伊藤浩之の春夏秋冬

いわき市遠野町に住む元市議会議員。1960年生まれ。最近は遠野和紙に関わる話題が多し。気ままに更新中。

サイエンスZERO。震災のメカニズムが勉強になった

2021年03月13日 | 災害
 東日本大震災から10年の3月11日を前後して、東日本大震災や東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する報道や特集番組が数多く放送された。その中、同番組が特集したのは、東日本大震災の地震のメカニズム。タイトルは「3.11から10年▽地震学者たちが挑んだ“超巨大地震”」だった。

 番組は、これまでの地震学の常識を覆したのが東日本大震災の地震だったという専門家の証言を紹介した。

 1つは、東北沖の地震は一つのエリアだけが震源になると考えられ、その際の地震の規模はマグニチュード(M)7が最大規模と考えられていたとしていたと思う。ところが、震災ではいくつかのエリアが同時に動き、その結果M9の地震となり被害が拡大することになったというのだ。これまでの常識をはるかに凌駕する地震だったということだ。

 M8とM9では、地震のエネルギーは30倍違うとのことだった。調べると、Mが1違うとエネルギーは32倍違うということだ。いずれにせよ、多数の犠牲者と巨大な被害をもたらしたのは、常識が通用しない地震だったということにあったのだろう。

 2つ目に、あの震災を引き起こした地震の揺れの特徴に関してだ。

 地震が起こった時、いわき市文化センターの3階会議室にいた。しがみついた折りたたみテーブルごと揺すられ、右に左に跳ね回るような感じだった。椅子に座っていない人は、自立して立つことが難しく、壁に寄りかかって揺れに耐えていた。

 体感した揺れは、揺れはじめから終わりまで6分感程。途中、一端弱まりかけた震動が、再び最大級に盛り返す体験もした。幸いにして自分に被害が及ぶ前に地震が終わりそうだとホッとする気持ちを、再び不安と懸念に落とし込むような最悪の地震動だった。

 震災を引き越した地震は、日本海溝を震源とする海溝型だったが、2回の巨大な揺れが連続したことを、私は、2つのエリアの震源域が連続して動いたものと解釈していた。しかし、違ったかもしれない。

 番組では、最初に示した写真のように、海溝のプレートの接触部分の深いところで地震が起こると、震源の上部の柔らかい地層が地震エネルギーを吸収して地震を弱めていると解釈されてきた、と紹介した。しかし、今回の震災の地震を解析した結果、深部で起きた地震によるエネルギーで上部の柔らかい層も動き、地震を拡大する役割を果たしていたというのだ。

 とすると、震災で体験した2回の強い揺れは、1回目がプレートの深部で発生した地震の揺れで、後に続いた強い揺れは、プレート浅部で発生した地震の揺れだったのではないだろうか。この番組を見て、長い間もやもやと胸のつかえとなっていた2回の強い揺れの理由を理解し、すっきりした感覚を覚えた。

 ただ、思い起こせば、あの地震による津波による沿岸部の被害は、被災地の南側より北側が大きく、津波は南側から襲来したと言われていた。南側から来た津波が被災地南側の海に突き出した岬で遮蔽されたために南側は直撃を免れ、直撃した北側は被害が大きかったと考えられた。2度目の揺れが、プレート浅部が原因だったとすると、津波被災の実情と矛盾するのだ。コメントにいただいたご指摘で気がついた。

 あの震災の揺れの体感で、強い揺れは2度だったと先に書いた。しかし、福島県は3度の強い揺れに襲われているという。最初の震源による1度目の揺れとそこよりさらに沖合の震源による2度目の揺れ、そして茨城県沖の震源による3度目の揺れ。ただ、2度目の揺れに3度目の揺れがかぶさり一体となったために、2度の強い揺れ体感したようだ。本市の津波被災を大きくしたのは、この茨城県沖の震源が原因で発生した津波と考えれば、矛盾は解消するようだ。

 そして3つ目に、日本海溝付近でおきているスロー地震(スロースリップ)と震災の関係だ。

 震災後、気にかかる現象として千葉県沖で発生しているスロースリップが報道されていた記憶がある。このスロースリップが巨大地震につながるのかどうか、東日本大震災に次ぐ大規模地震の予兆ではないのか。記事を読んでから、漠とした不安が心に淀み続けていた。

 スロースリップは、通常の地震よりきわめてゆっくりと断層が滑る現象だという。地震後の観測・研究で、スリップがおきているエリアが、北海道十勝沖から岩手沖、そして千葉県沖にあり、震災の地震の破壊はこのスロースリップ地域で止まったというのだ。




 スロースリップのおきているエリアでは、地震のエネルギーがゆっくりと解放されているため、大きな地震とならない。しかし、震災の原因となったエリアはエネルギーがいっきょに解放され、大災害の原因となった。このような主旨の説明だったと思う。

 すると、震災後におきているとされていた千葉県沖合のスロースリップは、震災を招くような巨大地震の原因とはならないということで、懸念に及ばないということになるのだろう。

 以上、番組は、震災後、長らく淀んでいた疑問を解消するものだった。先日書いた原発の爆発映像の最新技術による映像分析により、新たな知見を得たことなど、技術の進歩と研究の進展が、新たな知見を引きだし、新たな政策的な方向性を明確にしていくものと思う。関心は尽きない。


