hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

The Midnight Library

2022年10月21日 | 洋書
 人気もあるし装丁も好みなんですけど、タイトルに bookshop, bookseller, library とある作品はもう読まなくてもいいかなと思っていました。本好きをくすぐるタイトルと内容の本にはずいぶん飛びついて数々読んできたような気がします。どれも別の作品のタイトルや内容が出てきて「読んだ、読んだ、わかるわかる」という満足感を味わせてくれるし、ほんわかして心温まる物語がほとんど。実際この本の前に読み始めて中断していた本も本屋が舞台ですしね。だけど今しばらくそういうのは読まなくてもいいかなーと。
 で、特に内容も知らずに私は買わないと決めていたのですけど、娘とチャリティショップに行ったときに彼女が読みたがって買ってきたような気がしたんですよね。
 最近 Audible で無料でダウンロードできるリストの中にこの作品を見かけたので、だったら読んでしまおうと思ったら本棚のどこにもなくてびっくり。
 そこでダメ元で近所のチャリティショップに行ったら、運よくあったんです。いつも書いていますが、私の住む町は移民だらけの貧しい地域なので、読書人口はかなり少ないので奇跡に近いです。
 
 そんなわけでなんとなくの流れで読むことになったこの作品ですが、今読むべきものとして私の手元に飛び込んできたと思わざるを得ない内容でした。
 誰しもが「もしあの時違った選択をしていれば・・・」と考えることが時々あると思うのですが、私は結構昔からしょっちゅうそういうことを考えて空想しがちです。
 ただし、これまでの人生ほとんど自分で積極的に選択したり決めてきたことはほどんどありません。私もこの作品の主人公と同様、誰かが望んでいるからとか、こうあるべきだろうからと考えたり、流されたりばかりでした。主人公ノラが自殺をすることから物語は始まるのですが、私にとっては自殺を図ることすらずいぶんとアクティブに感じるくらいです。
 そして最近は「よくないなぁ」と思いながらも些細なことに文句ばっかり言って(元々ですが更に)、現実逃避からの「別の人生」を空想することが多くなってきて、こんなんでいいの?と不安に思い始めていました。そのタイミングでのこの作品との出会いです。
 この作品は人生の分岐点でもし違う選択をしていた場合のパラレルワールドがたくさんあって、主人公ノラはこれを次々と体験していく話です。
 
 で、感想ですが、mixed feeling です。すごく面白かったのですが、引っかかるところがいくつもあったというか。
 今読んだからこそ楽しめたし、今読んだからこそ不満に思うところもいっぱいあった、というところでしょうか。
 ちょっとズルしますけれど、私の感想はほとんどこのbooktuberの子と同じです。bookborn
 すでに読んだ人だけ見てね。特に2;45くらいから「そうなのよ!そこが引っかかるのよ」と思います。ちょっと説教くさいというか、読みながら何かを感じるのではなく「こう感じなさいよ!」と押しつけられてる感が強いというか。

 私の評価は 7 out of 10
 
 良い作品だとか好きな作品だとは思わないけれど、とにかく面白かったし、思うところがいっぱいあったので高評価です。
 で、私は結果高評価なのですが、次に紹介する withcindy というbooktuber が低評価をしているのですが、評価は違うけれど彼女の言っていることにもすごく共感しちゃいます。面白いので見てみてください。7.52からです。

 この子が言っているように主人公の性格が非常に不安定というか分かりづらいんですよね。最初の方は悲観的でネガティブにものを考えがちで天邪鬼で文句たれの私は結構共感できる部分が多かったのですが(笑)、途中から嬉々としてパラレルワールドを楽しみだしたところに、「え?なんで?」と急に突き放された感じ。私は生まれ変わるのも人生やり直すのもまっぴらごめんと日頃思っているのですが、最初はノラも「もう勘弁して!いいから死なせてくれよー」と思っていたのに、お説法みたいなのに洗脳されたように変わっていって・・・・ 私の方が主人公より鬱なのかも?それともここがただの陰鬱な性格の私と、ちゃんと鬱病の診断の出ている人の違いなのかなとも。躁の状態で活発になったという描写なのか。

