23日の午前は、東京電力と経済産業省資源エネルギー庁に出席を求め、いわき市議会東日本復興特別委員会が開かれました。テーマは①東電福島第一原子力発電所1号機から4号機の廃炉措置に向けた中長期ロードマップの進捗状況、②福島第1原子力発電所における汚染水対策の現況、③凍土遮水壁の設置――の3つ。それぞれについて出席者の説明をいただいた上で、質疑が行われました。
資源エネルギー庁の汚染水対策の担当者の説明の概要は次の通り。
(1)事故炉は15度から35度の冷温停止状態にある。
(2)汚染水対策の主なものとして
①地下水流入を防止するために凍土遮水壁の設置を6月中に開始させたいと考えている。
②汚染の発生源となっているトレンチ内の汚染水除去のために、トレンチと建屋との接続部分を凍結遮水して新たな流入を防いだ上で、6月の水抜きを計画している。
③1日400t増加している汚染水の軽減のため、建屋上流側の地下水をくみ上げ海に放出する「地下水バイパス計画」を漁業者の理解を得た上で、実施に向けて準備をすすめている。
④トラブルを繰り返している放射性物質除去装置「アルプス」は放射性物質除去が出来ていることから「除去は技術的に可能」だと考え、安定的稼働に向けて技術的検討を重ねている。
(3)将来のデブリ(溶け落ちた核燃料)取り出しに向けて、事故建屋内の除染のための遠隔除染装置の実証試験を行い、効果を確認した。
凍土遮水壁には、地下水位が下がることで建屋内汚染水の漏出などの懸念があることなどから、原子力規制委員会が難色を示しています。資源エネルギー庁担当者は、「地下に埋設された配管などを回り込んで遮水できる」など効果があり規制委員会の理解を得て、6月には開始するため鋭意説明をしている、などと回答しました。
私は地下水バイパスの問題で、その実施の責任はどこにあるのか質問しました。実施の責任は当然にして国や東電にあるわけですが、東電や国が漁業者に実施の可否の判断を任せる結果になったことで、実施されるのは漁業者の責任だと誤解される恐れがあるからです。
資源エネルギー庁担当者は、「地下水バイパス実施の責任は一義的には東電にあり、国もその一端があります」としました。
それならば、この地下水バイパスの安全性に関する説明を、住民、広く国民に行う必要があります。
地下水バイパス計画の問題で、懸念されているのは放射性物質・トリチウムが海洋に放出されることです。海洋への放出の国規制値は1ℓ当たり6万ベクレル(bq)ですが、より安全を保つためとして、東電や国は地下水バイパス計画での放出基準を1ℓ当たり1,500bqとしています。一方、仮に多少高い濃度があった水でも、希釈することで基準値を下回れば放水するとの考えも伝えられています。
では現実の測定値はどうか。
地下水をくみ上げる12の揚水井戸のトリチウム量は、№1から№11では、各井戸の最高値で最も低かった井戸が40bq、最も高かった井戸が620bqと、いずれも基準値を下回っています。
しかし、汚染水タンク群に近い位置の№12の井戸では最大値で1,600bq(4月15日採取分)の測定値が出ています。再測定の結果は1,200bq(4月18日採取分の外2回の測定)となっています。
ただ問題は、この1,500bqの基準が良いかどうか、あるいはこの基準から低いかどうか、という点ではないように思います。
原発事故後、被災地を苦しめてきた一つが風評被害でした。
農作物等から放射性物質が検出されていなくても、農作物等が売れない、あるいは産地名で最初から購入の対象から外されるという状況が広がりました。このことを端的に示したのが、カツオです。宮城県沖、あるいは銚子沖で捕獲したカツオを、小名浜港に水揚げして出荷すれば県外では値が極端に低いという事態が生じました。捕獲水域から考えれば、原発事故由来の放射性物質汚染が全く心配されないにも関わらず、です。このことを踏まえれば、トリチウムが入った水を流したというだけで、漁業が本格的に再開したとしても、その漁獲物が売れないという事態が生じかねないと考えるのです。
こうしたことから、トリチウムを流しても基準値内ならば大丈夫だと考えているならば、国民・消費者にこのことをしっかり説明する責任を国や東電は負っています。そして、そのことが地下水バイパスを了解した漁業者に、消費者等の批判が向かないようにすることになるとも思います。
