オキテスがスダヌスの売り場に着く、朝の挨拶を交わす。
スダヌスは身支度を整えて待っている。
同道してキドニス浜頭の屋敷へおもむく。
オキテスはやや緊張している。
『オキテス、そのような緊張はすてろ!』
『俺の立場では、緊張はやむを得ん!お前と俺が話しするようなわけにはいかん』
キドニス浜頭の屋敷に着く。
キドニス浜頭は、二人を快く迎えてくれる、三人は話し合いのテーブルに就く。
オキテスはキドニス浜頭に手みやげとして持参した堅パンののケースを渡し来意を告げる。
船舶の建造事情を話す、集散所暦の10月1日よりスタートする船舶の売り出しについて話をする。
売り出しの販促用に作成した販促ツールを手渡す、手にとって見入るキドニス浜頭、スダヌスにも手渡す、スダヌスも見入る。
『ホッホウ、これはこれは!』と言って、キドニス浜頭が船談義を語る。
『オキテス殿、この木板だが船の話が相手に伝わりやすい。結果に結びつくか、結びつかないかは、いま、ここでは答えられない。スダヌス浜頭とも話し合い、船について聞かれたら私なりの協力を約束する。それでいいかな?』
『結構です。いい返事をいただいてありがとうございます』
『おう、なんの、なんの!』
三人の話し合いが終わる、オキテスは丁重な言葉で話を結ぶ。
二人は、キドニス浜頭の屋敷を辞する。
スダヌスがオキテスに話しかける。
『おう、オキテス、話が落ち着くべきところに落ち着いたな。キドニス浜頭との話、重畳と言わねばなるまい』
『スダヌス、ありがとう。俺もお前が言うように受け取っている。これで安心して事前打ち合わせの旅に行ける。礼を言う』
『これでマリアに向けて出港するのか。道中の安全を祈る、幸先のいい結果を期待している』
『ではな、行ってくる!』
『おう、うまい肴をとりそろえて、お前の帰りを待っている』
二人は手を固く握り合う。
オキテスは、船だまりの岸壁へと歩み始める。岸壁に着く、薄雲を通して光をふりおろす太陽を見あげる、漕ぎかと一同に声をかける。
『おう、昼めしは洋上で食べる、いいな。直ちに出航する。ダックス、出航だ!』
『了解しました!いい西風が来ています』
『そうか、それは願ってもいない、いい兆候と言えるな』
艇が船だまりの岸壁を離れる、外洋に出る、ダックスが帆張りを指示する。
風をはらむ全帆、洋上には白うさぎの飛び跳ねを見る、艇は、ほどいい船速で波を割り始める、しぶきが艇上の漕ぎかたらの顔を洗う。
艇は、レテムノンに向けて、我が意を得たと航走した。
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