『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation  『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  43

2020-03-04 08:27:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオスがアエネアスに神託について話し始める。
 『なあ~、アエネアス、ケルキラ島の対岸の地がヘスペリアがあるイタリアの地である。そうである故にだな、近いと考えるかもしれない。それは考え違いだ。イタリアは、でっかい大陸の半島の地だが、それは想像を超えたでっかい半島なのだ。どっかそこいらの半島と比較にならないでっかい半島なのだ。ヘスペリアへは、遠く長い海岸線を迂回していかねばならんのだ。信託は、それについて詳しく告げている!この俺の考えが及ばない海岸線をつたって、つながる地を経て行きつくところである。それを知ることだ。ヘスペリアは、まだ、誰も手をつけていない大河が流れて通る沃野の地であると耳にしている。先住の民族が割拠している地である。如何なる民族であるか、それについては知ってはいない。いずれにしてもだ、その者らを征服して国を建てなばならない』
 アエネアスがぺリオスの話にうなずく。
 『では神託の説明をする。プトロトウムを出航する。南からの風を帆にはらんで、ケラニアにおもむき東からの風を待つ、イオニアの海を西へと進む、この季節なら一日の航海でイタリアの東南端の岬に到る、上陸はするでない。と神託は告げている。何故であるが、タラントの湾の沿岸に散在している市邑は、ギリシア人の植民による市邑であるゆえにだ。船をつけることは厳に慎めよ。神託は湾内の如何なる地にも船をつけるなと言っている。湾口を横切って西の岬あたりに船をつければいいと考える。シチリア島に到るまでのイタリアの南岸の市邑は、ギリシアの植民市と考えていいだろう。船を着岸させ上陸するには心して気を配ることだ。解るかな、俺からの注意事項だ』
 ぺリオスは息をついで話し続ける。
 『イタリアの南岸を進んで行ってたどり着く先は、シチリア島である。ここで航路を北にとってはいけない、北のメッシナ海峡は海流の事もあるが、狭いが故の危険が待っている。海峡の通過はするでない!ヘスペリアへの近き航路より遠き航路を行けと神託は告げている。シチリア島の沿岸に沿って南下し南端の岬を右手と進み島の西北端を目指せよ。櫂を休ませながら行けと諭している。この航路をとるにまさる航路はない!そこに到りて、島の北岸に臨んでとる航路は、シチリア島の北の大海洋を一気に北へと渡る航路をとって進めよ!しかしだ、ここで心すべきは、海難である。ここに到って無事の航海を心を尽くして祈れと言っている。お前の進路を阻む女神の神能をあがめ懇願して船を進めよと告げている!これを忘れてはいけない!』
 根を詰めて聞き止めたアエネアスが口を開いて言う。
 『ぺリオス、ありがとう!神託を正しく理解することは非常の難しいことである。お前なればこそ、難儀な神託の解釈を聞かせてくれる。ありがたい。感謝する』
 『あともう少しだ。心して聞くのだ!航海もここまで来た。鼻の先に目指すヘスぺリアがある、もう、お前の航海を妨げるものは何もない!イタリアのクーマエの地のシピューラが預かっている神託を受け取るのだ!建国の地の委細を記した神託ではないかと考えられる。時をえらび航海の条件を味方につけ、心の命ずるままに船を進めてヘスペリアを目指せと神託は告げている!』
 『おう、ぺリオス、神託の議をもらった。安心の航海を目指す!ありがとう』
 『未来を見通す神託の力、アポロンの真理を告げ渡した!建国は必ず成し遂げられる。お前の信じるを為せ!神意が約束している。何があろうとも恐れることはない。この地を去る時は今である、さあ~、帆をあげて出港せよ!功業を為せトロイの威名を高くあげてくれ!』
 ぺリオスが受けとってきた神託をアエネアスに告げ渡した。