資源エネルギー庁担当者は、「国基準の40分の1の規制値にし、安全側に立って基準を定めたことを説明してきましたが伝わっていない現状があります。努力が足りないものと思います。広報についても試行錯誤をしていますが、一般の方にも理解できるよう取り組みをすすめたい」としました。
ちなみに以前、原子力発電所は日常の運転の中でもトリチウムを放出していると、新聞報道で読んだ記憶があります。では第一原発ではどうだったのか、聞いてみました。
東電の広報担当者は、「事故前の放出量は海に年間2兆bq、気体(水蒸気)として2兆bq、合計4兆bqで、管理上の目標(と言ったと思うのですが)は22兆bqでした」と答えました。事故によって放出されたトリチウム量の推計はできていない、ということでしたが、地下水バイパス計画が実施された場合、最高でも1,500bq×1,000t×365日で、おおむね5億bqになるといいます。
「こうした事実を住民に説明したらどうなのか」とただすと、資源エネルギー庁の担当者は「前から出していたから大丈夫」ということになるので理解をいただけないだろうという趣旨の回答でした。それはそうでしょうね。〝前から出していたのだから、この程度は大丈夫〟などという説明を聞いて怒らない人がいないわけがない。
ここではっきりするのは、原発を稼働すればトリチウムが日常に海に放出されており、その事実を多くの国民が知らないままに原発は運転をされてきたこと。そして事実が知られていないからこそ、事故による放射性物質の放出により余計な風評被害が生み出されていると考えられることです。
どう説明するかは国や電力会社の責任ですが、少なくともこういう事実も含めて丹念に公表する姿勢が、国や東電には必要です。その事実を踏まえて、地下水バイパス計画による地下水放出を、ひいては原発の再稼働や日本のエネルギー計画をどう考えるのか、国民に問うという姿勢こそ国・電力会社はとるべきだと考えるのです。
委員会の場では、「事実を包み隠さず公表するようお願いします」と資源エネルギー庁の担当者と東電には要望しておきましたが、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
その後、東電からも説明があったのですが、今回はここまでの報告にさせていただきます。
資源エネルギー庁の汚染水対策の担当者の説明の概要は次の通り。
(1)事故炉は15度から35度の冷温停止状態にある。
(2)汚染水対策の主なものとして
①地下水流入を防止するために凍土遮水壁の設置を6月中に開始させたいと考えている。
②汚染の発生源となっているトレンチ内の汚染水除去のために、トレンチと建屋との接続部分を凍結遮水して新たな流入を防いだ上で、6月の水抜きを計画している。
③1日400t増加している汚染水の軽減のため、建屋上流側の地下水をくみ上げ海に放出する「地下水バイパス計画」を漁業者の理解を得た上で、実施に向けて準備をすすめている。
④トラブルを繰り返している放射性物質除去装置「アルプス」は放射性物質除去が出来ていることから「除去は技術的に可能」だと考え、安定的稼働に向けて技術的検討を重ねている。
(3)将来のデブリ(溶け落ちた核燃料)取り出しに向けて、事故建屋内の除染のための遠隔除染装置の実証試験を行い、効果を確認した。
凍土遮水壁には、地下水位が下がることで建屋内汚染水の漏出などの懸念があることなどから、原子力規制委員会が難色を示しています。資源エネルギー庁担当者は、「地下に埋設された配管などを回り込んで遮水できる」など効果があり規制委員会の理解を得て、6月には開始するため鋭意説明をしている、などと回答しました。
私は地下水バイパスの問題で、その実施の責任はどこにあるのか質問しました。実施の責任は当然にして国や東電にあるわけですが、東電や国が漁業者に実施の可否の判断を任せる結果になったことで、実施されるのは漁業者の責任だと誤解される恐れがあるからです。
資源エネルギー庁担当者は、「地下水バイパス実施の責任は一義的には東電にあり、国もその一端があります」としました。
それならば、この地下水バイパスの安全性に関する説明を、住民、広く国民に行う必要があります。
