようなものをかついだ集団がぞろぞろ出てくる。
そして爆竹というか、花火というか、とにかくパンパン鳴っていてうるさい。
広場ではパーティーをやっていて、たくさんの人が踊ったり食べたりしている。

その広場の真ん前にアルベルゲが1軒。
私はとにかく今日はこの村に泊まりたいので、祭りを見学しているスィナをほっといて、一人でアルベルゲの受付へ。
そこにはエリザベスもいた。

比較的小さなアルベルゲなので、ベッドを確保できるか心配だったけど、まだ時間が14:45と早めだったのでセーフ。

受付のオスピタレロがかなり手際悪くて、時間がかかり、巡礼者の列ができている。
そして私営アルベルゲにありがちな、誓約書っぽいものにサインさせられる。
「まるで移民審査みたいね」とエリザベス。

そのエリザベスがサインしていると、横からスィナが「ねえ、本当にその書類にサインして大丈夫?」と茶化す。
すると、「万が一の時はウィーンにあるアパートを売るわ」と応じるエリザベス。
このおばちゃんたちのやり取りが面白い。


チェックインに時間はかかったけど、また不織布のベッドカバーがもらえてゴキゲン。
カバーはどこのアルベルゲでももらえるわけではないので、前にもらったやつを大事に使っている。
新しいものをもらうと、古いのをやっと捨てることができる。
これでBed Bugが防げるわけではないと思うが、ま、気持ちだけ。
宿泊料は5ユーロだった。


アルベルゲは細長い部屋に2段ベッドが縦1列に並んでいた。
窓は例の広場に面している。

スィナに下の段を譲って、上に行く。
エリザベスはスィナの隣、頭同士がくっつく形で寝る。
キムの話ではイビキがすごかったらしいけど、今夜スィナは大丈夫かなあ。


エリザベスに今日はキムが体調不良だったことを伝えると、「おかしいわね、彼女昨夜は良く眠っていたのに」
って、実はあなたのイビキで眠れなかったという証言ですけどぉ。

「私がアルベルゲに戻った時には、キムはすでにベッドで寝てたわよ」
って、キムちゃんの証言では、「せっかく早く寝てたのに、エリザベスが後から帰って来て大イビキをかきはじめたので、目が覚めて全く眠れなかった」とのことでしたけどぉ。

もちろんそんなことはエリザベス本人には口が裂けても言えない。
けど、しきりにエリザベスが「おかしいわね、おかしいわね。彼女元気そうだったのに」と繰り返すので、なんだか笑いがこみあげてきて抑えるのが大変だった。


エリザベスに今日買った塗り薬を見せると、「私も同じの使ってるわ。でももうほとんどなくなったから、新しいのを買わなきゃ」とのこと。
この塗り薬1本使い切るってすごいんですけど…。
一体どんだけ豪快に塗ってるんでしょうか。
スィナと同じで、西洋人は使い方が豪快だと思われる。

そういやマリアとピーター親子もBed Bugにやられてたなあ。
彼らは今頃どこにいるんだろう?
カミーノ上でもう1回会いたい。
それか、Santiagoで無事巡礼完了を抱き合って祝いたい。



シャワーを済ませ、アルベルゲ裏手にある洗濯場に行ってみると、洗濯用のシンクがかなり汚い…。
使う気にならないので、1階にある洗面所で洗っていたら、通りがかったオスピタレロに「洗濯はあっちでしなさい」と注意された。
「は~い」と返事だけはしたものの、絶対あっちでは洗いたくないので、洗面所のさらに奥にあるトイレのドアを閉め、トイレ内にあるシンクで隠れて洗濯。
後でエリザベスにも教えといてあげた。

洗濯干し場は日陰なので、今日も洗濯物が乾きそうにない。
ズボンだけは勝手にアルベルゲの前の柵にひっかけておいたけど、あまり奇麗じゃないので他の物はここには干せない。


今日は早く到着したし、時間が有り余ってるので、スィナと2人でバルを探しに行く。
オスピタレロの話では、坂道を上がって行ったところにあるらしい。

かなり上がったところに確かにレストランが1軒あったが、20:00からディナーをやってる以外の時間にお茶とかはできない。

他にバルはなく、仮設テントみたいなところと、自動販売機とピクニックテーブルが置いてある場所しかない。

仕方なく自動販売機でコーラとポテトチップスを買い(←また?!)、ピクニックテーブルで日記などつけながらウダウダ過ごす。

自販機しかなく、そしてスペインの自販機はお札しか使えないので、後からやってきた巡礼者が「両替してくれ」と言ってきた。
んもう、みんなちゃんと日頃から意識して小銭準備しとけよ。

一応私も巡礼者なので、ちょっとだけ両替してあげたら感謝された。
でも自分用の小銭も残しておくのが鉄則。


風が強く、じっと外で座ってるのが寒くなってきたので早々に退散。
私がアルベルゲに戻ろうとすると、スィナまで日記を切り上げてついてこようとするので、「私先に帰っとくからいいよ。日記全部書いてしまえば?」と言って拒否ってみた。
朝から晩まで一緒にいるんだから、たまには別々に過ごす時間作ろうよ、スィナ。


暇でやることもないので、ちょっとベッドでウトウトして過ごした後、エリザベスとアイルランド人のルーも誘ってディナーへ。
またあの坂を上らないといけないのがしんどいが。


ディナーは10ユーロ。
スペイン料理は多すぎるからと、ルーは第2皿とだけにしてくれと店側に申し出、代金は半分の5ユーロにしてもらっていた。
そんなシステムありなのか
気がつかなかったよ。
しかもたったの5ユーロでデザートも注文できていたから、かなりお得だ。

明日はスィナの誕生日なので、みんなで前祝いとした。
いつもおじさん、おばさんメンバーが多いので、今日はルーという若者(26歳)が参加してくれてよかった。
ちょっと細かいことは忘れてしまったけど、大学院で社会学だったか何かを勉強中で、卒業後は中南米でNGO活動などをしたいので、スペイン語を勉強中。
赤い髪とたくさんのそばかすが象徴的なアイルランドガール。



夕食を終え、アルベルゲに戻ると、目の前の広場から音楽が聞こえている。
ステージがあり、何やらリハーサル中。






そうだった、スペインのパーティーは夜始まるんだった…。
開始時間は23時とのこと。
ね、眠れないよ私たち…。


ここのアルベルゲも当然、門限は22:00だけど、門限後も外出できるようスィナがオスピタレロに交渉していた。
明日誕生日だから特別に許可しろと迫り、了解を取り付けたようだ。

が、早寝早起きが習慣づいている巡礼者は夜更かしに興味はない。
「もう遅いから寝るわ」と言うエリザベスと私に対し、ノリノリなスィナはお尻をフリフリしつつ、口紅を塗りつつ、「カモ~ン」と誘ってくる。

いや、もういいですから…。
誰かこのおばちゃんを止めてくれ!


エリザベスは「年寄りは寝るから、連れてくなら若者を連れてって」と逃げ、私も「私そんなに若くないから寝る」と言い、結局スィナはルーを伴って広場へと出かけて行った。



その夜、23:00から始まったパーティーは午前4:00まで続き、一晩中ロックやらポップスやらのコンサートが繰り広げられた。
アルベルゲとしては最悪のロケーションである。
耳栓をするも、しょっちゅう「ドーン」と花火の振動があり、眠れたもんじゃない。

巡礼始まって以来、最も眠れない夜であった。












本日の歩行距離:約18km
本日の歩数:29,278歩