『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1051

2017-06-12 06:12:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『パキオテ頭領、お待たせいたしました。新艇引き渡しの場が整いました。案内いたします』
 『おうっ!』
 パキオテ頭領が船衆一同を連れて新艇の前面に来る。
 『どうぞ、こちらへ』とオキテスが彼らを案内する。
 突如、起こる一同を迎える拍手、驚く一同。
 オキテスが新艇の前に立ち、改めて、パキオテ頭領を丁重に迎える。贈呈する櫂舵を手にする、捧げ持って頭領の前面に立つ、新艇引き渡しの文言を声高らかに述べる、贈呈の櫂舵を目の高さにささげ定常する、それを受け取る頭領。
 『オキテス殿、キドニアからの遠路ごくろうでした。新艇を受け取りました』
 『こちらが受注いたしました、新艇の帆一式でございます。こちらが当方からの贈呈の櫂一式、祝い品の堅パンです、ご受納ください。パキオテ頭領からポセイドン神に奉呈いただく子羊です。統領からの気持ちです。進水式に使っていただくぶどう酒です。お納めください』
 申し述べてオキテスは深々と低頭した。
 『オキテス殿、ありがとう。統領によろしくお伝えください』
 パキオテ頭領が言い終えて手をさしのべる、オキテスがさしのべられた手をしっかり力を込めて握る。二人の感激が頂点に達する、互いの肩を抱く。
 この光景を目にしているゴッカスらが拍手で場を沸かせる、同席している船衆一同からも拍手が沸き起こる、彼らは同調して場の感動を盛り上げた。
 スダヌスは、新艇納入の場に立ち合い、感動場面の演出に感じ入っていた。
 パキオテ頭領がオキテスとスダヌスを招き寄せ話しかける。
 『我が方では、新船を買い入れたときには、陽の出の頃合いに新船を進水させることにしている。そのようなわけで、明朝、この浜において進水式を行う。帰り船の出航は明朝ですかな?時間的に余裕があれば進水式に列席してくれれば、俺はうれしい』
 オキテスの傍らにいるスダヌスが小声でささやく。
 『承知するのだ、オキテス!』
 うなずくオキテス。
 『パキオテ頭領、承知いたしました。喜んで列席いたします!』
 『それからだが、今夕、一献差し上げたい。当方の屋敷へおいでいただきたい』
 『ありがとうございます。喜んでまいります』
 『たずねるが、同行しているのは、ここに見える一行だけですかな?』
 『いや、ほかに帰り船の連中がいます。頭領の館に伺うのは、私とここにいるスダヌスです。他の者らについてはお構いなく。ただ一つお願いいたしたいことがあります。今夜、一夜、一同を休ませるのに頭領が差配されている浜の一画を、お借りできればと考えているのですが』
 『了解、その件承知した。このあたり一帯の浜は俺の浜だ』