『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  90

2012-07-09 07:11:45 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスの船団は、宵闇の海上を南からの風を利して北上した。真っ暗闇のミコノス島の浜が右手側にあるはずである。
 彼は、副長のカイクスに指示を出した。
 『カイクス、松明信号を後続の船に送ってくれ。『岸に近づきすぎるな、深さに注意せよ!』だ』
 カイクスは信号を送った。間をおかずに次の信号を続けて送るように指示が来た。。
 『カイクス、次の信号だ。『浜に向かう、速度を落とせ!』だ』
 船団は無事に真っ暗闇の浜に着いた。彼らは真っ暗闇の中を松明の灯りを頼りに各船を揚陸した。
 パリヌルスは各船の船長、副長を招集して、食事のこと、宿営のこと、そして、警備のことなどを打ち合わせた。
 パリヌルスは星空を眺めながら、無事であった今日をふりかえり眠りについた。
 一夜は明けた。パリヌルスの船団もオロンテスの船団も異国での朝を迎えていた。ミコノス島のいずれの浜もそれぞれの朝を過ごしている。
 パリヌルスはアレテスら船長、副長たちに今日の作業を任せて、これからを思案した。如何なる変事が発生しようが、対処できる態勢を維持しつつ過ごさせた。
 パリヌルスは、旅の途中にありながら身をもてあましていた。彼は脳をしぼって考えに集中しながら身体をもてあます状態であった。計るべきことがあるにもかかわらず、計る相手が目の前にいない、心がじりじりする、何とかしなければならない。彼ら集団にとって、大事な案件なのである。
 中心となって集団を統率していく上で一握りのメンバーではあるが、核として、案件を計り、意志の統一をしておきたかった。
それくらいに大事な案件の数々であった。
 『うっう~ん、やりきれないっ!』
 今にも、感情が暴発するかと思われるくらいに心がちりちりとイライラした。