hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

Frankenstein

2018年09月01日 | 洋書
 珍しく古典作品を読みました。
 今年はフランケンシュタインが初めて出版された年からちょうど200年になるのです。そこでこの作品に関するエキシビションみたいなものも British Library など各所で開催されています。
 そしてうちの娘の英語のクラスもそれに乗っかり?フランケンシュタインをじっくり読み解いていくことにした様です。何か月もかけてじっくり学習し、来年5月から始まる全国統一中学修了試験のEnglish Literatureでエッセイを書くんです。脱線ついでに少し試験について説明すると、試験の準備には二年間かけます。シェークスピアから一作、古典から一作、モダンクラシックから一作、それとポエムその他、という感じで、作品については各学校、各クラスで違います。娘のクラスは、マクベス、フランケンシュタイン、そしてまだ決定ではないようですが Lord of Flies になるかもと言っています。フランケンシュタインが難しいので、ロード・・・の分かりやすいものはいいんじゃないかと思うのですが、なかなかグロい三作品になるとも言えますね。

 そうなんです、フランケンシュタイン、ものすごく難しかったですよ。娘がまだ少ししか読んでいないので聞いてもわからないし、スポイルしてくれるなというので話すわけにもいきません。
 語彙も表現も難しい上に、苦手な「自分の物語に酔いしれて語る男」の物語なのでなかなか入っていけないのですが、途中からなかなか面白くなっていきます。
 とにかく無責任なマッドサイエンティストに勝手に創造され苦しむためだけに生きる姿が切ない。彼もまたかなりの「語る男」なんですが、人間より人間らしく、それがまたもの悲しさを増すのです。
 知っている方も多いと思いますが、フランケンシュタインはサイエンティストの名前で、彼が創り上げた生き物には名前はありません。
 フランケンシュタインの態度は虐待をする親のそれについつい重ねてしまいますし、見た目で人を判断する社会の反応はいつの世も変わらないともつくづく思ったり。

 6 out of 10 

 ダウントンアビーで人気者になったダン・スティーブンのナレーションのオーディオは間延びしてこれまた物語前半のつまらなさに追い打ちをかけるようなのですが、2倍速で聴けばなんとか。


 余談ですが、フランケンシュタインは大学で Natural Philosophy を専攻し科学全般を学習する上で、ヒューマンを一から創造するという禁忌を犯してしまいます。
 偶然にも我が家の息子が大学の専攻科目を絞り込むことができずにこのまま科学全般を勉強するコースを希望しようかと迷っているところで、このタイミングでこの作品を読んだという事実に笑っちゃいます。
 晴れて入学できた後にヴィクターの様に変な気を起こさなければいいけれど(笑)


 そしてまたタイミング良く、マカヴォイ主演の Victor Frankenstein という映画がテレビで放映されました。
 原作とはかなりかけ離れた全く別のフィクションですが、ヴィクターの科学者としての生き様や情熱なんかは原作よりずっと伝わってきました。単純にマカヴォイだからだろうなぁ(笑)
 ド派手なセッティングとアクションで制作費の方が興行収入よりはるかに多いという失敗作ですが、原作にそれほど思い入れがないせいか楽しんで見られました。というか、本当に原作を読んだ直後に見られたこそ楽しめてラッキーだと思っています。

 批判の主なところは、これまで作られてきた作品全部に当てはまるでしょうが、creature の彼のキャラクターが全然違うことでしょう。かすりもしないくらい違うのです。
 原作ではとても賢くそれでいて繊細で、言葉が達者なんですよ。古典的な英語から現代の英語、フランス語やドイツ語も話せますし、なにより表現力がある。
 そもそもなんで全然違うストーリーなのに「フランケンシュタイン」のヴィクターを主人公にしなければならないのかがわからない。とある一人のマッドサイエンティストの物語にすればいいのになぁ。だとしても主演はマカヴォイでね!


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