1986年シアトル。病の妻を亡くしたばかりのヘンリーの元に、戦時中収容所に移送されることになった日系人の遺留品が長い間閉鎖されていたパナマホテル地下から40年ぶりに発見されたニュースが飛び込む。公開された品々を目にしたヘンリーは、かつて離ればなれになった親友であり初恋相手の日系少女のことを思い出す。
「思い出す」というのはちょっと違って、封印していた想いが溢れ出てきてしまったという感じでしょうか。
中国人二世のヘンリーは父親の強い信念の下、白人だらけの学校に通っていた。
ほかのチャイナタウンの子供たちは中華学校に通っているのに、自分だけは「中国語ではなくいつでも英語話せ」と言われ、そのわりには「お前は中国人だ。中国人としての誇りを持て」と。I am Chinese. のボタンを常につけながら白人の学校に通うヘンリー。
父の意向が全く伝わってこず、そのために人種差別たっぷりのいじめに合うことに納得がいかず悶々としている。とにかく何も感じず考えず時間が過ぎていくのをひたすら待っているような子供時代を過ごしている。
ある日日本人のケイコと出会う。
I am American.
ケイコはいつでもはっきりそう言う。
戦争で日本人に対する風当たりが強いからそう言っているわけではない。
私はこの国で生まれてこの国で育っている。この国の言語を話しているの。だからアメリカ人なのよ。
ヘンリーはアメリカで外国人の、しかも同じ東洋人家庭で育っているということ、同じように差別に遭いいじめに遇う、似たような境遇の者同士、このご時世日本人のケイコの方が弱い立場だし守ってあげたいと最初は思うのだが、なにかが違う。しっくりこない。
進歩的でリベラルで教養あり、流暢に英語を話すケイコの家族と付き合うことによってそのしっくりこなかった理由がわかり、それと同時にますます自分の父親の気持ちが分からなくなり、距離ができてしまう。
真珠湾攻撃をさかいに、ニッポン人町から強制収容所へとケイコの家族は移送される。
日本軍に家屋と家族を奪われ、祖国の中国からシアトルへとのがれてきた経験から日本人への憎しみを生涯の生きる糧にしているヘンリーの父親の目を盗みながら、ヘンリーとケイコは手紙を送りあい、心を通わし続ける。
それもやがて・・・・
戦時下に外国で過ごす子供たちの様子、外国で子供を育てる親の思い(どちらも自分たちなりに子供の未来を守ろうとしているんですよね)、などが作者があくまで中立な立場を崩さずに描写する社会状況とともに綴られています(アメリカ国籍を持っているのも関わらず、日本人であるというだけで迫害されているシアトル在住日本人の様子はなかなか身につまされますが・・・・)
そんな作品です。
8 out of 10
別の人種だから、別の信仰をしているから、そんなことで程度の大小はあれど、人を傷つけることがあまりにも多発している今だからこそ、この作品は響いてくるでしょう。
本当に続きが気になって本を置くことができませんでした。目で追えない時は、とっても素敵な朗読をする動画があるのでそれで聴いて、時間のある限りこの作品に没頭しました。
お勧めします。
さて、余談ですが、ケイコと出会うまで友達のいなかったヘンリーが唯一心を通わせていたのが、路上でサックスを演奏するシェルダンという男性なのですが、この彼を通じてヘンリーはジャズに魅せられていき、ジャズを聴くこともケイコとヘンリーの間のスペシャルなひと時となっています。
そしてこのタイミングでわが家ではそれまで微妙な音楽を愛好していた息子が急にジャズにハマり始めて、読書中家の中にジャズミュージックが流れていました。雰囲気出る!
その上、息子のジャズバンドが演奏する夜もありまして、作品の内容に思いを馳せながらうっとりする気満々で生演奏を観に行ってきました。こういう偶然っていいよなぁ。
「思い出す」というのはちょっと違って、封印していた想いが溢れ出てきてしまったという感じでしょうか。
中国人二世のヘンリーは父親の強い信念の下、白人だらけの学校に通っていた。
ほかのチャイナタウンの子供たちは中華学校に通っているのに、自分だけは「中国語ではなくいつでも英語話せ」と言われ、そのわりには「お前は中国人だ。中国人としての誇りを持て」と。I am Chinese. のボタンを常につけながら白人の学校に通うヘンリー。
父の意向が全く伝わってこず、そのために人種差別たっぷりのいじめに合うことに納得がいかず悶々としている。とにかく何も感じず考えず時間が過ぎていくのをひたすら待っているような子供時代を過ごしている。
ある日日本人のケイコと出会う。
I am American.
ケイコはいつでもはっきりそう言う。
戦争で日本人に対する風当たりが強いからそう言っているわけではない。
私はこの国で生まれてこの国で育っている。この国の言語を話しているの。だからアメリカ人なのよ。
ヘンリーはアメリカで外国人の、しかも同じ東洋人家庭で育っているということ、同じように差別に遭いいじめに遇う、似たような境遇の者同士、このご時世日本人のケイコの方が弱い立場だし守ってあげたいと最初は思うのだが、なにかが違う。しっくりこない。
進歩的でリベラルで教養あり、流暢に英語を話すケイコの家族と付き合うことによってそのしっくりこなかった理由がわかり、それと同時にますます自分の父親の気持ちが分からなくなり、距離ができてしまう。
真珠湾攻撃をさかいに、ニッポン人町から強制収容所へとケイコの家族は移送される。
日本軍に家屋と家族を奪われ、祖国の中国からシアトルへとのがれてきた経験から日本人への憎しみを生涯の生きる糧にしているヘンリーの父親の目を盗みながら、ヘンリーとケイコは手紙を送りあい、心を通わし続ける。
それもやがて・・・・
戦時下に外国で過ごす子供たちの様子、外国で子供を育てる親の思い(どちらも自分たちなりに子供の未来を守ろうとしているんですよね)、などが作者があくまで中立な立場を崩さずに描写する社会状況とともに綴られています(アメリカ国籍を持っているのも関わらず、日本人であるというだけで迫害されているシアトル在住日本人の様子はなかなか身につまされますが・・・・)
そんな作品です。
8 out of 10
別の人種だから、別の信仰をしているから、そんなことで程度の大小はあれど、人を傷つけることがあまりにも多発している今だからこそ、この作品は響いてくるでしょう。
本当に続きが気になって本を置くことができませんでした。目で追えない時は、とっても素敵な朗読をする動画があるのでそれで聴いて、時間のある限りこの作品に没頭しました。
お勧めします。
さて、余談ですが、ケイコと出会うまで友達のいなかったヘンリーが唯一心を通わせていたのが、路上でサックスを演奏するシェルダンという男性なのですが、この彼を通じてヘンリーはジャズに魅せられていき、ジャズを聴くこともケイコとヘンリーの間のスペシャルなひと時となっています。
そしてこのタイミングでわが家ではそれまで微妙な音楽を愛好していた息子が急にジャズにハマり始めて、読書中家の中にジャズミュージックが流れていました。雰囲気出る!
その上、息子のジャズバンドが演奏する夜もありまして、作品の内容に思いを馳せながらうっとりする気満々で生演奏を観に行ってきました。こういう偶然っていいよなぁ。