『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1413

2018-11-14 04:39:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今夜の宿営をする係留岸壁に戻ったオキテスは、ダックスの報告を受ける。
 『オキテス隊長、報告いたします。艇の点検整備を終えました。報告すべき不具合等ありません』
 『おう、そうか、ごくろう!明日の予定について一同に伝える、集まってくれ。ダックス、夕めしの準備を頼む』
 夕めしの支度が出来る、オキテスを真ん中にして浜の草地に座をとる。
 『おう、一同、今日はご苦労であった。キドニアからレテムノンに駆け抜けたといった感じの航海であった。明日は、イラクリオン、そして、マリアへと向かう。事の次第では、イラクリオンまでとなるかもしれない』
 オキテスが一同を見廻す。
 『イラクリオンへは、テムノス浜頭が同行の航海である。以上だ!』
 一同がうなずく、ダックスが声をかける。
 『おう、一同!めしにする。副菜は火を通した干し魚だ。パンとともにぶどう酒で腹におさめろ。俺はこの取り合わせが大好きだ、うまいぞ!』
 一同は、すきっ腹にパンと副菜をぶどう酒で胃におとしこむ。
 彼らは、初秋の候の十三夜の月をレテムノンの地で仰ぎ見て宿営した。
 寝についたオキテスは、寝つけないでいる、月の照っている闇を見つめる。
 結論を出していない懸念について思考を巡らせる。
 『イラクリオンまでの行程は長い、時間を要する、テムノス浜頭とは艇上で話し合える。それでよしとしよう』
 巡らせる思考が次のステップに移る。
 『イラクリオン、レテムノンの地でも展示試乗会を催行するとすればーーー』である。
 『イラクリオンのクノッソスの集散所は、集散所の元締めである。二人の浜頭の考えは、どのようであろうか?』
 彼は考える、結論にたどりつかない。
 『なるようにしかならない!彼らが差配する領域である。俺の出るところではない。エドモン浜頭、テムノス浜頭の厚意ある善処にゆだねる』
 オキテスはそれしかないと腹を括った。
 思考に冴えたオキテスに眠気が襲いかかってくる、彼は耐えきれない、深い眠りに落ちた。
 
 夜が明ける、レテムノンの地の朝である。オキテスらの朝は、いずれの地でも朝行事で明ける。
 陽の出はまだである、オキテスとダックスが申し合わせる。
 『隊長朝行事を終えたら、即、朝めしにしますか?』
 『おう、いいだろう。腹六分の軽めの朝めしで行こう。昼は早めの中間食とする』
 『解りました。そのようにします』
 『おう、それでいい!』
 彼らは、軽めの朝めしを簡単に済ます、出航準備を整える。
 今日の大陽が水平線を破って顔を出す、陽が昇る、一行が波打ち際に並んでいる、昇る日輪に身体を向ける、瞑目する、何事かを願う、終えて一同が艇上での位置に就く。
 テムノス浜頭が水夫頭とともに歩を運んで姿を見せた。


 *昨日の投稿で変換ミスがあります。お詫びして、訂正いたします。
  最終行です。  持す  を   辞す   に訂正します。    山田秀雄