つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

アベノマスクについて考えてみる

2020-04-05 01:45:00 | 日記
世の中、新型コロナで大変な状態だが、そんな中、安倍総理(以下、安倍ちゃん)が「全国5000万世帯に2枚ずつ布製マスクを配布する」とぶち上げ、案の定、国内外から嘲笑と批判の嵐が巻き起こっている。

巻き起こってはいるんだけれど、私は天邪鬼(あまのじゃく)なので、ここはひとつ、安倍ちゃんを弁護してみることにした。
というより、最近、新型コロナへの恐怖と不安に乗じて、「政府のやってることはダメ」と批判してればOK的な風潮が鼻について仕方ないので、この際、「アベノマスク問題」の検証を通して、今の社会全体がいかに冷静さを欠いたヒステリー症状を呈しているかを確認してみようと思う。

まず、最初に断っとくが、あの「布製マスク2枚配布」が素晴らしいコロナ対策だとは私も思ってない。
「マスク配布」をぶち上げたタイミングも最悪だったし、そもそも内容もショボすぎるし、何より安倍ちゃん自身がつけてたマスクがなんだかやたらと小さすぎて、その映像がまた「マスク配布」案のお間抜けさに拍車をかけてしまっていた、と思う。
これは私見だが、どうもある時期から有能な政策ブレーンが安倍ちゃんのもとからいなくなってしまったような気がしてならない。
「マスク配布」案にしたって、発表のタイミングと内容をもう少し巧く演出すれば、ここまで叩かれるようなものではなかったと思う。
ま、それはさておき、今回、私は安倍ちゃんの弁護人だから、以下、批判派の方の「理由」に一つずつ反論してみたい。

1)「マスクを配るよりもっと先にするべきことがある」
→「するべきこと」というのは緊急事態宣言の発令とか、所得保障を含む緊急経済対策のことか?
しかし、ちょっと待て。
安倍ちゃんは緊急事態宣言は絶対出さないとも、所得保障をしないとも、緊急経済対策をやらないとも言ってない。
だとすると問題は「マスク配布」より先にそれらをしろ、ということか?
しかし、緊急事態宣言は法律に定められた発令要件の充足が必要だし、仮に既に発令要件を充足してるとしても(ちなみに私はこの立場)、それによって生じる影響は決して小さくない。
所得保障については1世帯あたり30万円交付の線で現在、実施が固まりつつある。
緊急経済対策は所得保障以外にも内容が多岐にわたる上、予算も莫大(30兆円程度か)になるから、たかだか(敢えて「たかだか」という)200億円とか400億円規模の「マスク配布」とは実施までのスピード感や調整対象機関の数がまったく違う。
簡単にできる「マスク配布」を先にやって何が悪いのか、誰が不利益を被ったのか、私にはさっぱりわからない。

2)「マスクは感染予防には効果がない」
→これはWHOがずっと言ってきたことだが、そのWHO自身がとうとう先日、「マスクの着用は感染者がウイルスを撒き散らすことを防止するという観点からは有効」と公式にコメントした。
てか、そんなこと、(今回の新型コロナウイルスに関してはほとんど役に立っていない)WHOに改めて言われるまでもなく分かっとる。

3)「配布する布製マスクは安倍ちゃんの地元選挙区の会社が製造しているらしい。利権の臭いがプンプンする」
→こういうのを下衆の勘繰り、という。
仮に今回の「マスク配布」に関して安倍ちゃんとか彼の選挙区の会社に金が回っていたとしても、それは公職選挙法や刑法で取り締まるべき問題だろう。
利権がらみだろうがマスクはマスクだ。
利権の臭いが気になるなら、それこそマスクをしてれば臭いもしなかろう。
要するに、証拠もないのに想像だけで騒ぎ立てるな、ということである。