 そんなわけで誰にでもお勧めできる本ではないです。ある程度の年齢がいっている方の方が楽しめるような気がします。主人公は30代でまだまだ若いんですけどね。
 幸せで状態の良い人はとても楽しめるでしょう。もしくは本当は幸せなのにちょっとした苦難にストレスを感じMidlife crisisかしら?とか思っている 人も楽しめるでしょう。
 ほかのレビューには死を考えている人や悩んでいる人にお勧めと書いてあるのを見かけますが、そう書いている人は多分そういう人ではないんだと思います。満たされていて素直に物事を受け止められる人なんじゃないかな。私は悩んでいる人ややや不安定な人には絶対お勧めできないです。
 私は先ほど私の手元にいいタイミングで転がり込んできた作品だとは書いていますが、かといってこの作品を通して得たものがあったとか、気分がスッキリした、自分を見つめ直すことができた、なんてことは全く思っていません。ただ単純に今こそ読む本だったと思うし興味深いところがあった、ということです。私のようなひねくれ者にも向いてない作品かもしれませんねー

 ところで、この本の入手先は先ほど書いた通り Oxfam というチャリティショップなのですが、カードを使うためのミニマムの金額までどうしてもどうしても欲しいものが無くてこの本を握りしめながら何十分も狭い店内をウロウロしていたら、おばさんが「もう持って行っていいわよ」と言ってくれました。チャリティショップで施しを受けるというまさかの展開。
 翌日、本代を持って戻りましたけれど、人の優しさを感じた思い出の一冊となりそうです。
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オラ!スペイン旅ごはん

2022年10月16日 | 和書
 2年半前にロックダウンになり泣く泣くキャンセルした美食の町スペインはサンセバスチャン旅行にようやく行ってきました。
 私は旅程をきっちり立てて動くのが好きなほうなので、行きたいところ、食べたい物、この3年間(計画を立て始めた頃から)徹底的に調査をしていたので、これ以上情報はいらないところまで突き詰めていたはずでした。
 ところが出かけるひと月前に友人が貸してくれたこの本を見ると、まだまだ知らないこと、いや、食べたい物というのが正解か、いくつもあるではないですか!
 日程内に全部こなせるか!真剣悩みました。時間もさることながら、わたくし、自称小食なもんですから、何を優先して何を諦めるか・・・・苦しみました。それくらいこの本ではたくさんのおいしそうなものが紹介されています。
 「やばい」「おいしい」だけではなく、食材のことや調理法にも少し触れ、結構ちゃんとした食レポがされているのです。
 で、悩みに悩んだ末、長年自分が計画立てていたものを食べて、その場で食べたい物を食べたいだけ食べたわけなんですが、価格も気にせず好きなようにオーダーしたので、ほかのお客さんの食べているものを指して、「アレちょうだい」といったキノコのソテーが、皿いっぱいのとろけるような生ハムよりも深い味わいのおいしいワイン1本よりも高いという事件も起きました。でもすごく美味しかったので後悔はないのです。

 そんなわけで、サンセバスチャンではこの本の中身が大活躍だったわけではなかったのですが、この漫画で見てしまってどうしてもどうしても食べたいものがあって、そのためだけにビルバオという町にも行ってきました。
 それが、炙り生ハムとフォアグラ、卵とフォアグラとキノコとポテトピューレが小さいフライパンに入った2品であります。
 「これ食べたいの」と漫画の絵をそのまま見せたら、ほんとそのまんまのものが出てきて驚きました!そしてこの炙り生ハムとフォアグラがこの旅の私のナンバー1フードであります。
写真の向きについてはすみません。

そのほか、この旅に先立って、娘がバレンシアに旅行をしたのですが、その時もバレンシアのページを写真に撮って、飲食の参考にしていました。
 私はこれまでスペインはバルセロナに数回行ったことがあるだけだったので、食文化についてはそれほど印象がなかったのですが、今回の旅を通して、そしてこの本を読んで、もっと色々な所を訪ねてみたいと思いました。これ以上食が細くならないうちに!
 近い将来スペイン旅行の予定がある方は、一度手に取ってみてはいかがでしょう。
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Klara and the Sun

2022年10月10日 | 洋書
 程よく薄くてかなり大きな文字の並んでいる作品なのですぐ読み終わるかと思いきや、さすがカズオイシグロ、苦戦しました。
 相変わらず想像力に乏しい私には何が起こっているのかわからない箇所が多々。

 主人公はクララという聡明な友達ロボットなのですが、彼女と子供の将来に関わる一大事を選択して苦しむ母親と選択しなかったことで苦しむ母親、この3人を通して描かれた unconditional love や、環境問題、科学の進歩とその背後にある問題などについて、色々考えさせられる内容でした。

 7 out of 10
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