一行五人は湾状を描いている海岸に沿って踏みならされた砂地の道を黙々と歩んで行く、やがて、村中へ向かう三叉路に到る。
タピタンは何も言わないで曲がり角を右へと曲がる、村中を目指す。
小船を降りて、半刻余り歩いたであろうか、十字路にさしかかる、左へと曲がり村中の高所を目指して歩を進める、高台の開けたところに到る。
一行五人は高台の見晴らしのいい箇所に立つ、高台へとたどってきた道を振りかえる、海が眼下に見える、タピタンが口を開く。
『お~お、これは素晴らしい!いい眺めですな。統領、プトロトウムの港が眼下に見えます。私、土地の者にたずねてきます、ここで少々休んでいてください』
『おうっ!』
アエネアスら四人がタピタンの言葉に従って足を休める、オキテスがアエネアスに声をかける。
『統領、この高台の地からの眺め、なかなかですな。このプトロトウムもいい湾、港を持っていますな。対岸にケルキラの島の海岸線がかすんで見えています』(対岸のケルキラ島の海岸線とプトロトウムの湾との離岸距離は15キロ余りである)
間をおくことなくタピタンが戻ってくる。
『この道をもう少し行くと石垣を巡らせたでっかい館があるそうです。そこがそうだとのことです。少々休まれましたかな。行きます』
タピタンはなかなかの健脚のようである、一行が腰をあげる、歩き出す。
一人の女性の姿を目にする、その女性は三人の召使の女性を従えて、大きめの石をくみあげて造った墓とおぼしき二つの塚の一つの塚の前にひざまづいている。
アエネアスは、その風景を目にして立ち止まる、彼は目線をひざまづいている女性に注ぐ、女性がその塚の詣でを終えたらしい、立ちあがる、彼の瞼のうらに過ぎ去りし日の一人の女性のたたずまいが浮かぶ、思い出している。
それは、今はなきヘクトルの妻女アンドロマケのたたずまいである、彼はその女性が彼ら一行が歩を進めている道に向けて歩んでいる、一行は、彼女が道にたどり着くのを立ち止まって待つ。
アエネアスの目線は、彼女をシッカと見つめている、彼女が顔をあげる、漁師姿の一行に目を停める、二人の目線が合う、女性が足を止める。
一瞬である、人生の三つの『さか』の一つ『まさか?』と思い、強い視線をアエネアスの顔に注ぐ、アエネアスが彼女が歩んでくる道の前面に立つ、二人は立ちすくむ。
彼女に従っている召使たちが立ち止まる、二人の見つめ合う風情を見て凍りつく、これはただならない事態と感じとる。
アエネアスにつきそっている四人もその場に凍りつく。
二人が声をあげる、互いの名を叫ぶ。
『おう、アンドロマケ!俺だ』
『あ~!アエネアス!』
二人は、二年の歳月を経てここに邂逅したのである。
タピタンは何も言わないで曲がり角を右へと曲がる、村中を目指す。
小船を降りて、半刻余り歩いたであろうか、十字路にさしかかる、左へと曲がり村中の高所を目指して歩を進める、高台の開けたところに到る。
一行五人は高台の見晴らしのいい箇所に立つ、高台へとたどってきた道を振りかえる、海が眼下に見える、タピタンが口を開く。
『お~お、これは素晴らしい!いい眺めですな。統領、プトロトウムの港が眼下に見えます。私、土地の者にたずねてきます、ここで少々休んでいてください』
『おうっ!』
アエネアスら四人がタピタンの言葉に従って足を休める、オキテスがアエネアスに声をかける。
『統領、この高台の地からの眺め、なかなかですな。このプトロトウムもいい湾、港を持っていますな。対岸にケルキラの島の海岸線がかすんで見えています』(対岸のケルキラ島の海岸線とプトロトウムの湾との離岸距離は15キロ余りである)
間をおくことなくタピタンが戻ってくる。
『この道をもう少し行くと石垣を巡らせたでっかい館があるそうです。そこがそうだとのことです。少々休まれましたかな。行きます』
タピタンはなかなかの健脚のようである、一行が腰をあげる、歩き出す。
一人の女性の姿を目にする、その女性は三人の召使の女性を従えて、大きめの石をくみあげて造った墓とおぼしき二つの塚の一つの塚の前にひざまづいている。
アエネアスは、その風景を目にして立ち止まる、彼は目線をひざまづいている女性に注ぐ、女性がその塚の詣でを終えたらしい、立ちあがる、彼の瞼のうらに過ぎ去りし日の一人の女性のたたずまいが浮かぶ、思い出している。
それは、今はなきヘクトルの妻女アンドロマケのたたずまいである、彼はその女性が彼ら一行が歩を進めている道に向けて歩んでいる、一行は、彼女が道にたどり着くのを立ち止まって待つ。
アエネアスの目線は、彼女をシッカと見つめている、彼女が顔をあげる、漁師姿の一行に目を停める、二人の目線が合う、女性が足を止める。
一瞬である、人生の三つの『さか』の一つ『まさか?』と思い、強い視線をアエネアスの顔に注ぐ、アエネアスが彼女が歩んでくる道の前面に立つ、二人は立ちすくむ。
彼女に従っている召使たちが立ち止まる、二人の見つめ合う風情を見て凍りつく、これはただならない事態と感じとる。
アエネアスにつきそっている四人もその場に凍りつく。
二人が声をあげる、互いの名を叫ぶ。
『おう、アンドロマケ!俺だ』
『あ~!アエネアス!』
二人は、二年の歳月を経てここに邂逅したのである。
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