hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

べつの言葉で

2022年12月25日 | 和書
 ジュンパ・ラヒリがイタリア語で書いたエッセイ。
 彼女がイタリア語に憧れ、ハマり、家族を引き連れてローマに移住した時の体験や心情を綴っている。

 春先に友人から譲り受けた日本語訳の作品でしたが、思うところがありすぎて感想をなかなか書けずに今日まできました。
 私とこの友人を含むファンも多くいて大成功している作家の言語に対する考え方や向き合い方がとても印象的な内容。

 本当に本当に感じることや考えることが多すぎて読後しばらく引きずった作品です。
 そして私の今年のナンバー1作品です。

 10 out of 10
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Heartburn

2022年12月18日 | 洋書
 どこかの書店の店員さんのポップアップの文に惹かれて買った作品。
 本当に本が好きなスタッフによる素敵な文面のポップアップがついているとついつい買ってしまいます。
 主人公レイチェルはどういうわけか最初の夫にも2番目の夫にも自分の友達と不倫をされるという運命の女性。
 そんな彼女の愚痴と自虐とユーモアたっぷりの物語を大女優メリル・ストリープがオーディオブックで語ります。
 もうFull of メリル・ストリープ!やり過ぎ感が半端なくて最初は「胸やけ」するのですが、あの人、素がなんかホントこんな感じのユーモアたっぷりでおしゃべり上手のおばさんでしょ?このキャラクターにピッタリなので、なんか途中から慣れてきて普段友達の話聞いてるのと同じ感覚になってきます。
 「夫に不倫された!」というので、彼女の家に話し相手になりに行ってみたら、現夫の不倫の話から、元夫の話に移り、そうこうしているうちに自分の生い立ちから両親の性格、家族ぐるみでお付き合いのある友人たち一人一人の話、ととりとめもなく延々と話は続き、散々聞いていたら4時間後に「そろそろ帰ってもらっていいかしら?」と追い帰された、みたいな感覚になった作品でした。読書したというよりは、ほんと友達の話を聞いてた感じで読了です。

 日常のちょっとしたエピソードを物語仕立てにして話す主人公。
 カウンセラーにどうしていちいち物語にして話さないと気が済まないわけ?と聞かれます。その時の主人公の応え。

 Because I tell the story, I control the version.
Because if I tell the story, I can make you laugh, and I would rather have you laugh at me than feel sorry for me.
Because if I tell the story, it doesn't hurt as much.
Because if I tell the story, I can get on with it.

 すごく共感。だからこそ、長かろうが要点を得ていなかろうが、相手の気が済むまでとことん話を聞いてあげるのが大事だと常日頃考えています。
 残念ながら私は黙って聞いてあげることはできず、途中ごちゃごちゃ口出ししたり必要とされていないアドバイスをしたがるので、相手として最適かはわかりませんが。
 先ほど最後に追い帰された、とは書きましたが、作品自体は主人公が一歩踏み出す気持ちの良い終わり方をしています。
 タイトルの「胸やけ」は主人公が料理本作家なのでお料理のレシピと彼女の心境をリンクさせた話の紡ぎ方がされているこの作品の構成からきていると思うのですが、その点に関しては他の読者さんにお任せしておきます。

 7 out of 10 

 絶対オーディオブックで聴くのがおすすめ。
 それにしても最近はドラマだけじゃなく、オーディオブックまでこんな大女優たちがやる時代になったのねー。
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The Storied Life of A.J.Fikry

2022年12月11日 | 洋書
 島にある小さな書店を舞台にした物語。
 読みやすく心温まる話。

 6 out of 10
 
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Hamnet

2022年12月04日 | 洋書
 若くして亡くなったシェイクスピアの息子ハムネットの死を中心としたシェイクスピアの家族の物語。

 私はシェイクスピアにも彼の作品にもそれほど興味はないのですが、触れる機会も多いですし、彼の出身地の町 Stratford upon Avon が大好きで何度か訪れています。
 町を訪れるからには、シェイクスピアのことも予習して所縁の地も訪れますし、舞台も観てきます。
 その度にやはり「仕事のためといえ、家族をずっと置き去り??」ということにひっかかってはいたんですよね・・・夫婦関係はどうだったの?子供のこと大事に思ってた?男は仕事をしてお金さえ送ってればいいと思っているタイプ?とかね。
 そういうモヤっとしていたことを、作者がフィクションでスッキリさせてくれた感じです。

 私は歴史小説を好んでは読みませんが、歴史好きの人の語りを聞くのは大好きです。
 歴史的建造物を訪れた時にガイドさんが熱く語るのを聞くのも好きだし、それが特定の人物に肩入れしていたりするとなんだかジ~ンと来たりしますし、作家が史実に希望を込めたフィクションを読むのも好きです。
 この作品も作者が「こうであって欲しい」というシェイクスピアの家族の物語。
 記憶の中にこの町の地図も出てくる建物もほとんど入っているので、頭の中で映像化することができて、それも手伝ってとても楽しく読めました。
 勘違いしたのは医者の家。私が頭の中で映像化していたのは、シェイクスピアの長女が医者と結婚して住んでいた家であって、この作品の中に出てくる医者の家ではなかったのですが、そんな勘違いをできるのも何度も訪れているからですしね。

 シェイクスピアの生家
 妻アニエスのハーブ園

 内容も良いのですが、英語がとても簡単で読みやすいです。調べないといけないような単語や表現はほとんどありませんでした。
 英国では小学生から簡略化したシェイクスピア作品に触れますし、中学高校では何冊も原作を読みます。
 そんな風に若いうちから触れているシェイクスピアの、作品以外にも触れてみてはいかが?といっているかのように、中学生くらいから読めるような簡単でとっつきやすい内容になっていると思います。そういった年齢層もターゲットに入れた作品を執筆したのではないかと勝手に思っています。
 内容については省略しますが、息子を失った後の母アニエス(アンハサウェイ)と父シェイクスピアの心情描写が胸をうちます。シェイクスピアの心情は「ハムレット」を上映することで伝わってきます(「ハムレット」は息子の名前ハムネットからきているという説らしいです)。

 9 out of 10

 キャリー・マリガンの読むオーディオブックもお勧めです。
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