※本文中、藍色の文字は、コメントにいただいたご指摘を受けて書き足したものです。


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7 コメント

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2点ほど・・・ (Unknown)
2021-03-16 12:52:52
サイエンスZERO、今月は震災関係のことをやっていますね。1回目の地震に次いで、2回目は津波をやっていました。
ところで・・・
今回の内容の中で、2点ほど言わせてください。

1点目は、M7とM9とでは30倍違う について

マグニチュードは、1違うと32倍違うのです。(番組では30倍と言っていました)
なので、M7とM9とでは、32×32=約千倍違うことになります。
東日本大震災がM9.0、その1か月後に田人で起こった4.11活断層の地震。エネルギーは、千倍違ったのです。
でも、直下で起こると、あれだけの地震になるのです。

2点目は、地震の揺れの特徴 について

2回の揺れを、プレート深部と浅部で発生したからではないか、としていますが、

気象庁技術報告 第133号 2012年
(で検索してください)

の「第1章地震」の「31ページ」にある地図およびグラフを見ると、福島県での揺れが3回来ていることが示されており、
その上の文章を読むと、1回目と2回目の揺れは、宮城県沖からやってきて、3回目の揺れは、茨城県沖からやってきていると書かれています。

東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)は、宮城県沖が「震源」となっていますが、「震源域」は、岩手県沖から茨城県沖までの南北450kmのエリアとされています。(ちなみに、震災後そのエリア内で発生した地震を「余震」と呼んでいます。東西は200kmです。)

つまり、2回目に感じた大きな揺れは、茨城県沖で発生した揺れだったのだと、気象庁の報告書を読んで、そのように解釈しています。

2点目については、私が、気象庁の報告書を読み解いてそう思っている内容なので、もし間違っていたらごめんなさい。

長文失礼しました。
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4.11田人の地震は (Unknown)
2021-03-16 12:58:05
M7.0です。
記入漏れしてしまいました、追記します。
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1回目のコメントのうち2点目について (Unknown)
2021-03-17 08:46:08
上記コメントをし、帰宅後、再度番組を見返してみました。
そして、2点目の記載については、次のような考えに至りました。

気象庁の報告書では、福島県は3回大きな揺れが来たと記載されています。

そのうちの1回目が、プレート深部で発生した揺れで、
2回目は、プレート浅部で発生した揺れ、というふうに考えると合点がいきました。

そして、この2回目の揺れの途中から、福島県のあたりでは、再度揺れが大きくなっていきます。

それは、3回目の揺れ(茨城県沖から来た揺れ)が2回目の揺れに加わり、さらに揺れが大きくなったからだと考えます。

このように考えたので、伊藤さんがまとめた揺れ方で概ね当たっているな、と思った次第です。

ということで、あらためて記載させていただきました。
大変失礼いたしました。
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ご指摘ありがとうございます (伊藤浩之)
2021-03-18 10:07:56
マグニチュードの件は番組内のコメントをそのまま書いたので、事実関係の確認が十分でありませんでした。

番組内容に学んだことのまとめでしたので、その部分は記載しながら、正しい内容になるような表現にしておきたいと思います。

揺れの件はおっしゃる通りかと思います。思い起こせば、いわき市に寄せた津波は、被災地の北側の被害が大きいことから、南側から寄せたと言われていました。

その被害は、いわば3回目の揺れ、その原因となった茨城県沖が震源となった地震によってもたらせられたのでしょうね。

気象庁の科学技術報告を読みました。同様の感想を持ちました。ご指摘いただいたことで、認識が深まりました。
ありがとうございます。
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ご指摘ありがとうございます (伊藤浩之)
2021-03-18 10:07:58
マグニチュードの件は番組内のコメントをそのまま書いたので、事実関係の確認が十分でありませんでした。

番組内容に学んだことのまとめでしたので、その部分は記載しながら、正しい内容になるような表現にしておきたいと思います。

揺れの件はおっしゃる通りかと思います。思い起こせば、いわき市に寄せた津波は、被災地の北側の被害が大きいことから、南側から寄せたと言われていました。

その被害は、いわば3回目の揺れ、その原因となった茨城県沖が震源となった地震によってもたらせられたのでしょうね。

気象庁の科学技術報告を読みました。同様の感想を持ちました。ご指摘いただいたことで、認識が深まりました。
ありがとうございます。
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マグニチュードの件 (Unknown)
2021-03-18 14:10:11
改めて見てみると、番組では、
「M8とM9とでは約30倍違う」と言ってましたね。

ところで、2週目の番組では津波のことをやったのですが、津波の予測が当初過少だったことについて触れていました。

地震直後の津波警報では、宮城県が3m、岩手県が6m、福島県が3mの情報を出し、結果10m以上の大津波が来てしまったことについて、

当初の地震情報では、M7.9と出していました。しかし、実際は3回ほど修正が加わり、最終的にM9.0となりました。

マグニチュード1の違いで30倍以上エネルギーが違うのですから、最初の予測も仕方なかったのかな、と思ったりもしました。

これを教訓に、津波の予測精度を大幅に上げるシステム等の導入が、研究者たちによって行われたようです。
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重ねてありがとうございます。 (伊藤浩之)
2021-03-18 14:27:39
メモが間違っていたんですね。
見直しができなくて、確認できませんでしたね。そこは訂正しておきます。
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