伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む市議会議員。市政や市議会、日常の活動などを紹介していきます。

研修会で議会改革学ぶ

2016年10月31日 | 市議会
 10月28日に、会津若松市の東山温泉・御宿東鳳で開かれた福島県市議会議員研修会。テーマは議会改革でしたけど、これがなかなか・・我が意をえたりの内容で、これは今後の参考に大いになると思ったので概略まとめておきたいと思います。



 講演は、青森中央学院大学経営法学部准教授で早稲田大学マニュフェスト研究所招聘研究員の佐藤淳氏が担当しました。ルーツは会津斗南藩ということで福島県ゆかりの人物で、岩手県内の市議会やいわて議会事務局研究会でアドバイザーをつとめる、議会改革に実践的に取り組んでいる方です。

 そもそも、なぜ議会改革が必要なのか。それはおそらく、議会自身の存在の意義がかかった重大な問題なのだと私は思っています。

 一般の方からよく聞くのは、「あんたはがんばっているけど、議会って何をやっているんだい」という話とか、「議員はもっと減らすべきだ」などという話です。「あんたはがんばっている」は、話しかけている議員に対する遠慮もあっての言葉なんだと思います。

 こうした言葉は、議会が市民に理解されていないから生じてくるのだろうか。そんな生易しい話ではない気がします。そもそも議会が必要だという市民の認識の欠如が現れており、究極的には、議員はいらない、議会はいらない、という議会不要論につながる考えにつながっているのではないか、そんな思いがわいてきます。

 だからこそ、政治に対する関心が年を追うごとに低下し、選挙の投票率も下降線をたどる、そんな現象が発生しているのではないかな。

 よく聞く「あんたはがんばっている」という言葉は、翻って考えれば「がんばるあんたがいれば良い」ということになり、その「あんた」はがんばる人なら誰でもよく、議員という存在である必要がなくなってくる。そして、議員が活動する場である議会も不要になってくる、こう考えられるのです。

 しかし、一方で、議会は近代的民主主義の発展の中で住民の意思を政治に活かすために不可欠な存在として作られてきた仕組みであり、これを機能させていくことは、本来住民の利益になるはずです。

 ですから、議会と住民の関係が本来あるべき姿、求められる姿になるように、議会の活動のあり方を改革して、住民生活に議会が役立っていることを実感できる活動に発展させていくことが必要となっている。このように考えられるのです。

 佐藤さんは、「対話が作る議会からの地方創生~議会改革第2ステージに向けて~」と題して講演を始めました。



 この指摘は面白いですね。議会改革の観点から見た全国の議会は、「居眠り議会」「目覚めた議会」「したふり議会」「真の改革議会」の4つの分類になるというのです。

 「居眠り議会」は、議会改革ができていると思い込み、議会基本条例は不要と考える議会。「目覚めた議会」は、議会基本条例を作ろうと取り組んでいる議会。「したふり議会」は、議会基本条例を作っただけで、条例に基づく取り組みをしていない議会。そして、「真の改革議会」は、議会改革の実効性を上げるために不断に努力し成果をあげている議会。このように分類したわけです。

 全国で議会基本条例を制定した議会は、現在46%まで増加しているというなかで、いわき市議会は、議会基本条例の制定に向けて「議会改革」を模索している段階。4分類で考えれば「目覚めた議会」と言えそうです。しかし、議会基本条例への道のりは遠い。そんな状況にあるように思います。

 岩手県では、比較的に議会改革が進んでいる議会が多く「いわて議会事務局研究会」というものがあって、議会事務局職員間で先進事例を共有し、情報交換を行っていると紹介されました。どうもここが原動力になっているようです。議会と執行部は車の両輪とよばれますが、そうではなくて、「議会と事務局が両輪になってよい街づくりを進めることが必要」だとおっしゃていたのは目からうろこの新しい認識でした。普段から議会事務局が議会で果たす役割は大きいと思っていたのですが、こういう明確なイメージで把握できたのは初めてです。

 さて、「目覚めた議会」にすぎないいわき市議会にとって、まだ第1ステージさえ整っていないのに「議会改革の第2ステージ」といってもなぁーという感じはありますけれども、まあ「議会報告会」や常任委員会における「委員間討議」、そして「政策立案検討委員会」の設置を試行し、その上に議会基本条例の制定をめざしてきたことを考えれば、第0.7ステージ位の状況にあると考えられます。

 その0.7ステージをさらに前にすすめるために、第2ステージでの取り組み例を力にしていくことは可能でしょう。

 その議会改革の第2ステージでは、「議会のための議会改革」から「地域課題を解決する議会」に前進をさせなければならないとされました。

 「議会のための議会改革」は、議会報告会など議会改革に必要だとされる項目の実施の有無をチェックし、形式要件だけで議会改革の状況を評価する――いわば自己満足型の議会改革だと喝破します。

 そして、「議会のための議会改革」から「地域課題を解決する議会」となることをめざして「住民の役に立つ議会改革」をすすめ、住民に役立っていると認識してもらうことができる、実質要件を兼ね備えた改革をすすめようということが提起されたわけです。