4)「布製のマスクを配布する予算を他に使うべきだ」
→うんうん。で、具体的には?
反対派が「他の使い道」を具体的に提示しているのを見たことがないのは私だけか?もしそうだったらスマン。先に謝っとく。
あ、「布製ではなく、使い捨ての不織布(ふしょくふ)製マスクを増産させて購入・配布すべきだ」と言ってる輩がいたな。
使い捨ての不織布製マスク(いつもドラックストアとかで買ってたヤツ)は今もメーカーが必死に増産してる。
それでも月間生産可能枚数は7億枚だ。使い捨てだから、仮に日本人の半分6000万人がマスクを使ったとして、1ヶ月に生産できるのはわずか12日分にもならない。店頭に出回らず、品不足が慢性化しているのは当たり前。商品自体が絶対的に存在していないのだから「400億円出せば買い上げられる」といった金額の問題ではない。仮に、強制的に政府が使い捨て不織布製マスクを買い上げて、それを国民に配布したとしたって、「可能使用期間」という点では安倍ちゃんが胸を張って威張った通り「洗って何度でも使える布製マスク」の方がコスト的にもリーズナブルなのは明らかだ。
ちなみに、マスクを買い占めて高値で転売するクソ野郎どもが横行し始めてすぐ、安倍ちゃんが罰則付きでこれを禁止したから、今では買い占められたマスクがキチガイじみた高値で市場に出回ることはほぼ無くなった。
てか、ちゃんと「マスク配布」以外のこともしてるじゃん。

5)こんなチンケな「マスク配布」を決めるのに1ヶ月近くも時間をかけてたんなら、その間に緊急経済対策をまとめられたはずだ。アメリカを見ろ。あっという間に2兆ドルの経済対策がまとまったじゃないか。日本は何をやらせても遅い上に中身も伴わない。
→30兆円規模の経済対策からすれば、「マスク配布」にかかる200億円や400億円なんてもはや誤差のレベルであることは上記1)で書いたとおり。
安倍ちゃん政権に限らず、日本の政府の政策やその決定過程、スピードを批判する輩は、何かというとすぐにアメリカを引き合いに出すが、強大な権限を与えられた大統領制のアメリカと、何かにつけ議会との調整が不可避な議院内閣制の日本を同一視点で比較すること自体、無意味だろう。
そもそも、こういう緊急事態に内閣(あるいは内閣総理大臣)に大統領型の広範な権限を与える憲法改正案に反対していたのは他ならぬ野党議員たちではなかったか?

長くなったし眠くなったのでそろそろ終わりにするが、冒頭に書いたように私も「マスク配布」案が素晴らしい対策だとは微塵も思ってない。
最初にニュースで見たときは、その間の悪さ、お間抜けさに「あちゃー、やってもーたかー」と思った。
少なくとも一国の総理が自慢気に発表するような対策じゃないとも思う。

でもさ。
マスクが手に入らなくて困っている人に2枚のマスクが届く、という点では意味のある対策なことは間違いないだろう。
それは「0」を「+0.5」にするくらいの小さな話かもしれないけど、少なくとも「−0.5」にはしてないだろ?

批判をするなとは言わない。
権力を批判できるということは、自由な社会であるということと同義だ。

でも、安倍ちゃんは安倍ちゃんで一生懸命やってるじゃない?
時に間抜けで、時にアチャーなとこもあるけど、「0」を「0.5」にしようとはしてるじゃない。
批判はいい。
しかし、批判するなら具体的な対案を(それもまた批判の対象になることを覚悟した上で)提示すべきだと思う。
対案もなく、覚悟もない、ただただ一方的な批判は、もはや単なる否定であって批判ですらない。

Facebookにも投稿しといたが、単に否定するだけなら、外出をできる限り控えて、帰宅したら手洗いとうがいと洗眼(※新型コロナウイルスは眼からも感染することが確認されてるので)を心掛けて、できるだけすぐに入浴するなりシャワー浴びるなりして、(スペインやイタリアのように)今、この瞬間も愚痴一つこぼさないで必死にウイルスと戦ってくれてる医療関係者にエールを送って、「うつされない」ためじゃなく「うつさない」ために自分ができることを考えて、いちばん最初に切り捨てられて、いちばん最後まで救い上げられない人たちのために自分ができることを少しでも実行に移す方が遥かに生産的じゃないかと私は思う。

否定は悲観主義から生まれる。
肯定は楽観主義からしか生まれない。

前にもこのブログに書いたが、しつこくまた書く。
悲観主義は気分であり、楽観主義は意思だ。

下を向くな。
否定するな。
強い意思を持って、顔を上げて、前に進もう。