このブログに何回か登場した戯曲家・演出家の高橋いさをさん(以下「いさをさん」)に頼まれて、とある舞台の法律監修と名古屋弁指導をさせて頂いている。
その作品の名前が「壁の向こうの友人」だ。
「名古屋保険金殺人事件」という1979年から1983年にかけて実際に発生した事件を題材に、被害者の兄と死刑囚となった加害者の交流を描いた短編。
被害者の兄は板垣雄亮さん、死刑囚を若松力さん、面会に立ち会う刑務官を林田航平さんが、それぞれ演じられる。
3人の役者さんは私がかつて小劇場界の端っこでお仕事をさせて頂いていた頃からお付き合いさせて頂いている上谷忠さんが代表を務めるJ.CLIP(https://www.j-clip.co.jp/company/)所属の役者さんで、上演する劇場は新宿御苑前にあるサンモールスタジオ(http://www.sun-mallstudio.com/theatres.htm)。
劇場主兼今回の公演のプロデューサーはこれまた私がずっとお付き合いさせて頂いている佐山泰三さん。
敬愛するいさをさんの作品で、旧知の上谷さんとこの役者さんが出て、プロデューサーは佐山さん、という以上、法律監修も名古屋弁指導もボランティアだ。
ボランティアついでに今回は、当日劇場配布のパンフレットにネクスト法律事務所の広告まで出した。
(パンフレットの現物を持参された方の法律相談料は初回無料にでもしてあげようかとまで思ったりしている。)
↑あんまり大きい声では言いたくないので、小さい声で告知しとく。
ここまで私が肩入れしているのは、いさをさんの才能を尊敬して、愛しているからでもあるけれど、なにより、自粛警察野郎、マスク警察野郎が横行して、世の中全体が委縮してしまっている中、それでも必死に舞台の灯をともし続けようとしている演劇関係者を純粋に応援したいからだ。
頑張っている奴がいたら、理屈抜きでエールを送りたくならないか?
野球でも、サッカーでも、箱根駅伝でも、受験生でも、仕事を取るために何度も何度も見積書を書き直している営業マンに対しても。
それは多分、僕らが生まれながらに持っている「生き物としての共感本能」なのだと思う。
ただ、そういう理屈を超えて、今回の作品はいさをさんの数ある作品の中でも上位に据えられるような秀作だと(個人的に)思っている。
なので、名古屋弁指導を気軽に引き受けた後で、早々に後悔し、途中からはもう、逃げ出したくなった。
私の下手糞な名古屋弁指導のせいで役者さんを混乱させ、作品のクオリティを落したら、私は誰に謝ればいいのか?
てか、そもそも謝って済むような問題か?
よし、逃げよう。
とりあえず、苗場だな。
こういうときこそ、100万円で買って10万円まで値崩れした苗場に役に立ってもらわんと。
などと日々思いつつ、いつのまにかもう、来週26日は本番初日。
「壁の向こうの友人」は正確には「サンモールスタジオ プロデュース Crime 2nd~贖罪編~」と銘打ったプロデュース公演の中の三作品のうちの一つとして上演される(残りの2作品は「共謀者たち」by singing dogと「僕が数学を好きになった理由」by Tha Stone Age ブライアント)。
新型コロナ感染対策で客席を半分以下にまで間引いたかわりに、28日(金)のソワレ(夜の部)はリアルタイム・オンライン配信でも観られるそうである。オンライン配信の料金は2000円。
リアルタイムである28日以降も1週間程度ならいつでも視聴可能だそうだ。
新型コロナの感染に脅えることなく自宅で冷えたビール片手に三作品観れて2000円。
はっきり言って安いと思う。
オンライン配信は日本中どこでもスマホ1台あれば受信可能なので、東京の公演ではあるけれど、名古屋在住の私の友人たちもリアルタイムで、(平岩が方言指導をした)名古屋弁の舞台を、家でパンツ一丁で冷えたビール片手に枝豆食いながら、観られる。
薄暗く、狭く、汚い小劇場の桟敷(さじき)席にぎゅうぎゅう詰めに押し込まれ、汗だくで芝居を観ていた世代としては、まさに隔世の感だ。
稽古初日の役者さんたちの(不自然な、大阪弁だか東北弁だか、もう何がなんだか分からない)名古屋弁(?)を聞いたときには正直、そのまま苗場に逃げ出したくなったが、先日の通し稽古では「ほぼ」完璧な域にまで名古屋弁が仕上がってきた。
つくづく、役者というのは凄い人たちなのだと思う。
名古屋在住の皆様、名古屋出身で東京にお住いの皆様。
是非是非、劇場で、あるいはオンライン配信で舞台をご覧いただき、ご意見・ご批判いただければ幸です。
なお、万一、役者さんたちの名古屋弁に違和感があったとしても、それは彼らの責任ではない。
万一、場面に法的な不自然さがあったとしても、それはいさをさんの責任ではない。
この舞台における名古屋弁と法的問題に関する全責任は監修を申し出た私にある。
少しでも自然な名古屋弁に。
少しでも法的な不自然さのない舞台に。
そのために稽古場ではしつこいくらいに役者さんたちにダメ出しをしてきた。
おそらく鬱陶しい方言指導であったろうと思う。不愉快な思いをされた役者さんもいたかもしれぬ。
この場を借りて役者さんたちにはお詫び申し上げるとともに、私の拙(つたな)い方言指導と法律監修のせいでせっかくの名作に傷がついていないことを切に祈るのみである。
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