彼らは、オロンテスの焼いてくれたパンを口に運んだ。吹いて過ぎる風も気にせず、松明の炎を囲んで塩漬けして干した羊肉を噛みちぎり、パンとともに腹に収めた。空腹を満たす欲望のほうが身の回りの状況に勝っていた。
熱の帯びた陽射しを身に受けて、彼らの身が活性していた。一同は、改めて山頂の有様を観察した。先ずは、足下の堆雪の状態を話題にした。
『スダヌス、足下の雪の厚みはどれくらいだと思う?』
『そうですな?』頭を傾げる。
『俺らの背丈ぐらいではないでしょうかな』
『イリオネス、お前の考えでは、どのくらいだ?』
『私もそれくらいと想像しています』
話し終えてアヱネアスは声を上げて笑った。
『何だ、皆の思いは一緒か』
雪上に立っているのに、不思議に苛烈な冷たさを感じなかったのは、スダヌス配慮の足ごしらえのおかげであった。
一同は目にする風景の壮大さに息をのんだ。その眺望はクレタ島全島を目にできたことである。クレタ島の南北は言うに及ばず、東西260キロメートルに及ぶ長大なクレタ島を眼中に入れた。素晴らしい眺望であった。
アヱネアス、イリオネス、イデオスの三人は、初めて目にする眺望であった。
人間は生きものである。その生きものの性として、目の運ぶ先はどうも水であるらしい。彼らは、一番近いと思われる海岸線に目を運んだ。山頂から20キロくらい、北の眼前に拡がるクレタ海をを見た。
目線は、パノルモスの集落に、その左のレテムノン、そのはるか左のスオダの入り江口を目にすることができる。
スダヌスは、おらが浜の入り江口探しに目を凝らしている。見つけたらしい。クリテス、イデオスを誘って指さして、
『おいッ!あれを見ろ!クリテス、イデオス、見えるか?スオダの浜への入り江口だ。よ~く、見ろや!』二人の息子はうなずいて見届けた。
イリオネスは、例の方角時板の鉄棒を取り出して、方角を測りアヱネアスに説明した。二人はクレタ島を理解すべく、鉄棒の示す方角を頼りにクレタ島全体を望見することにした。二人は二人なりに望見作業に取り組んだ。
二人にとって二度と訪れることのないクレタ島を知る機会であった。
アヱネアスとイリオネスの二人は、まず、目にしやすく、関心度の高い、北の方角に目を凝らした。
足下に見えるクレタ島北の海岸線を確かめた。二人もスダヌスに倣って、スオダの浜の入り江口を探しあて、ヘルメス艇でたどった海路を確かめた。
『イリオネス、あの海路をたどってパノルモスまで来たのか』
『そうですね』
二人は、入り江口から、北に目を移して、半島岬の東側の海岸線を望んだ。そして、目線をパノルモスに戻し、海岸線を東方向へと進んだ。海岸線がくっきりと見える。目線を止めた。
二人は都邑とも思える集落に目をとめた。
『イリオネスあれは?』
イリオネスは、アヱネアスの指さす方角を見た。彼はスダヌスに声をかけた。
『スダヌス、あれは?イラクリオンの集落ではないのか?』
スダヌスは、イリオネスの指さす方角を見た。
『はい、そうです。あれは、イラクリオンの集落です』
『そうか、やっぱりそうか』
『統領、あれはイラクリオンの集落です。あの集落から、南へ、山手に進んだところにクノッソスの宮殿と集散所があります』
『ほう、そうか。そのイラクリオンの北に小島が見えるな』
会話を済ませアヱネアスは、さらに東の方角へと目線を移していく。クレタ島の東の突端と思える地点までの海岸線を目に焼きつけた。その目線を海を隔てて北へと移した。西アジア大陸を望見して、目線を左へと移動させていく。
彼はキクラデス諸島の島嶼群を見た。更に左へと目線を移していく。そこに大陸らしい大地を目にした。彼は無言でいた。
熱の帯びた陽射しを身に受けて、彼らの身が活性していた。一同は、改めて山頂の有様を観察した。先ずは、足下の堆雪の状態を話題にした。
『スダヌス、足下の雪の厚みはどれくらいだと思う?』
『そうですな?』頭を傾げる。
『俺らの背丈ぐらいではないでしょうかな』
『イリオネス、お前の考えでは、どのくらいだ?』
『私もそれくらいと想像しています』
話し終えてアヱネアスは声を上げて笑った。
『何だ、皆の思いは一緒か』
雪上に立っているのに、不思議に苛烈な冷たさを感じなかったのは、スダヌス配慮の足ごしらえのおかげであった。
一同は目にする風景の壮大さに息をのんだ。その眺望はクレタ島全島を目にできたことである。クレタ島の南北は言うに及ばず、東西260キロメートルに及ぶ長大なクレタ島を眼中に入れた。素晴らしい眺望であった。
アヱネアス、イリオネス、イデオスの三人は、初めて目にする眺望であった。
人間は生きものである。その生きものの性として、目の運ぶ先はどうも水であるらしい。彼らは、一番近いと思われる海岸線に目を運んだ。山頂から20キロくらい、北の眼前に拡がるクレタ海をを見た。
目線は、パノルモスの集落に、その左のレテムノン、そのはるか左のスオダの入り江口を目にすることができる。
スダヌスは、おらが浜の入り江口探しに目を凝らしている。見つけたらしい。クリテス、イデオスを誘って指さして、
『おいッ!あれを見ろ!クリテス、イデオス、見えるか?スオダの浜への入り江口だ。よ~く、見ろや!』二人の息子はうなずいて見届けた。
イリオネスは、例の方角時板の鉄棒を取り出して、方角を測りアヱネアスに説明した。二人はクレタ島を理解すべく、鉄棒の示す方角を頼りにクレタ島全体を望見することにした。二人は二人なりに望見作業に取り組んだ。
二人にとって二度と訪れることのないクレタ島を知る機会であった。
アヱネアスとイリオネスの二人は、まず、目にしやすく、関心度の高い、北の方角に目を凝らした。
足下に見えるクレタ島北の海岸線を確かめた。二人もスダヌスに倣って、スオダの浜の入り江口を探しあて、ヘルメス艇でたどった海路を確かめた。
『イリオネス、あの海路をたどってパノルモスまで来たのか』
『そうですね』
二人は、入り江口から、北に目を移して、半島岬の東側の海岸線を望んだ。そして、目線をパノルモスに戻し、海岸線を東方向へと進んだ。海岸線がくっきりと見える。目線を止めた。
二人は都邑とも思える集落に目をとめた。
『イリオネスあれは?』
イリオネスは、アヱネアスの指さす方角を見た。彼はスダヌスに声をかけた。
『スダヌス、あれは?イラクリオンの集落ではないのか?』
スダヌスは、イリオネスの指さす方角を見た。
『はい、そうです。あれは、イラクリオンの集落です』
『そうか、やっぱりそうか』
『統領、あれはイラクリオンの集落です。あの集落から、南へ、山手に進んだところにクノッソスの宮殿と集散所があります』
『ほう、そうか。そのイラクリオンの北に小島が見えるな』
会話を済ませアヱネアスは、さらに東の方角へと目線を移していく。クレタ島の東の突端と思える地点までの海岸線を目に焼きつけた。その目線を海を隔てて北へと移した。西アジア大陸を望見して、目線を左へと移動させていく。
彼はキクラデス諸島の島嶼群を見た。更に左へと目線を移していく。そこに大陸らしい大地を目にした。彼は無言でいた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/face_yaho.gif)