『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  114

2012-09-03 07:06:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『判りました。諸君、そのようなわけだ。我々がデロスを出航するのは、明朝、陽の出の刻とする。いいな』
 オキテスはぐっと押した。
 『そのあとパリヌルスの船団が後続することになっている。いいな』
 オキテスは一同と目を合わせた。
 『軍団長、以上です。続いて、彼の紹介を願います』
 『お~お、今、ここにいるこの男を紹介する、皆よろしく頼む。この者は名をクリテスと言う、クレタ島出身の者だ。デロスのアポロン神の神官の引き合わせで我々の大事を手伝う。一同よろしく頼む』
 彼らは名を名のり、手を握り交わして気持ちを通じ合わせた。
 『では、念押しだ。明朝、陽の出の刻、デロスを出航する、いいな!アミクスにギアス、皆に伝えてくれ。では場を解く』
 『判りました』
 『軍団長、この旨、統領によろしくお伝えください』
 『判った』
 秋の夜は静かに更けていく、冴えた月照は、荒涼としたデロス島の風景を照らし出していた。

 デロス島の東には島嶼が少ない。昇り来る朝陽の第一射が届いた。彼らの船はデロスの停泊地の岸を静かに離れた。船は船首を真っ直ぐ南に向けて航走し始めた。船を押す風は微風である、彼らは漕いだ。調子をとる木板の打音は朝のしじまを破って響いた。舟艇は先行く船の右手後方に位置して続いた。
 オキテスは、5スタジオンくらい離れて遊弋してくるパリヌルスの3隻の船影を認めていた。