『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  130

2012-09-25 07:14:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『アカテス、お前、今日の天気だが、どう思う?』
 『今日の空模様か、朝焼けの空を見て、今日の空模様か。トロイとは条件が違う、俺は何も言えん。トロイでは陽は山から昇った。そう言うわけだ』
 『そうか、エーゲ海の北の海と比べて、海の水の温度が違う、これだけ南に来ると海が暖かい。考えの及ぶかぎり考えよう』
 言葉を交わしながら堅パンをちぎってほおばった。
 一陣の風が頬をなでて吹きすぎる。冷たかった、これからの季節にアジア大陸から吹き降ろしてくる風であった。
 パリヌルスは彼なりの決断を下した。
 『カイクス、船長、副長たちを集めるのだっ!急げ!』
 『判りました』
 『オキテス、出航を急ごう。昼過ぎには天気が崩れる。朝のうちは風が船を押してくれそうだ。しかし、そのあとは判らん』
 『おう、いいだろう。俺の勘もそんなところだ』
 パリヌルスは、船長、副長たちに短く状況と考えを述べたあと、即刻、出航を指示した。彼らは、パリヌルスの檄に応えた。
 朝食の場があわただしく動いた。瞬時といっていいくらいの間に出航の準備が整った。パリヌルスは、各船を念入りにチエックしながら、注意事項を与えて離岸させていった。船団編成はエノス出航時の状態の順に戻していた。
 『帆をあげっ!櫂をおろせっ!漕ぎかた始めっ!』
 木版の打つ音が響く、船団は泡立つ航跡を引きながらパロス島の浜を去った。