『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Aeneis's story] episode Ⅳ 『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章  イピロスへ  26

2019-12-16 06:35:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスとイリオネスが探索行の詳細を打ち合わせて寝につく、どれくらい眠ったであろうか。
 両人とも深い眠りを得ることなく起きだす、申し合わせたように波打ち際に立つ。
 『月があるはずだが』とふと考える、暗闇の空を見る、雲が地上に振りおろす月の光を閉ざしている、しかしながら全くの暗闇ではない。
 アエネアスには、イリオネスの目鼻立ちが見てとれている。
 『統領、おはようございます。両手ばなしでいい朝とは言えませんが』
 『おう、おはよう。この模様なら、かえって決行に好条件といえる。条件を利して行動する』
 二人のところへ二つの人影が近づいてくる、オキテスとアレテスである。
 『統領、おはようございます』
 『軍団長、おはようございます』
 二人が声をそろえて朝の挨拶をする、四人が朝行事をすます、探索に出かける緊張が場の空気を支配している、四人は黙して語らず、朝明けの薄明を待つ。
 四人は借りてきた漁師の衣装を身にまとう、旅装を整える、携えていく武具と荷を確かめる。 
 黎明が浜に訪れている、四番船のほうから数人の人影が来る、オロンテスが彼らに大袋を持たせて四人の許へ来る。
 『おはようございます』
 『おう、おはよう』
 『軍団長、食糧を持参しました』
 『おう、世話をかけたな』
 パリヌルスが姿を見せる、挨拶を交わす、イリオネスがパリヌルスとオロンテスに声をかける。
 『俺らは、行ってくる。後を頼むぞ』
 『解りました。道中が無事であることを!』
 一同が背にしている、東の空が明るんでくる、浜頭の小船がアエネアスら一同の待つ浜に来る。
 船上の浜頭が朝の挨拶の声をかけてくる、口上を述べる、船をアエネアスらに引き継ぐ。
 案内役を担当している者が船長役も担当している。アエネアスらと紹介を交わし、四人を乗船させる。
 案内役が彼らに話しかける。
 『貴方らにも櫂を握って漕ぎかたをしてもらう!よろしいですな』
 『承知しています』と承諾の返事を返す。
 案内役が浜頭に声をかける。
 『行って来ます』
 『おう、無事を祈っている。注意を怠るでないぞ!』
 二人は言葉少なく目でうなずき合う、小船が浜を離れる、浜から岸に沿って南東方向に波を割って進む。
 その頃には、船団の者らが浜に出ている、浜にいるすべての者らが航跡を残して離れていく小船を見送る。
 船団の者らは、統領ら四人の用向きを知ってはいない。用件を訝る、頭をかしげて遠ざかる一行の小船を見送った。