hinajiro なんちゃって Critic

本や映画について好きなように書いています。映画についてはネタばれ大いにありですのでご注意。本は洋書が中心です。

A Week in December

2015年03月30日 | 洋書
 Sebastian Faulks という作家の作品を一度は読んでみたいとずっと思っていました。
 気になっていたのは、Human Traces と Birdsong ですが、図書館で投げ売り(日本円で15円くらい)していたので、A week in December をオーディオと共に読みました。

 ロンドンに住む人々の日常を描いた作品。
 現在のロンドンらしく、色々なステイタスの人々、文化的背景の違う人々が登場します。
 何の関係もない感じの人々がどこかしらで繋がっていきます。
 私にとってはタイムリーな内容でありました。

 私が昨今のニュースで一番気になっているのは、英国生まれ英国育ちのティーンたちが次々と自ら IS に加入しようと国外へ出ていることです。
 最近17歳の男の子たちはトルコで保護(?)されましたが、その少し前に出た15歳の女の子たち三人はまだ確認がされていないようです。
 我が子と変わらない年齢の子が一体どんなきっかけで、どんな思いでそういった行動に出てしまうのか。

 これまでもニュース、ドキュメンタリーや映画などでイスラム教徒の若者たちが原理主義集団に魅せられていく様子を見てきました。この作品の主要人物の一人ハッサンもそういった若者で、コーランの純粋な教えを別の解釈をしていく原理主義グループの考えには納得は行かないものの自分の信念を貫くためにはそういった方向から攻めていくのもありかもしれない考え始め、じきに完全に傾倒していってしまいます。
 息子の変化を感じながらもなすすべもない母親の気持ち、ここは大切だから息子とじっくり話さなければと努力する父親の様子、などが描かれているところが一番私の気をひきました。心配し不安に思いながらもハッサンの考えや気持ちを変えさせるところには至りません。
 ハッサンには両親のほかにも真っ直ぐに向かい合ってくれる女友達もいます。この彼女の話し方が一番魅力的です。かなり直接的にものを言うのですが、それでいて抑えつけたり説き伏せたりするのではなく、ハッサン本人が考えて答えを出すように誘導するような感じなのです。とはいえ彼女の声は残念ながら彼の心を揺さぶりはしますが、深いところに届きません。
イスラム国家の長期展望のためには小さな犠牲は仕方が無い。親を悲しませること、自分を思ってくれる友人を裏切ること。仕方がないんだ。ハッサンは迷いを吹っ切るために何度かそう呟きます。
 
はたしてコーランの本当に意味しているイスラムとは、信仰なのか政治なのか。

 そのほかにも興味深い人物もいます。
 「もう何もいらないから、夫の笑う姿を見てみたい」と願う妻。
 何様か知らないけど、売れ線の本についてボロクソに批判ばかりするちょっと pathetic な評論家(え?どこかの誰かも素人のくせに似たようなもんじゃないかって?ハハハ)。
この辺りが私の気になった人物。その他も一人一人を丁寧に描写してあるのですが、もうハッサンとその周囲の人々、そしてテロの行方が気になってそれどころじゃなくなってしまいました。タイムリーだったからこそバランス良く読めなかった次第であります。
評価なし。
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The Goldfinch

2015年03月10日 | 洋書
 不慮の事故で奇跡的に生き延びた主人公少年の波乱に満ちた日々を描いた作品。
 事故で最愛の母親を失った喪失感、未来への不安、自責の念などを抱えながら生きるTheo。「懸命に生きる」とは書けないのは、彼が心や思考をを故意に麻痺させ流されるように生きていくから。
 決して穏やかな日々を送れはしないけれど、魅力にとりつかれてしまったアンティーク、そして心の美しい人々、それらとの出会いで彼は「なんとなく」前に進んでいきます。

 Man Booker を獲った880ページにわたる超大作。
 感想は mixed feeling ですね。好きなところは好きだし、好きではないところもあります。
 好感を持っている点は、登場人物たち。犯罪も出てくるのですが、犯罪者は犯罪者らしい悪さは持っているものの、そのほかの大半の人物が根っからの悪い人たちではないところがいいですね。それぞれに善くあろうとしています。
 Theo とそれぞれの人々との繋がりや心の通わせ方なんかも素敵なところです。
 色々な面から心を閉ざしかかっている Theo が初対面から安心感を持ちながら話のできるアンティーク職人のホービー、事故現場に共に居合わせ同様に心に傷を抱えた少女ピッパ。ただの同級生の家庭ながら拠り所のない Theo を迎え入れるバーバー一家との微妙なバランスの関係。そしてトラブルメーカーながらも絶大な信用をおける生涯の友人ボリスとの友情。
 一番好きなシーンはピッパと事故について、互いに大切な人を失ったことに対する胸の内を吐き合うシーン。

