hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

Solitaire

2021年07月24日 | 洋書
 2014年に女子高生が作家デビューした作品。
 その当時は、高校生のリアルな気持ちや生活が描かれていて評価が高かったのでしょうが、残念ながら現在読むには無理があるような古さを感じてしまうものでした。
 主軸となっている差別問題に関して、この作品が出された年からのこの数年の社会の変化や人々の意識の変化はとてつもなく大きいものです。
 それに加えて、とても誤解の生じる物言いを覚悟で言いますが、舞台となっている地方の高校生と都心でマルチカルチャーの中で育っている我が子達とその仲間達では意識も対応もあまりにも違いすぎて、「これが真の高校生の姿よ!」と主張されても、一部の教育の行き届いていない子供たちの話にしかとらえられないのです。
 今でも大学に行って初めてこの作品に出てくるような高校生と同じような意識の同級生と知り合いドン引きするような話も聞きますが、かなり少数派になっていることは間違いないです。
 差別は一向になくなりませんが、大多数の人々の意識は良い方向に変化しているのは確実です。特に若い世代は人種セクシャリティなんのわだかまりもなく上手に付き合っています。
 未来はそう悲観するものではない気がします。

 作品の方に少しだけ話は戻りますが、差別の問題だけに限らず、この作品に出てくる子供たちが「ドラマチック」だとか「面白い」と思っていることが、大人の私たちだけではなく、現役の高校生でも「幼稚でくだらない」と思うだろうこともたくさんありました。さきほど地方性と書きましたが、田舎育ちの私は同様に高校生の生活を描いた「Normal People 」には年齢に関係なくあれほど揺さぶれたのですが、こちらにはほぼ共感できる点もなく、一概に地方の学生を描いているからとは言えないかもしれません。時代背景の違いに対応するのは読者側の問題なので、古くさいと一蹴するのはフェアではないですが、時代を超えて長く読まれる作品ではないような気がします。
 実は作品を読む前にこの作者の動画を見ていたのです。どういう経緯で高校生で作家デビューに至ったか、大学で英文学を学ぶことは物書きになる上で必要であるか、などなど話している彼女はとても話が上手で好感が持てました。特に小さい時から本が大好きで、文章を書くのが大好きだったことが伝わってくる映像がいくつかあって、それにジーンときたりもしました。なので、作品自体を楽しめなかったことは非常に残念でした。
 
 3 out of 10 

 Amazonを見る限り彼女の書く作品はどれも高評価です。ただただ私の好みじゃないだけなんでしょうね。
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My sister, the serial killer

2021年07月06日 | 洋書
 タイトルと表紙に魅かれて読みました。
 恋人になった男を次々と殺してしまう妹に翻弄される姉が語る物語。
 主人公に簡単に寄り添える感じで読み進めていくうちに、「これはもしや嫌な終わり方をするのでは?」と後半やや怖気づいてしまいましたが、意外と軽くフィニッシュ。
 家父長制の強いバックグラウンドの物語のわりにはその辺に深入りしていかなかった件は、付録の作者インタビューを読んで意図的だったことがわかりました。
 作者はこう述べてます。
 
There is still pressure for African writers to speak for a whole continents, but it is beginning to change.Africans are hungry for different types of stories. Within our own community, people are hungry for something else, something different. They want more crime, they want more fantasy, they want sci-if, or whatever……..

 移民だから差別について書かなければならない、宗教があるからその理不尽さにも触れておかなければならない、この時代だからキャラクターにはダイバーシティを意識しなければ、などなど作家には様々なプレッシャーがあるだろうし、最近は必死に盛り込みすぎてると感じるものに評価が集中しているような気がしていたので、この後書きに強く共感しました。
 作家がどんな人種であろうと、どんなバックグラウンドであろうと、性別がなんであろうと、自由にテーマを選べるようであって欲しい。

 ただ、本編の物語には思った程のユーモアを感じなかったし、何か物足りなさを感じました。
 
 評価  6 out of 10

 表紙とタイトルは覚えていられると思うけど内容は来年には忘れてしまいそう。
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