アヱネアスにつれてイリオネスも南方向に顔を向けた。二人は大いなるかなの不思議を感じている。
アヱネアスは納得しかねている。それにしても不可解であった。何もない、水平線のかなたにエジプトがあるという。それと思しきものの影も形も目に映らない。判らない、あの水平線の向こうに、また一つの盆の上にのった世界が展開しているというのか、解せない。そうであれば西方向に目にした水平線の向こうにも盆があって、その上にのった世界があるということなのか、彼は不思議でならなかった。
アヱネアスは頭を抱えた。不思議だ、どのように考えても不思議でならなかった。
西方にあるという、遠くの地を目指せという、彼は理解に苦しんだ。
とにかく、不思議を目にして、不思議の存在を是としなければならない不可解さに頭が混乱した。
彼はこのことをイリオネスに話そうか、話すまいかと迷った。しかし、今は何とかそれを踏みとどまった。いつの日にか話す機会が訪れる、それを待とうと心に決めた。
このクレタが建国にふさわしい地であるのか、否かをたしかめた後でいいと考えた。そのとき、スダヌスの声が彼の耳を打った。
『統領、何かをご思案ですか。しかし、いい眺めですな、感じ入っています。俺らが生きている世界が一望できるとは、統領はいかがですかな?』
『お~、それは、それはだな。この山の頂に立って、昇りくる大日輪を仰ぎ見て、感動に震えた。そして、この眺めだ。生きている世界を眼下に見る。これまでに知っていなかったことを知った歓びに浸っている。浜頭、それにしても大感動だ』
『そうですな、統領の言われる通りの大感動です。私の知っている言葉でいうことのできない感動です』
『浜頭、それからもう一つ、高い山の上に雪というものがあるということは知っていた。この山頂にある雪に接して、雪とはこのようなものかと身をもって知ったことだ。そして、寒さとはいかなるものかを知った。これは貴重な体験であり、体感であった。浜頭は、どうであったかな?』
『そうですな、統領の言われる通りですな。私にとっても同じです』
二人の話を傍らで聞いているイリオネスと他の二人も両人の話にうなずいた。
アヱネアスは納得しかねている。それにしても不可解であった。何もない、水平線のかなたにエジプトがあるという。それと思しきものの影も形も目に映らない。判らない、あの水平線の向こうに、また一つの盆の上にのった世界が展開しているというのか、解せない。そうであれば西方向に目にした水平線の向こうにも盆があって、その上にのった世界があるということなのか、彼は不思議でならなかった。
アヱネアスは頭を抱えた。不思議だ、どのように考えても不思議でならなかった。
西方にあるという、遠くの地を目指せという、彼は理解に苦しんだ。
とにかく、不思議を目にして、不思議の存在を是としなければならない不可解さに頭が混乱した。
彼はこのことをイリオネスに話そうか、話すまいかと迷った。しかし、今は何とかそれを踏みとどまった。いつの日にか話す機会が訪れる、それを待とうと心に決めた。
このクレタが建国にふさわしい地であるのか、否かをたしかめた後でいいと考えた。そのとき、スダヌスの声が彼の耳を打った。
『統領、何かをご思案ですか。しかし、いい眺めですな、感じ入っています。俺らが生きている世界が一望できるとは、統領はいかがですかな?』
『お~、それは、それはだな。この山の頂に立って、昇りくる大日輪を仰ぎ見て、感動に震えた。そして、この眺めだ。生きている世界を眼下に見る。これまでに知っていなかったことを知った歓びに浸っている。浜頭、それにしても大感動だ』
『そうですな、統領の言われる通りの大感動です。私の知っている言葉でいうことのできない感動です』
『浜頭、それからもう一つ、高い山の上に雪というものがあるということは知っていた。この山頂にある雪に接して、雪とはこのようなものかと身をもって知ったことだ。そして、寒さとはいかなるものかを知った。これは貴重な体験であり、体感であった。浜頭は、どうであったかな?』
『そうですな、統領の言われる通りですな。私にとっても同じです』
二人の話を傍らで聞いているイリオネスと他の二人も両人の話にうなずいた。
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