若くして亡くなったシェイクスピアの息子ハムネットの死を中心としたシェイクスピアの家族の物語。
私はシェイクスピアにも彼の作品にもそれほど興味はないのですが、触れる機会も多いですし、彼の出身地の町 Stratford upon Avon が大好きで何度か訪れています。
町を訪れるからには、シェイクスピアのことも予習して所縁の地も訪れますし、舞台も観てきます。
その度にやはり「仕事のためといえ、家族をずっと置き去り??」ということにひっかかってはいたんですよね・・・夫婦関係はどうだったの?子供のこと大事に思ってた?男は仕事をしてお金さえ送ってればいいと思っているタイプ?とかね。
そういうモヤっとしていたことを、作者がフィクションでスッキリさせてくれた感じです。
私は歴史小説を好んでは読みませんが、歴史好きの人の語りを聞くのは大好きです。
歴史的建造物を訪れた時にガイドさんが熱く語るのを聞くのも好きだし、それが特定の人物に肩入れしていたりするとなんだかジ~ンと来たりしますし、作家が史実に希望を込めたフィクションを読むのも好きです。
この作品も作者が「こうであって欲しい」というシェイクスピアの家族の物語。
記憶の中にこの町の地図も出てくる建物もほとんど入っているので、頭の中で映像化することができて、それも手伝ってとても楽しく読めました。
勘違いしたのは医者の家。私が頭の中で映像化していたのは、シェイクスピアの長女が医者と結婚して住んでいた家であって、この作品の中に出てくる医者の家ではなかったのですが、そんな勘違いをできるのも何度も訪れているからですしね。

シェイクスピアの生家

妻アニエスのハーブ園
内容も良いのですが、英語がとても簡単で読みやすいです。調べないといけないような単語や表現はほとんどありませんでした。
英国では小学生から簡略化したシェイクスピア作品に触れますし、中学高校では何冊も原作を読みます。
そんな風に若いうちから触れているシェイクスピアの、作品以外にも触れてみてはいかが?といっているかのように、中学生くらいから読めるような簡単でとっつきやすい内容になっていると思います。そういった年齢層もターゲットに入れた作品を執筆したのではないかと勝手に思っています。
内容については省略しますが、息子を失った後の母アニエス(アンハサウェイ)と父シェイクスピアの心情描写が胸をうちます。シェイクスピアの心情は「ハムレット」を上映することで伝わってきます(「ハムレット」は息子の名前ハムネットからきているという説らしいです)。
9 out of 10
キャリー・マリガンの読むオーディオブックもお勧めです。