『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation  『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  44

2020-03-05 14:53:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 神託を告げ終えたぺリオスが肩から力を抜く、アエネアスに話しかける。
 『おう、アエネアス、神託の告げるところ全てを伝えた。何か質問はあるかな』
 『いや、それはない。よくぞこれだけのことを神託をもって告げてもらった。航海に余裕をもって対応していける。ありがたい!謹んで礼を言う』
 『神は神託をもって歩むべき道を示している。疑義を持つなかれ!業を為すに誤りに気づきし時は悔い改める。謙虚に勤めよと説いている。摂理の筋書きは至妙である。アポロン神に使える俺の言うことだ。司祭の任を勤める俺を信じて航海してくれ』
 『ぺリオス、お前の気づかい身に沁みる。ありがとう』
 ぺリオスがアンドロマケに声をかける。
 『アンドロマケ、神託の話は終わった。アエネアス殿と話し合っていいぞ』
 『そう、終わったの。アエネアス殿『航海の安全と望む未来』の神託でしたか?』
 『おう、心からこうべを垂れる神託をいただいた。ありがたいことだ。これをもって不安を退けて、航海に挑んでいける!ぺリオスに大感謝だ』
 『それは、よかったわね!私もアエネアス殿が想うところを為して、成功してくれることを心から祈っています。あなたの仁徳のなせる業であると心得ています』
 アンドロマケが姿勢を正す、アエネアスの目にジイ~ッと見入る、改まる、口を開く。
 『アエネアス殿、このたびは、夫ぺリオスが管轄している事業に手を貸して、助けてくれました。この私からも厚く礼を申し述べます。ありがとうございました』
 アンドロマケが息を整える。
 『このような時がおとずれないようにと思っていましたが、そうはならないものですね。とても悲しいことです。別れる事のこのつらさ、胸が張り裂けます、悲しいことです。会うは別れだったのですね。目指している目的地までの航海の安全を力いっぱい祈ります。これは私からの心づくしです。受け取ってください。あなたの父上の上着です。もう一枚はユールスの上着です。夏が過ぎるとすぐ冬の訪れです。二人の日常を気づかってあげてくださいね』
 そのように言って、アンドロマケは、深々とアエネアスに低頭する。
 『おう、アンドロマケ殿、頭をあげてください。私らのことを気づかってくれてありがとう。喜んで頂戴する。私が返すものを持っていないのが残念です。心から詫びます。アンドロマケ殿、心から礼を申し述べます。腹中の子を大切に育ててください!アンドロマケ殿、ありがとう、ありがとう』と言ってアンドロマケの手を力を込めて握る。
 アンドロマケの目から堰をきってあふれ落ちる涙、この情景に見るぺリオスが目を潤ませている。
 『アエネアス、言いそびれていることが一つある。それを伝える。イタリアのクーマエなる地だが私は知ってはいない。航海の途上でたづねてほしい。近々、南から風が来る。次の風待ちにここより北にあるケラニアの岬へ向けて、帆に風をはらんで出航せよ!ケラニアから西を目指すのだ!いいな』
 ぺリオスは、別れの言葉を告げる。
 三人は近き日の出航、航海の安全を祈りながら昼食のテーブルを囲んだ。