第２章 トラキアへ ６２

　イリオネスらもアレテスの肩を叩いて、言葉かけずに労苦をねぎらった。
　『俺も気が立っている。先ず、アレテスの話から聞く。』
　アエネアスは、見えない一同の顔を見渡した。皆の心の琴線がゆるみなく張っているのが身体に感じられる。
　『アレテス、どうだった。話してくれ。』
　『敵も厳戒態勢です。砦の中では、武器と武具の整備に忙殺されている状態です。我々の話になかなか乗ってくれませんでした。次に兵数のことですが確かではありませんが、ポリメストルは、近隣の領主、豪族に加勢を頼んでいるようですが、どの領主、豪族も首を縦に振っていないようです。彼の頼りの身内の兵数は、２００前後と思われます。これは確かな情報です。上陸戦における敵の損害が大きく兵員のまとめに苦労しているようです。篭城して戦うことはないと思われます。敵は、砦を出て、こちらに攻め入る心算のようです。明日の午後には、トロイからの援軍が到着するようです。砦から南にまっすぐ下ったところの浜が援軍の上陸予定地点です。浜から２～３キロ、内陸に入ったところを野営地にするようなことを言っていました。援軍の兵数については、探り出すことが出来ませんでした。以上ですが、何かお聞きになりたいことがあるようでしたら聞いてください。あ～あ、それから、統領から言われていた、デマとばしの件ですが、話を聞きだすのに、とても、役に立ちました。』