 佐藤さんは、「議会の価値は住民福祉の向上」にあるとして、市民とのコミュニケーションによって得た情報が政策の種になり、この種を議員間討議で練り上げることで、議案の修正であるとか、付帯決議であるとか、陳情・請願の議決であるとか、議員提案の条例とかいう成果物が生まれ、そしてこの成果物が住民福祉の向上、別の言い方をするなら「市民価値の向上」につながると指摘しました。

 そしてその一連のプロセスを、市民参加のもとに評価して、さらなる議会改革に反映していく必要があると指摘をしました。

 これらの具体的な実践例としていくつの市議会の取り組みが紹介されました。

 岩手県宮古市議会は、市民とのワークショップやアンケートなどを踏まえて、市に対する提言「定住化促進対策に関する提言」をまとめた取り組みをすすめたそうです。

 また岐阜県可児市の進学校とされる可児高校では、進学の実績が向上しないのは生徒たちが目的を持って勉強していないからだと考え、市議会と高校がタイアップして地域の課題を子どもたちと考える「地域課題解決型キャリア教育」などに取り組み、この参加をきっかけに医学部に進路を定め合格した生徒が生まれた例などを紹介しました。議会の活動が「地方創生」につながっているのです。すごいですね。

 また講演では、対話を起点とした政策形成サイクルのための会場づくりなどの注意点を紹介した後に、「理論編」の基礎にあたることとしてこんな話がされました。「対話」に関してです。

 「話をする」などといった時の英単語には5つがあるといいます。「chat(チャット=雑談)」「conversation(カンバゼーション=会話)」「dialogue(ダイアローグ=対話)」「discussion(デスカッション=議論)」「debate(ディベート=討論)」です。

 それぞれに「雑談は、特に目的がない」「会話は、関係性を築く」「対話は、目的を共有する」「議論は、方策を考える」「討論は、物事を決める」という意味を持っているといいました。

 そして人は、ある一つの事象に対しても違った見方(例えば、瓶に半分だけ残ったワインを「半分もある」ととらえるか、「半分しかない」ととらえるか)をすることがあるので、相互に理解を深めるためには物事を一緒に意味づける対話というプロセスが必要だというのです。議会改革の中でこれをとらえれば、議会報告会や委員会における議員間討議で対話が実践されなければならないというのです。

 議会報告会で言えば、この報告会が、単に議会の活動や決定事項を市民に知らせるという目的で行われるのではなく、市民と議会が市政課題への認識の共有化をはかるために行われることを明確にして、この認識の共有化の上に、市民と議会の課題解決への協働が開かれていくととらえることだし、議員間討議で言えば、議員間の対話によって、討論、採決の前提としての論点整理と、政策提言を前提とした問題の洗い出しや意見のすり合わせ、議会運営上の意見のすり合わせをはかることができるようになるというのです。

 考えれば、この間、私の所属した委員会で委員間討議が行われていましたが、互いの意見を理解するという側面は、それはそれでありましたけれど、予備討論という感じで、賛否のための意見のぶつけ合いになっていた間があります。こうしたことは反省的にとらえながら、今後の議会活動の中に生かしていかなければならないと感じました。

 また議会報告会では、報告そのものをメインにするというよりも、市政の課題解決に向けて市民のみなさんと対話し協働を広げるという観点から、テーマを決めたワークショップのような開き方もあるということを知りました。こうした議会報告会での報告は、市政の課題共有のための報告ということになるわけで、いわき市議会でこれまで取り組んだ、議会で決まったことを報告するという内容とは、おのずと違ったものになってくるはずです。

 総じてこの講演を聞いて思うのは、住民との議員との関係の垣根の低さ――別の言い方をするなら住民と議員の融和とがすすんでいるということです。本来議員は、住民の声の代弁者であり、住民と同じ視点から地方行政をチェックする役割というのを持っているわけで、本来、市民との間に垣根があるはずはないはずです。

 ところが選挙で選ばれた特別の存在ということからなのか、市民と議員は別次元の存在かのような意識が古くから醸成されてきていたように思います。これを破壊し、議員と市民が同じフロア―に立つ。このことが大切なんだろうと思います。

 今回の研修会は、議会改革というタイムリーな問題の講演ということもあると思うのですけど、いつも以上に興味深く、また実践的に聞くことができたとの思いを持つことができました。

 前期に私はいわき市議会の議会改革推進検討委員会の委員長を務めましたが、今期は委員会から外れているので、直接、これからの議会改革にたずさわることはないですが、市民のみなさんに役立っていると実感していただける議会に成長していくために、何らかの形でかかわっていかなければならないなぁーと思っています。

 さて会津若松に向かう時には曇り空。猪苗代湖が磐越道上から見え、磐梯山の紅葉もうっすらと見えていました。



 ところが研修会からの帰路はあいにくの雨降り。雨に濡れる会津地方を見ながら車に揺られていました。



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