つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

7日間ブックカバーチャレンジ【3日目】

2020-05-03 10:02:00 | 日記
7BCの3日目は松井優征の「暗殺教室」(全21巻)

14巻以降のカバー・表紙デザインは久持正士さん+土橋聖子さん(hive&co.,ltd)

多くの方の7BCを拝見しているが、コミックを紹介される方が少ないのは何故だろう。
私の知る限り、コミック(と言っていいだろう)を取り上げてくれたのは、スヌーピー本を紹介してくれた私の仲人でラジオ・プロデューサーのIさんだけだ(他にもいらっしゃったらスイマセン)。

こういう流れを見ていると、「本を紹介する」=「自分の知の部分を他人にさらけ出す」=「コミックは子どもや知的レベルの低い人が読むもの」=「小説とか評論とかの方が絵が中心のコミックより知的創作物としてのランクは上」=「コミックを他人に紹介するのはちょっと恥ずかしい」という、人々が無意識に持ち続けている価値基準が伝わってくる気がする。
いまや、日本のコミックは国を挙げて世界に売り込んでいる、我が国の誇るべき知的財産の一つだというのに。

コミックだからといって馬鹿にするなかれ。
この「暗殺教室」、長男が読んでいたのを借りて読み始めたのだが、めちゃめちゃ面白い。
面白いだけでなく、「思春期の子どもたちをいかに学ばさせ、いかに成長させていくべきか」という普遍的なテーマに対する一つの答が実に分かりやすく、説得的に描かれている。
受験エリートのなれの果ての、ピントのボケた教育評論家とか子育てアドバイザーのつまらない教育本・子育て本を読むくらいなら「暗殺教室」全巻をGW中に読破した方が遥かによろしい。
私自身、「暗殺教室」から子育てのヒントをもらったり、自分の子どもとの接し方の間違いに気づかされたことが山のようにあった。
たしか映画化されてもいたはずだが、まずはコミック全巻読破を。
ちなみに実質的な最終巻である20巻は何度読んでも大泣きする。

あと、お気づきの方も多いと思うが、私は7BCでアップする本のカバー写真に必ず「表紙・カバーデザイン」を手掛けたデザイナーの方のお名前を表記するようにしている。

小説だろうが評論だろうがコミックだろうが、本というのはその内容だけで成立しているものではない。

かつては「装丁家」と呼ばれた方々が作ってくれた、本の内容が一目で伝わる、それでいて美しく、書店で思わず手に取ってしまいたくなるようなカバーデザイン。それもまた、「本」の(少なくも活字本の)重要な要素の一つだし、弁護士風を吹かせて言わせて貰えば、本の内容とは別個独立の、評価すべき「著作物」だ。
著作物を写真に撮ってインターネット上で公開する行為を「複製権」と呼ぼうと「公衆送信権」と呼ぼうと「送信可能化権」と呼ぼうと、そんなことはどうでもいい。

7BCに参加された方がFB等で紹介したい、と思った本は、その内容はもちろん、そのカバーデザイン、装丁にも惹かれたものではなかったか?

ましてや、このイベントの正式名は「ブック・チャレンジ」ではなく、「ブックカバー・チャレンジ」。
焦点は作品の中身ではなく、「ブックカバー」=「表紙のデザイン」に当てられているはずだ。
最初にこのイベントを企画して始められたのが誰かは知らないが、その最初の趣旨に立ち返ろう。

著作権法上の氏名表示権うんぬんはさておき、自分を感動させてくれた作品を手掛けたアーティストのお名前を作品とともに紹介するのは、作品から感動をもらった人間が作品と作者に払うべき最低限のマナーだと思う。

作家名のみが紹介され、素晴らしいカバーデザインを手掛けたアーティストは名前すら顧みられることがない。
ここにも「小説」>「コミック」という図式と同様、「本の作者」>「装丁家」という暗黙の価値基準が(私自身も含めて多くの人の心に)存在してはいないか?

自分の大好きな本を人に紹介する、ということは、自分の内面にある著作物に対する無意識の序列に向き合い、それを再構成して、自分を感動させてくれたすべての創作者をリスペクトし直す、ということでもある。
そういう機会を与えてくれた7BCと、バトンを渡してくれた高橋いさをさんに感謝する今日この頃である。