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Fifty-year-old Alice Howland, a Harvard professor of cognitive psychology, is at the top of her game. Her kids are grown, her marriage secure, her career on fire when suddenly, after mere months of forgetfulness, she finds herself in the rapidly downward spiral of early onset Alzheimer’s Disease.
With no cure or treatment, Alice struggles to find meaning and purpose in her everyday life as her concept of self gradually slips away, leaving her unable to work, read, take care of herself, recognize her loved ones—even understand that she has a neurodegenerative disease. Without memory or hope, she is forced to live in the moment.(アマゾンから)
あらすじに関しては手抜きですみません。さて、感想を読む前に、まずはみなさん、この文を覚えてください。
John Black, 42 West Street, Brighton,
よろしいですか。さて、感想に入ります。
まず、重いテーマを扱っている本ではありますが、とても読みやすいものとなっています。医療用語がわからないと読みづらいということはなく、アルツハイマーという病のことがとてもわかりやすく説明されています。作者が科学者だからだと考えられるのですが、不必要なフリルがついていないといいますか、余計な装飾語がなく明瞭な表現が多くなっています。変にドラマティックな演出もなくすっきりしているところも魅力です。
多分この本が気になりながら手に取るのを躊躇されている方がいるとしたら、やはり主人公の悲しみや怒り、不安、または家族側のそういった気持ちなどを読者として受け止めることに覚悟がいると感じているからでしょう。
私の得た印象ではそういった心配は無用だと思いました。主人公のアリスが凛とした女性なせいもあり、思いのほか感情に振り回されないからでしょうか、読む前に想像していた雰囲気とは異なりました。
私が特に興味を持った点は「自分がアルツハイマーになったときに夫にどのような対応を望むか」ということ。
アリスの夫ジョンはすぐに治療法をリサーチし、医者に「これはどうだ、この薬は・・・」と積極的に働きかけます。
ジョンは目の前で賢くて尊敬していた妻が思いのほか急速に病に蝕まれていく姿を見届けるのが辛くて、仕事もできるだけそのままのペースにして自分のバランスを保とうとします。そんな彼にアリスは不満を感じます。アリスは自分が自分でいられるあとほんの少しの間だけは二人でピッタリ一緒に過ごしたいと願います。
子供たちもジョンに母親を最優先するように迫りましたが、結局ジョンは譲りませんでした。
ジョンを冷たい夫だと責めることができるでしょうか。私はジョンが自分のスペースを守り続ける選択をしてくれて安心しました。ジョンがそう決断したのは、それがアリスとジョンのスタイルだったから。発病しようと状況が変わろうと、二人の一番大事にしてきたことを続けることが、アリスへの愛情表現であり尊敬の念の表わし方だと信じているからだと思いました。
結局は、アリスが最後までアリスらしく生きることを選択したように、彼女はジョンにジョンらしく生きることを無意識下の意識で願ったのではないのかな、なんて思ったり。
私は時間的に能力的に許されるなら、自分の病気のことを徹底的に調べ上げて、医者と話し合い、治療法は自分で選択したい。なので逆にうちの夫は「素人が口出ししても仕方がない。医者にお任せしよう」と考え、机上のヘルプではなく、実際手と足を使ったヘルプをするタイプだと思うし、自分に必要なのはそういうケアだと思う。
(どっちにしろうちの旦那が私のために仕事を辞める、セイブする、ゴルフを休む、などは考えられないので、たいした期待もしてませんが(笑)
そしてもう一つ興味を持ったのは、遺伝性であるけれど、回避する手段がある、という点です。
アリスはこの病気が遺伝性であるため、真っ先に3人の子供たちと長女が切望している赤ちゃん(アリスの孫)のことを心配します。親として自分の苦しい病気が子供に受け継がれていくことほど辛いことはないでしょう。そしてすぐに子供たちに話をし、知ることと知らないでいることの選択を彼らに委ねます。次女は「知らないでいる」ことを選びました。
結果は長女はキャリア、長男はネガティブ。長女はそこであきらめることなく、自らの子供には遺伝をしない方法を探し出し、成功します。やはりただ任せて見守るより、自ら行動を起こし病気を知ることは、希望のある未来につながると思います。
この本を通して私が改めて考えたことは、アルツハイマーに限らずどんな病気にしろ、最終的には専門家の指示と判断に頼ることにするとしても、完全に依存することなく、段階の随所随所で何らかの形で能動的に働きかけたいということ。もちろんチョイスがあればのことです。そうすることができない場合も多いのですから。自らの病気を知ることができ、考える機会を与えられることそれ自体をありがたいと思えるようでありたい。
心配していた自らの物忘れの激しさと重なって苦しくなっていく、という点ですが・・・・相当やばいです。
いや、文体自体がそれほどエモーショナルなわけではないので、苦しいというのとは違うのですが、初期の段階での物忘れのエピソードに関すれば、相当数実際に体験済みです。それに、例えば診察中に医者がアリスに「これを覚えておいてくださいね。あとでもう一度訊ねますからね」といった内容を、私もアリスと同じくらい覚えていられないんですよ。私なんて特に「活字を見ている」はずなのにです。困ったもんです。
さて、みなさんはどうでしょうか?記事の一番上に書いた名前と住所を覚えていますか?