地下水バイパス計画の問題で、懸念されているのは放射性物質・トリチウムが海洋に放出されることです。海洋への放出の国規制値は1ℓ当たり6万ベクレル(bq)ですが、より安全を保つためとして、東電や国は地下水バイパス計画での放出基準を1ℓ当たり1,500bqとしています。一方、仮に多少高い濃度があった水でも、希釈することで基準値を下回れば放水するとの考えも伝えられています。
では現実の測定値はどうか。
地下水をくみ上げる12の揚水井戸のトリチウム量は、№1から№11では、各井戸の最高値で最も低かった井戸が40bq、最も高かった井戸が620bqと、いずれも基準値を下回っています。
しかし、汚染水タンク群に近い位置の№12の井戸では最大値で1,600bq(4月15日採取分)の測定値が出ています。再測定の結果は1,200bq(4月18日採取分の外2回の測定)となっています。
ただ問題は、この1,500bqの基準が良いかどうか、あるいはこの基準から低いかどうか、という点ではないように思います。
原発事故後、被災地を苦しめてきた一つが風評被害でした。
農作物等から放射性物質が検出されていなくても、農作物等が売れない、あるいは産地名で最初から購入の対象から外されるという状況が広がりました。このことを端的に示したのが、カツオです。宮城県沖、あるいは銚子沖で捕獲したカツオを、小名浜港に水揚げして出荷すれば県外では値が極端に低いという事態が生じました。捕獲水域から考えれば、原発事故由来の放射性物質汚染が全く心配されないにも関わらず、です。このことを踏まえれば、トリチウムが入った水を流したというだけで、漁業が本格的に再開したとしても、その漁獲物が売れないという事態が生じかねないと考えるのです。
こうしたことから、トリチウムを流しても基準値内ならば大丈夫だと考えているならば、国民・消費者にこのことをしっかり説明する責任を国や東電は負っています。そして、そのことが地下水バイパスを了解した漁業者に、消費者等の批判が向かないようにすることになるとも思います。
資源エネルギー庁担当者は、「国基準の40分の1の規制値にし、安全側に立って基準を定めたことを説明してきましたが伝わっていない現状があります。努力が足りないものと思います。広報についても試行錯誤をしていますが、一般の方にも理解できるよう取り組みをすすめたい」としました。
ちなみに以前、原子力発電所は日常の運転の中でもトリチウムを放出していると、新聞報道で読んだ記憶があります。では第一原発ではどうだったのか、聞いてみました。
東電の広報担当者は、「事故前の放出量は海に年間2兆bq、気体(水蒸気)として2兆bq、合計4兆bqで、管理上の目標(と言ったと思うのですが)は22兆bqでした」と答えました。事故によって放出されたトリチウム量の推計はできていない、ということでしたが、地下水バイパス計画が実施された場合、最高でも1,500bq×1,000t×365日で、おおむね5億bqになるといいます。
「こうした事実を住民に説明したらどうなのか」とただすと、資源エネルギー庁の担当者は「前から出していたから大丈夫」ということになるので理解をいただけないだろうという趣旨の回答でした。それはそうでしょうね。〝前から出していたのだから、この程度は大丈夫〟などという説明を聞いて怒らない人がいないわけがない。
ここではっきりするのは、原発を稼働すればトリチウムが日常に海に放出されており、その事実を多くの国民が知らないままに原発は運転をされてきたこと。そして事実が知られていないからこそ、事故による放射性物質の放出により余計な風評被害が生み出されていると考えられることです。
どう説明するかは国や電力会社の責任ですが、少なくともこういう事実も含めて丹念に公表する姿勢が、国や東電には必要です。その事実を踏まえて、地下水バイパス計画による地下水放出を、ひいては原発の再稼働や日本のエネルギー計画をどう考えるのか、国民に問うという姿勢こそ国・電力会社はとるべきだと考えるのです。
委員会の場では、「事実を包み隠さず公表するようお願いします」と資源エネルギー庁の担当者と東電には要望しておきましたが、しっかり取り組んでいただきたいと思います。
その後、東電からも説明があったのですが、今回はここまでの報告にさせていただきます。
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