 好きではない点は、いつもながら描写が細かすぎること。これはもう私が苦手中の苦手なスタイル。以前にストーリーに何も関係のないイタリアンヴィラについて9ページ描写した作家について不満を書きましたが、こちらも似たような感じです。
 それから物事や人のdescriptionや例えの表現方法に嫌な感じがするところです。
 たくさんありましたが、例えば、母親と二人暮らしだった主人公が母親を亡くしたので、ソーシャルサービスが関与してくるのですが、そのうちの女性職員が Korean Woman と書かれ続けるのです。彼女がコリアンであることは話に何も関係ないんですよ。なにか少しでも彼女が彼女の国民性に関して何かを話すとかならわかるんですが、いちいちずっと Korean Woman と書くことに何の意味があるのかとイラッとくるんです。普通にFemle officer でいいじゃないですか。小さいことですが、不必要な場面で区別をすることがなくならない限り、差別ってなくならないんじゃないか、と考えてしまいました。ま、これは大げさな話にしてしまいましたが、なんとなくそういうひっかかる表現が多い、正直好みじゃない作家だなぁと思いました。
 最後のページなんかすっごくいいんですけどね・・・・・

 5 out of 10
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The One You Really Want

2015年03月08日 | 洋書
私が洋書を日常的に読みようになってから約10年くらいになりますが、いわゆるchic-lit と呼ばれるジャンルの本は今作品が3作目になります。
最初の一冊は、Playground Mafia といって、学校のお母さん達のゴタゴタを面白おかしく書いたものでした。ちょっとポッシュなエリアのスノッブぶり合戦がメインだったので、当時英語の不自由な移民が過半数を占め、ほぼ全家庭が生活保護受給世帯だったうちの学校とは様子があまりにも違ったのですが、ちょうど主人公の子供とうちの子達が同じくらいの年齢だったため、個人レベルでなんとなく共感できたり、出てくるアイテム(Horried Henry の本やロボラプターなど)が一緒だったため楽しく読めました。その後転校させた先は、公立校ながらベンツ、BMW、ポルシェ、アウディと高級車が送り迎えする学校で「もしやあの世界が繰り広げられているのかも?!」とワクワクしたものの、共働き家庭が多くプレイグランドで無駄に過ごすような暇な人たちは皆無でした(笑)
次の一冊はこのブログでも紹介しました Me Before You。読者がどこに重きを置くかにかかってくる作品で、私を含め多くの読者が恋愛面よりも尊厳死について考えてみた作品でした。一般的なチックリットのイメージをくつがえす心に残る一作ですよね。
そんなわけで、今回のこの作品が私にとって洋書初の THE CHIC-LIT Romance です。

エジンバラに住む主婦のナンシーはクリスマス直前のある日、ジュエリーショップから夫宛にお礼の葉書を受け取る。今年のプレゼントはジュエリーかしらん?と思っていたら、芝刈り機だった、、、、、
ってことは、ジュエリーを受け取った相手は他にいるってこと?
こんな風に夫の不倫がわかり、ロンドンに暮らす大親友カルメンの家にしばらくお世話になることに。
そこでお隣に住む男性に一目惚れ。move on はやくない?!
親友カルメンは未亡人でドラッグの大量摂取で亡くなったロックスターの夫の死から数年経っても立ち直れていなかった。そんなカルメンにもついに気になる人が現れ、、、、って、しかも立て続けに二人!

いやー、ビックリしました。
結構な数の登場人物がいるのですが、全員朝から晩まで恋愛のことを考えてるのね!
付随のテーマがない純恋愛小説で、これはこれで潔くてヨカッタですよ。
そこで気がついたんですけど、私、日本語でもこのような恋愛小説を読んだことがなかったみたいです。
記憶にあるのが、中学生の時に読んだこれ。

たぶんそれっきり。
ドラマや少女漫画では特に避けることもなく恋愛ものも楽しんでいるのですけど、小説には手が伸びていなかったのですね。今回の作品も人気のありそうな作家の作品がKindleで無料だったので読んでみました。
10月からチマチマ読んでようやく終わったのですが、そうはいってもそれなりに面白かったので、たまにはこっち系も取り入れようかなーと思いました。

5 out of 10
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Salmon Fishing in the Yemen

2015年03月05日 | 映画
 原作が評判の良かった作品の映画化。

 アラブ人の大富豪が砂漠で魚釣りをしたいと言い出した。
 そこで駆り出されたのがエミリーブラントと魚釣りのエキスパートなユアン。
 ずいぶんハチャメチャな希望だと思い、どうせ無理だろうしと、それに合わせてほぼ実現不可能だと思えるハチャメチャなプランを立てた主人公だったが、エミリーの采配で計画は思いがけずとんとん拍子に進んでいく。
 一方、英政府は中東対策として「仲良くやっていますアピール」に恰好なネタを検索中、この砂漠で魚釣りという突拍子もない計画を知り、便乗することにする。この政府の広報を担当するのが豪快で飄々としたクリステンスコットトーマス。
 金持ちの道楽に振り回されると思いきや、国際問題にまで発展しそうなこの計画に、主人公は最初こそいやいや参加したのだが、徐々にのめりこんでいく。

 プロットの発想が面白いし、こ洒落たセリフ回しやスピード感もよく、クリスティンスコットトーマスのコミカルな演技も手伝って、予想よりは楽しめました。
 ただ一人一人のセリフが長い&早いので、英語字幕を読んでいてもなかなかついてはいけませんでした。日本語で観たかったかも・・・・ 

 3 out of 5

 最後がちょっとなぁ・・・・
 主人公ユアンの恋のライバルの男性がいい人なので、ユアンを応援する気になれなかったのがなんとも心地悪い。私は違う方の男を選びたいものですな。(実際は雰囲気に流されてユアンを選んでそう・・・・)
 
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